川上弘美さんの約10年間に及ぶ新聞各紙の書評連載、また文庫本あとがきや解説文を集めた144冊分の書評集。書評集に対して書評めいたものを書くのもなんだが、人生稀にそういうこともあろう。
自分は殊に、書評やら選評といった類いが好物であるようだ。ともすれば、小説本編なんかよりも、あとがきや解説のほうに面白味を感じたりもする。それはとりもなおさず、その人本来の持つ人間臭さが垣間見えるからであろう。特にこれが作家などにいたっては、小説世界では見られない「素」の考察が窺えるので、とても近しくその人を感じられて、ときめく。エッセイが好きな理由も、概ねそんなところだ。
やはり好きな作家さんの嗜好には寄り添いたくなるものである。その寄り添うものが、他ならぬ「本」なのだからたまらなく嬉しくもなる。そして著者がいとしい川上弘美さんである。もうまるで、ストーカー的思慕にも似た想いで、最後まで川上弘美を堪能した。出来ることなら、本書で紹介された144冊の本を全て読み尽くしたいとも思うが、流石にそこまで気持ちは及ばない。そこが、かろうじて偏執的なストーカーと一線を画すところである。
それでも何冊か、いや何十冊か、これは是非とも読みたい、読まなければというものがでてきて、嬉しい悲鳴をあげている。
もちろん、本書の主旨は「こんないい本があるのです。どうぞ読んでみてくださいね」というところで、それはもう十二分に魅力的な筆致でもって達成されているのだが、それ以外にも、自分は本書を読んで思うところがあった。
ひとつは、書評のなんたるか。軽妙かつ魅力的な言葉選びは川上さんの小説でも得意とするところだが、「この本いいんですよ!」という想いがそうさせるのだろう、小説以上にその言葉選びは慎重かつ大胆にもたらされ、その本の魅力を存分に伝えてくれる。
もうひとつは、小説のなんたるか。小説とはいったいなんだ? それは今もってしても明瞭に答えられたものではない。しかしながら、数多の選評や書評を読んでいるうちには、おぼろげにではあるがその輪郭、または断片などが捉えられることがある。それらはずっと体内に沈澱されることもあれば、にべもなく蒸発していくこともある。またその都度その都度、上書きされたりもして、まったく不安定なものであったりする。故に「小説とは?」の答えはままならない。が、本書には少なからず「小説とは」或いはそう、川上さんの小説論みたいなものが著されている。それが即ち「小説の正体にあぐねいてる自分」にとってはひとつの指針となったことは確かだ。そのような上でも充分に為になった一冊である。
大の本好き、川上弘美さんならではの、本に対する親しみや慈しみをつめ込んだ、素敵な本である。
自分は殊に、書評やら選評といった類いが好物であるようだ。ともすれば、小説本編なんかよりも、あとがきや解説のほうに面白味を感じたりもする。それはとりもなおさず、その人本来の持つ人間臭さが垣間見えるからであろう。特にこれが作家などにいたっては、小説世界では見られない「素」の考察が窺えるので、とても近しくその人を感じられて、ときめく。エッセイが好きな理由も、概ねそんなところだ。
やはり好きな作家さんの嗜好には寄り添いたくなるものである。その寄り添うものが、他ならぬ「本」なのだからたまらなく嬉しくもなる。そして著者がいとしい川上弘美さんである。もうまるで、ストーカー的思慕にも似た想いで、最後まで川上弘美を堪能した。出来ることなら、本書で紹介された144冊の本を全て読み尽くしたいとも思うが、流石にそこまで気持ちは及ばない。そこが、かろうじて偏執的なストーカーと一線を画すところである。
それでも何冊か、いや何十冊か、これは是非とも読みたい、読まなければというものがでてきて、嬉しい悲鳴をあげている。
もちろん、本書の主旨は「こんないい本があるのです。どうぞ読んでみてくださいね」というところで、それはもう十二分に魅力的な筆致でもって達成されているのだが、それ以外にも、自分は本書を読んで思うところがあった。
ひとつは、書評のなんたるか。軽妙かつ魅力的な言葉選びは川上さんの小説でも得意とするところだが、「この本いいんですよ!」という想いがそうさせるのだろう、小説以上にその言葉選びは慎重かつ大胆にもたらされ、その本の魅力を存分に伝えてくれる。
もうひとつは、小説のなんたるか。小説とはいったいなんだ? それは今もってしても明瞭に答えられたものではない。しかしながら、数多の選評や書評を読んでいるうちには、おぼろげにではあるがその輪郭、または断片などが捉えられることがある。それらはずっと体内に沈澱されることもあれば、にべもなく蒸発していくこともある。またその都度その都度、上書きされたりもして、まったく不安定なものであったりする。故に「小説とは?」の答えはままならない。が、本書には少なからず「小説とは」或いはそう、川上さんの小説論みたいなものが著されている。それが即ち「小説の正体にあぐねいてる自分」にとってはひとつの指針となったことは確かだ。そのような上でも充分に為になった一冊である。
大の本好き、川上弘美さんならではの、本に対する親しみや慈しみをつめ込んだ、素敵な本である。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます