判決公判にオンラインで出廷したトランプ氏(10日)=ロイター
【ニューヨーク=朝田賢治】
トランプ次期米大統領が自身の不倫口止め料を不正に処理したとして罪に問われた裁判で、ニューヨーク州地裁は10日、トランプ氏を無条件放免とする判決を言い渡した。
トランプ氏には刑罰は科されないが、地裁での有罪が確定した。米大統領経験者として刑事裁判で有罪判決を受けたのは初めて。
トランプ氏は2016年の大統領選に際して、自身に不利な情報が漏れないよう不倫関係にあった女性に口止め料を支払い、「弁護士費用」と偽って計上したとされた。
業務記録改ざんなどの罪で23年3月にニューヨーク州地検に起訴され、24年5月に34の罪状全てで有罪評決を受けた。
判決は具体的な刑罰を科さない「無条件放免」とした。法定上は最大で禁錮4年を科される可能性があったが、初犯であることや次期大統領として政治的な影響を考慮した量刑とみられる。
米メディアによると、ファン・マーチャン判事は裁判について「異例の事態だ」と述べ、難しい判断だったとの認識を示した。
トランプ氏は私邸のあるフロリダ州からオンラインで出廷した。判決言い渡しを前に、法廷内で「この裁判は政治的魔女狩りだ」と語り、以前から繰り返している無実との主張を改めて表明した。
米大統領に立候補したり就任したりするうえで犯歴の有無は問われない。ただ過去に有罪判決を受けて大統領となった人物はおらず、米国の歴史に汚点を残すことになる。
そのためトランプ氏の弁護団は24年11月の大統領再選以降、現職大統領が刑事訴追を免除される「免責特権」が次期大統領にも適用されると主張し、裁判そのものの棄却や判決の延期をたびたび求めてきた。
今月7日には連邦最高裁に対し、州地裁に判決言い渡しを延期させる命令を出すよう申し立てた。現在の最高裁はトランプ氏が第1次政権時に自身の立場に近い判事の任命を進めたことから、判事9人中6人を保守派が占める。
それでも保守派のうち、ジョン・ロバーツ長官とトランプ氏自身が任命したエイミー・バレット判事が申し立て却下する立場に回った。
連邦最高裁は「判決が出ても大統領職務に与える影響は軽微」として、5対4で介入を拒否する決定をした。
州裁判所管轄の裁判で上告審まで終わらないうちに連邦裁判所が介入すれば極めて異例となる。最高裁判事らも司法の独立性を保つ姿勢を示そうとした可能性がある。
トランプ氏は自身の交流サイト(SNS)に「国民が見たように、この『事件』には犯罪も、損害も、証拠も、事実も、法律もない」と投稿し、裁判そのものを批判した。そのうえで「私は司法制度へのかつての偉大な信頼を回復させる」とも書き込んだ。
トランプ氏は20日に大統領就任式を控える。その前に裁判手続きが完了し、有罪判決が確定したことで、新政権の船出に水をさされたかたちだ。