雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

北緯14度/絲山 秋子

2009-09-14 | 小説
 紀行文。

 絲山秋子、西アフリカ・セネガルへの魂の旅! ダカールを拠点に二ヶ月間の滞在を様々な心情を交えて赤裸々に綴られてる。

 ぶっちゃけ、「セネガルって何処?」って感じで読んでました。でも、場所なんてどうでもいい……いや、よくないか?……それよりも、絲山さんの周りに集うセネガル人たちの人柄や、その地の風土、生きるための気概などが作者ならではの感性で描かれ、それがひしひしと伝わってくる。いいところなんだろうなぁ、きっと、って。それを端的に著している記述がある。

≪セネガルではパスポートの次に人なつこさとユーモアが大事なのだ。日本では考えられないほど、しょっちゅうみんなサイサイな話ばかりしていて、でもそれが決して下品になることはない。≫

『サイサイな話』とは、助平な話、要するに下ネタだ。これを読んだとき、「ああ、なんだかとても仲良くなれそうな国だな」と……でもちょっと、僕のサイサイ話は下品だけれども……なんて思った。ウォルフ語で「女子高生のパンチラ」ってなんて言うのかな? などと真剣に考えた。

 国外における、特に発展途上国内における、一部の日本人の醜悪さなども、絲山女史ならではの切り口で書かれているので、もしもこういうところに出掛ける機会のある人間は、しっかり読んで肝に銘じておいたほうがいい。でも、元から醜悪な人間は、こういうのを読んでも嫌悪感を表すだけで改善の余地もないんだろうけど。

 それにしても、外国人とのコミュニケーション、いやさ、もう、わずか二ヶ月で友情を培ってしまう絲山秋子の人柄に、一層の魅力を覚えました。きっと、セネガルの人たちの気質もあるのだろうけど。

 なかなかディープな紀行文であったことは、確実。
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