雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

ソレは決して恥ずべきことではないのだよ

2009-11-14 | 雑記
 朝起きたら寝癖がとんでもなくひどかった。もう、直す気にもなれないほどだったのでキャップを被って出かけた。

 何年か振りにキャップを被っての外出に道行く人の視線が気になった。それは、この齢(35歳)でキャップを被っていると「あいつ、ハゲてんだろ」と思われてるような気がして。たぶん、いやきっと、私のいつもの被害妄想に過ぎないのだろうが、っていうか、まだかろうじてハゲてないし被害もクソもないのだけれど(ここで強調すると本当はハゲてんだろ? と思われかねないので難しいところだが、まあ好きにしろ)なんだか落ち着かない気分。

 しかし何故このような被害妄想が湧き上がってくるのかというと、自分がそういう、中年男性でキャップ姿の人を見ると断定してしまうからだ。
 妻に「あいつ、ハゲてんだろ」と哀れみとも嘲りともつかぬ物言いで同意を求めるからだ。
 すると妻は、「やたらハゲに過敏だよね。やっぱ心配なのか?」と痛いところをついてくる。
 そう言われると、私はこう応えざるを得ない。「ばかやろう。たかが髪の毛がなんだっていうんだ」
 妻はさも可笑しそうに、「だから、そうやって過敏になってること自体が執着してる証拠」などとのたまう。
「うるせえ。ハゲのどこが悪い! ハゲは決して恥ずべきことではないのだ!」
「なに必死にハゲかばってんの? 実はヅラか(笑)」

 ひどい女だ。ハゲを嘲笑うものはいずれハゲの報復を被ることであろう……あっ! ということは私もいずれ……。
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ゆれる/西川 美和

2009-11-14 | 小説
 私個人の暫定邦画ランキング№1が『ゆれる』

 その小説。ふつうだったら読まないけれど、なんせ監督・脚本の西川美和女史が自ら小説化したものだ。
 この前、『名作はいつもアイマイ』という西川美和編集の書評エッセイを読んで、ああこの人は監督だけではなく文章も巧い人なのだな、と思い、俄然読む気にさせられた。

 いやぁ、それにしても凄い。てっきり映画のストーリーをなぞってる感じの小説かと思いきや、映画とは違って色々な人物の視点から描かれていて映画とはまた別の感嘆を覚えた。一人一人の感情の「揺れ」を物の見事に描ききっている。まあ、自分で脚本書いて自分で撮った映画なんだから、全てを把握しているのも当然といえば当然なんだろうけれども、これだけ色んな人物の想いを描写できる筆力に、なんという多彩か、と、ただただ感嘆させられる。

 映画を観たあとなので、やっぱり読んでるとどうしても登場人物はそれぞれの役者さんが頭の中に浮かんでくるけれど、それでもいい。それでいい。
 
 昨今は、やたら流行っている漫画だとか売れている小説などを原作に映画化されているけれど、やっぱり監督自ら原作・脚本を手がけたものがとても好い。それがいちばんしっくりくる。
 だからこそだろう、映画でもラストシーンは涙が溢れ、小説でも同じシーンで涙ぐんだ。

 これからも、原作・脚本・監督を貫き通して欲しい。
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後悔と真実の色/貫井 徳郎

2009-11-14 | 小説
 貫井徳郎、久しぶりの警察小説。著者曰く「ここのところ難しい社会問題をテーマにした作品がたまたま続いてしまいましたが、今回は久しぶりに難しいこと抜きのエンターテインメント性重視の作品です。」とのこと。
 しかし、ネット上での書き込みやそれらに付随する近年の犯罪化などを問題にしている記述などを読むと、やっぱり「社会派貫井」だな、と思う。
 ストーリー的には、「指蒐集家」なる連続殺人魔を追いかけるという、まさに王道っぽいものだけれど、そこはやはり「驚愕の貫井」。今回も読者を欺く仕掛けが丁寧に施してある。素直に読んでいけばわりと早い時期から犯人の目星はついてくるんだけど、そこには大きな疑問があって、それが明言されたときのカタルシスといったら、もう言うことなしの驚愕。

 警察小説といえば、雫井脩介を思い出してしまうのだが、雫井の後半やっつけ仕事的な作品とは違い、後半に全力を注いで読者を驚かせよう、楽しませようとしてくれる貫井徳郎は、やはり最高のエンターテイメント作家なのだろう。

 前作『乱反射』は直木賞候補になったが惜しくも逃した。個人的には今作より『乱反射』のほうが好みなのだが、今度こそ直木賞を獲ってもらいたい。
 絶対に、もっと評価されるべき作家なのだ、貫井徳郎は。
コメント (7)
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