雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

旧友へ

2010-04-04 | 友人
 そいつとは、かなり古い付き合いだ。もう、出逢ったのが保育園の頃。そこからいくらかの間を置いたりはしているが、いうなれば、友人の中でいちばん古い付き合いだ。
 今日は、そいつの36歳の誕生日だったので、お祝いのメールを送った。住んでいるところが少し離れていることや、互いに所帯じみてしまっているせいもあって、今ではもう、ほとんど年賀状と、互いの誕生日に「歳とったなぁ」と言い交わす程度のやりとりだが、しぶとく繋がっている。
 毎年のことながら、とりたてて大きな問題もなく、元気でやっていることだろうと思い、こちらも相変わらずさを示そうと、バカ丸出しの下ネタメールを送りつけてみたら、程なくして返信がきた。
 いつもみたいに、とりたてて言うほどのことでもない近況が記されていると思っていたが、今年はちょっと違った。
 そこには「二月末に会社が倒産した」ことや「十数年ぶりに就活した」などと、屈託なく書かれていた。
 今のご時勢、そうそう珍しくもないことだが、やはり驚いた。かく言う自分も現在の状況はといえば芳しいものではない。倒産一歩手前の休職中の身。それでもいくらかは手当ては貰えるし、いくらか身が軽い。
 そいつには、かわいらしい娘がひとりいる。今、いくつであっただろうか? たぶん小学校低学年くらいだと記憶しているが、ともあれまだまだかわいい盛りの子供がある。時代がかった言い方ではあるが、一家の大黒柱としての気構えや責任たるや、自分の比ではない。自分なんぞはオナニー癖がまだまだ抜けていない(精液はたっぷり抜いているが)無責任男である。
 そんな男に心配されても片腹痛いだけであろうが、やはり古い付き合いだ。その身を案じてしまう。
 しかし、メールには「次の職場の勤務が4月20日から」と、すでに就職先があるようなので、すぐに胸を撫で下ろした。
 それでもやはり、古い付き合いなので気にかかるところもある。そいつは自分に負けず劣らず、気性が荒いのだ。この歳で再就職ともなると、それこそ年下の奴に頭を下げなければいけないこともあるだろうし、また年上の人間にしてもままならない部分が多く目につくこともあろう。とにかく、やっかいな年齢であるとともに、やっかいな気質を持ち合わせているのだ。だがしかし、そうは言っても、もうあの頃みたいに全てに唾を吐いて盗んだバイクで走り出すほどの若さと愚かさは、ない(あったら困る)。なにより今、そいつには「妻」という心強い支えのもとに、「娘」そして「家族」というかけがえのない存在を「守らなければならない」という気概に満ち溢れていることであろう。きっとそうだ。
 自分は、そいつとはかなり古い付き合いだ。だからこれは、決していい加減な言葉にはならないはずだ。
 そして確信をもって、言えるのだ。

「何があろうと、オマエは絶対に大丈夫だ」
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