研究開発の展示会「NTT R&Dフォーラム」の会場に表示される「IOWN」の文字
総務省は光の高速通信技術で海外展開を支援する。
通信装置を海外で実証試験する場合などに補助を出し、市場開拓の足がかりにする。光技術は速度や省エネルギー性能で優れ、NTTの次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」など日本勢が先行する。
生成AI(人工知能)などの新技術が普及すればデータ通信量が増え、世界のデータセンターの電力消費も急増が見込まれる。
電気処理を光に置き換える「光電融合技術」は通信の遅延が小さく、消費電力も大幅に抑えられる利点がある。次世代通信規格「6G」をにらみ、通信で世界が直面する課題を解決する技術として注目を集める。
近く総務省が海外に売り込む製品の公募を始める。欧州の通信会社に製品の性能を試してもらう取り組みなどの必要経費を助成する。実証結果を踏まえ、光電融合を生かした製品の海外展開支援の強化も検討する。
早期に世界市場を開拓して日本が強みを持つ技術の競争力を高める。通信インフラで国内メーカーの存在感が高まれば、日本の経済安全保障上の意義も大きい。
商用化の動きも進む。富士通も光技術を生かした高速大容量の伝送装置を開発した。
スーパーコンピューターの開発で培った水で装置を冷やす技術などを活用し、送風機で冷やすよりも消費電力を抑える工夫をした。国内ではKDDIが通信網に富士通の伝送装置を採用し、電力消費量を従来比で40%減らした例もある。
東急不動産は渋谷駅に隣接する大型複合ビルでNTTが開発を進めているアイオンを採用した。防衛省も次世代の通信インフラとして導入を検討する。
総務省がこうした製品の海外展開支援に乗り出す背景には、技術開発で他国に先駆けながらも実用化が遅れて普及しなかった過去の反省がある。
通信分野でも高速通信規格「5G」に対応した基地局では海外勢が席巻する。英調査会社のオムディアによると、NECや富士通など日本勢のシェアは3%程度にとどまる。
アイオンを開発するNTTも反省を生かし、開発段階から技術仕様などを話し合う国際団体を20年に設立した。ソニーグループや米インテル、競合のKDDIなど国内外で100を超す企業・団体が参画する。データセンター投資に積極的な米グーグルも加わるなど参加事業者の裾野は広がりつつある。
光の高速通信技術 6G時代へ期待大きく
▼…電気信号に代わりデータ処理と通信に光を使う「光電融合技術」を活用すれば、データを電気に変換するときに生じる消費電力の無駄がなくなる上、高速大容量で通信が可能になる。
▼…光の通信技術は日本勢が技術的に優位とされる。次世代通信規格「6G」時代に日本勢が挽回するチャンスにつながるとの期待も大きい。