雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

ぼくは落ち着きがない/長嶋 有

2009-03-24 | 小説
 たしかに。落ち着きがないな。

 図書部員たちの青春群像小説。いや、でも、高校生なんて落ち着きないもんだろ?ってか、落ち着いてないのは作者そのもので、なにやら登場人物たちに翻弄されているというか、弄んでいる、というか……いまいち、まとまりが見えてこない話だったなぁ。

 雰囲気はいいんだ。相変わらず。こういう「ゆるーん」な中に入りてーなー、とか思っちゃうのは、いつもの長嶋ワールドなんだけど、でも、なにか、どこかが、ちょっといつもと違う気がして。
 それがナニかは分からないけど、とりあえず、これもいつものことだけど、漫画ネタで爆笑させられる。同世代なので「これでもか!」ってほど漫画ネタ、ウケる。
 今回は特に、

「おまえってさー、『金田一少年』の学園七不思議の事件で殺された尾ノ上みたいだな」

 で、あだ名が「尾ノ上」に決定された件。腹がよじれるくらい笑った。その後、コイツが出てくる度に『金田一少年』の「尾ノ上」が脳裏に出現して、いささか困った。(しかもコイツがアニメ美少女が大好きないわば「ノーマルなオタク」。もう、ダメ……爆)

 いやしかし、こんな漫画ネタで笑いをとっているだけではなく、やはりそこは青春小説。様々な葛藤の中に見え隠れする若き日々の痛みや喜びが、つつがなく描かれております。

 でも、やはり、なんとなく、タイトルどおり、落ち着きがない。そこが狙いだとしても、ちょっと残念だった。
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