https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE0958F0Z01C24A0000000/
【この記事のポイント】
・自己収入を増やして教育、研究の水準を上げ、社会の期待に応えていく
・国立大は日本の知を支えている。国立大が全国に広がっていることが重要
・18歳人口が減少しても定員削減はせず、入試改革で多様な学生を集める
東京大が来春、20年ぶりに授業料を引き上げる。グローバル競争に打ち勝つため、財源を多様化し、国の補助金に頼らない自立した経営を目指す。
間もなく創立150周年を迎える東大を、どうつくり替えるのか。第31代学長を務める藤井輝夫氏に聞いた。
裁量ある財源確保、大学の裾野広げる
――世界と伍する大学になるためには、財務体質の強化が欠かせない。研究者の一人として、国立大が企業のように「稼ぐ」ことへの抵抗感はなかったか。
「自己収入を得るのはすべて良い教育と研究のためで、贅沢(ぜいたく)をするためではない。国立大には国から負託を受けている役割と、社会全体から求められている役割があり、後者が大きくなってきた。
社会から必要な資金を支援してもらい、その役割を果たし、結果を示すことでまた資金を得る。このような好循環をつくることが重要だ」
「自ら資金を獲得していくという話をすると、工学系などいわゆる『稼げる研究』に力を入れ、人文系など『稼げない研究』がおろそかになるのではないか、と言われる。大事な研究に資金を使う方針はこれからも変わらない。東大には多様な人文系研究の実績があり、しっかり発展させていく」
「ファイナンスをマネジメントできる組織になることも欠かせない。そのために最高投資責任者(CIO)職や最高財務責任者(CFO)職を新設した」
――授業料の引き上げに対しては、家庭の所得の状況によって東大へ進学できない生徒が増えるという懸念が学内外から上がった。それでも来年度に向けて決定を急いだのはなぜか。
「東大の財政は厳しく、2024年度に学生の体験型プログラムの拡充を見送るといった影響が出ていた。
生成AI(人工知能)の活用など、国際的に見ると高等教育の分野に新たなアプローチが登場している。『世界の誰もが来たくなる大学』を目指すためには、学修環境の改善は待ったなしで、できるだけ早く決める必要があった」
「国からの運営費交付金は減少傾向で物価も高騰している。財源確保のための一つの選択肢として、授業料の引き上げに踏み切った」
「授業料引き上げに併せて、授業料全額免除の対象を世帯収入が年400万円以下の学部生から年600万円以下の学部生と修士課程に広げるなど、学生への経済的な支援を強化する。『経済的に貧しくても東大で学べる』という伝統を引き続き重視する」
授業料改定は「3年ほど前から財務について検討するなかで浮かび上がった」と語る
――東大の23年度の経常収益が約2680億円であるのに対し、引き上げによる増収は年約13億円にとどまる見込みだ。物価や人件費の上昇で、教育や研究の経費は今後も増えるとみられており、十分とはいえない。
「確かに13億円では必要な経費を賄えないが、増収分が毎年積み重なれば大きな額となり、貴重な財源となる」
「目指すのは、寄付金などを原資とした独自基金の規模拡大だ。基金の運用益によって、多くの経費を賄えるような経営モデルに転換していきたい」
「国から補助金をもらっても、使途が決められており、事業が終われば収入は途絶える。自己収入を増やし、大学自身が必要だと考える教育や研究に自律的に資金を投入し、その裾野を広げていくことが極めて大事な時代だ。裁量のある財源を長期的、継続的に得られるようにする」
日本の知、国立大が支える
――国立大が担う役割は今後、どうあるべきだと考えているか。
「国立大には学生個人の負担をできる限り低く抑えて、経済的な状況にかかわらず、等しく教育を提供する役目がある」
「国立大のシステムが日本全体に広がっていることが大事だ。地域ごとに解決すべき課題があり、地方だからこそできる価値創造もある。各地の大学はスタートアップを生み出す役割も担っている。日本全体の知を国立大が支えており、このシステムによって日本は世界とつながっている」
「難しい国際情勢が続いている。大学同士の協力関係は、各国にとって非常に大切な会話のチャネルとなる。東大は中国の北京大、韓国のソウル大といったアジアの大学、欧米の大学とも緊密に連携してきた」
「世界大学ランキングの高低ではなく、大学間、研究者間のトップ層のネットワークに入っておくことが極めて大事だ」
東大の学生について「社会的な課題の解決を目指して活動したり、起業する人が多く、背中を押したい」と語る
