討論会について、多くの投資家はハリス氏が優位と判断したようだ=AP
【ニューヨーク=三島大地】
10日の米大統領選討論会について、米国株式市場はハリス副大統領に軍配を上げたようだ。
11日、ハリス氏の関心が高いとされる環境関連銘柄の株価が軒並み上昇。一方、トランプ前大統領が立ち上げたSNS(交流サイト)運営銘柄が前日比10%下落するなど、「トランプ関連銘柄」には売りが広がった。
米CNNテレビが実施した緊急世論調査によると、討論会でハリスが優位だったとの答えは63%だったのに対し、トランプ氏のパフォーマンスが優れていたとの回答は37%にとどまった。
市場はさっそくハリス氏の優勢を織り込み始めた。賭けサイト「プレディクト・イット」の賭け金からはじき出したハリス氏の当選確率は11日時点で56%と討論会前日の9日から3ポイント上昇した一方、トランプ氏は47%と同5ポイント低下した。
ハリス氏の関連銘柄には買いが集まった。太陽光発電のアレイ・テクノロジーズが16%高となったほか、同サンランも11%上げた。電気自動車のルシード・グループは13%高で引けた。
ハリス氏は討論会で「副大統領として過去4年間でクリーンエネルギーに1兆ドルを投じたことを誇りに思う」と強調。
気候変動に対する米国の若者の関心が強いとしたうえで、「私たちはこの問題を実際に対処できると確信している」とも述べた。
一方、トランプ氏の関連銘柄は下げが目立つ。その代表格がトランプ氏が立ち上げたSNS「トゥルース・ソーシャル」の運営会社、トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ(TMTG)だ。
トランプ氏の銃撃事件があった7月には株価が一時、40ドルを上回った。だがその後は下落基調が鮮明になり、11日の終値は16ドルだった。
銃撃事件以降、2カ月ほどでおよそ45億ドルの価値が吹き飛んだ計算になる。
米タトル・キャピタル・マネジメントのマシュー・タトル氏は「TMTG(の株価)はトランプ氏が当選するかどうかに完全に依存している。
株価の急落は昨夜、多くの人がトランプ氏が討論で負けたと感じていることを意味する」と指摘する。
売りは他のトランプ銘柄にも波及した。刑務所運営のジオ・グループが7%安となったほか、同コアシビックも下げた。
不法移民に厳しく対応する方針を掲げるトランプ氏が大統領に選出されれば、業績の追い風になるとの見方がある。トランプ氏が融和的な立場をとるビットコインの採掘大手、ライオット・プラットフォームズも2%安で引けた。
11日のニューヨーク株式市場でダウ工業株30週平均は前日比0.3%高の4万0861ドルで終えた。
朝方に公表された消費者物価指数(CPI)がおおむね市場予想の範囲内だったことを受け、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での大幅利下げ観測が後退した。
ダウ平均は一時4万ドルの大台を割り込んだが、米半導体大手エヌビディアのジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)が同日のイベントで半導体への需要が引き続き強いことを説明すると株価は反転。
ブロードコムなど関連銘柄にも買いが集まり、投資家心理の改善につながった。
【関連記事】
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
加州司法長官時代、BPやコノコフィリップスなどの大手石油会社を訴えたというハリス氏が優位に立つことにより環境関連株が期待されるのは至極当然。
テイラー・スウィフト氏も自機ジェットの排出量の指摘に対しカーボンオフセットを実施、気候変動に熱心なセレブとなった。
一方、テスラのイーロン・マスク氏はトランプ氏から政府効率化委員会のトップに推されており、今回の討論会でもトランプ氏を擁護しているが、彼にとってはどちらが勝っても差はないのかもしれない。
そしてオプラ氏などハリス氏を支援する女性応援団対トランプ氏とその応援団、ソフト対ハードコンセプトの戦いでもあると見る。米国国民がどちらの価値を選ぶのか興味深い。
バイデン大統領が選挙戦から撤退しなければ、トランプは勝てた可能性が高い。
しかし、トランプはハリスとの討論では、明らかに論理性について負けている。
短くて挑戦的なフレーズにはアメリカ人はもうあきれたのではないか。
本来、ディフェンスのはずの現役副大統領ハリスだが、オフェンスしてトランプの論理を圧倒した感じだった。
残り2か月ぐらいの選挙戦はハリスにとって相当有利になっている。アメリカ初の女性大統領の誕生を期待したい
2024年に実施されるアメリカ大統領選挙に向け、ハリス副大統領やトランプ氏などの候補者、各政党がどのような動きをしているかについてのニュースを一覧できます。データや分析に基づいて米国の政治、経済、社会などに走る分断の実相に迫りつつ、大統領選の行方を追いかけます。
続きを読む
日経記事2024.09.12より引用