怠慢主婦 ドイツで同居 

日本食を食べなくなり義両親のしもべと化し、すでに何年になるだろう。遠い目しながら今日も行き抜いてやるぞっ

何でもいいから携帯電話を使ってみてくれぇー

2016年10月30日 | カテゴリー分けするのに飽き
三年前に私の携帯電話がスマートフォンになったとき、それまで使っていたものを義父に渡した。
比較的新しい物好きの義父なので、喜んではいたものの、今までそれを使ったことは一度も無い。

義父は「まず、説明書をよく読まなくてはならない」という性格だ。
携帯電話の場合、大抵の人々は使いながら学んでいくのではなかろうか。
義父はコンピューターで銀行口座の管理や家計管理をしたり、スカイプで世界各国に散らばっている古い友人と会話したりしているので携帯電話くらいすぐにマスターすると思っていた。

だいたい、私がここで初めて携帯電話を持ったとき、義父の第一声がこうだったものな。
「使わないときは電源を切っておきなさい」
もう、携帯電話の意味を取り違えているとしか思えない。

「私は緊急時のために持っているんだ。例えば、運転中の事故とかね」
得意そうに言っているけれど、普段使い慣れていないと、慌てている緊急時には絶対使えないと思う。
また、万一そういう場面になって運よく連絡できたとしても、彼は当然のごとく、電源を切ってしまうだろう。

数年前、義両親と高速道路で義姉宅に向かうとき、渋滞に巻き込まれて予定到着時刻を大幅に遅れることとなった。
彼らは携帯電話で娘に遅れることを伝えるという発想さえなかった様子だ。
後部座席で言おうか言うまいか悩んでいた私は悩むだけ損した気分だった。
義姉はたいしたもので、遅れた私たちに何も言わなかったから、高齢者の扱いを知っているのだろう。
いや、違う・・・
義姉は遅刻常習者だから、他人にも寛容なのかも。
ああっ、どちらも凄すぎっ!

ときどき義父は私を相手に携帯電話のかけかた練習をしている。
家の中で。数メートル先で「もしもし、聴こえるかぁ!」とやりあうだけだ。
何か疑問があると、すぐにまた説明書を熱心に読んでいる。
三年も説明書を読み続けて、一度も外出時に使ったことがない凄まじさ。

「今は携帯電話でメッセージを送りあうのが主な使い方です」
と義両親に言ってみたが、もう、彼らには全く意味がわからない様子だ。

いやいや、これからもどんどんいろいろな新しい物資が登場して、いつかは私も義両親の今の状態になるのだろうから、彼らを馬鹿にしたり批難したりできない。
ぐっと我慢で、義父の携帯電話練習に付き合っていくことにする。