入試、定員削減より多様性
――トップ層の人材を育てるためには、入試のハードルを高めたり、3000人程度を保ってきた入学定員を削減したりして、少数精鋭の組織にするという選択もありうる。
「よく指摘される点だが、いずれも考えていない。むしろ、日本を支える人材を育てていくということを考えると、世界からより多くの学生を呼び込む必要がある。国際的な環境をつくることが、日本の学生にとってもプラスに働く」
「日本では少子高齢化が進んでいるが、アジアやアフリカでは若年層が多い。世界ではこうした地域の人材の奪い合いが起きている。東大の学部にいる留学生は、300人程度にとどまっている。学部の学生の多様化を特に進めることで、世界で活躍する人材を育てたい」
「27年秋から文理の枠を超えた教育を展開し、授業を全て英語で行う学部相当の新課程『カレッジ・オブ・デザイン』を新設する。定員は100人だが、既存の学部の学生も授業を受けられる仕組みにして、グローバル化や多様性を学内全体に広げていく」
――東大の学生のうち、女性の割合は学部と大学院を合わせても2割台と低水準だ。地方出身者も少ない。「多様性と包摂」によって卓越した大学になることを掲げてきたが、改革は道半ばだ。
「女性の比率を高めようと住居支援や奨学金拡充などに取り組んできたが、決定打には至っていない。学内の意識改革も必要で、ダイバーシティーへの理解を深める啓発事業などを実施してきた。徐々に変わってきているとは感じる」
「ただ入学定員のうち女性の人数を決めておく『女子枠』のようなことは検討していない。むしろ入試そのものの多様化をどう進めるかという観点で、内部で議論を進めている」
「16年度に学校推薦型選抜を導入した。1校計4人まで推薦でき、そのうち男女はそれぞれ3人までとした。結果的に同選抜による入学者の女性比率の高さにつながっている。入試の多様化の検討状況について具体的なことは言えないが、この方法は一つの参考になると考えている」
革新生む人材育成を
世界のトップ大と肩を並べるためには、自己収入を着実に増やし、教育環境の改善や優秀な教員の獲得などを進めることが必須だ。
授業料引き上げの検討が明らかになって以降、大学関係者のみならず国民の多くが東大の動向を気にした。「東大ではなく海外の有力大を目指す」という高校生が増えているとされるが、注目度はなお高い。
日本の停滞局面を打破するけん引車となることができるか。藤井氏が大学運営において「多様性と包摂」を重視してきたように、均質な人材の集合ではイノベーションは生まれない。目標倒れに終わらない改革に期待したい。
(大元裕行)
写真 宮口穣 映像 高橋丈三郎 小倉広志
このテーマをこの人に聞いてみたい。世界の政治・経済・文化の著名人から新興国の論客やスタートアップの経営者まで様々なジャンル、年代の方に独自の視点や本音を語ってもらう大型インタビュー企画です。
日経記事2024.11.23より引用
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Renaissancejapanの考えは、ヨーロッパ型の社会システムが良いと思う。 税率は日本に比べて高いが、幼稚園から大学博士課程まで授業料は無料。 医療費・入院料も無料。
どんな」家庭に生まれても、平等に教育、医療サービスを受けるのは、フェアな社会であり、将来の国力も向上するだろう。
ただし、90%ある国公立の話であり、私立の学校はものすごく少ない。 日本は私立が多すぎて、私立大学を設立し、そこの理事に収まる政治家と、政界の癒着が多すぎる。
具体的には、世耕一族は代々近畿大学の理事長を務め、国からもものすごいお金をもらって運営している。
挙句の果ては国民に見放されて選挙に落選した高市早苗のように、地方大学の学部卒で修士すら持っていない落選議員が、世耕に尻尾を振り近づけば、近畿大学の教授になって一般人以上に生活費を稼げる。
だから政界の公衆○○のような女性議員が増える。
今は、高市早苗が衆議院選挙で落選した安倍派議員を個人的に雇っている事が報道されている、おかしいと思わんか? 税金だぞ。
ヨーロッパは、ちゃんと自由競争経済も残している。 欧州に住んでいた頃、生活費を計算したが、飲食料など生活必需品への税率は低く設定し、贅沢品には高い税率。
教育費や医療費が高額な日本と同一年収の場合、生活費はほとんど変わらない。
上記のような政治家が政府と癒着して税金泥棒のような真似をしていないから。 おまけに日本はカルト宗教(統一教会)とアホボン・安部派の議員たちが癒着という世界的に見ても、ありえないことをやっている。