雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

そのノブは心の扉/劇団ひとり

2010-04-09 | 小説
 劇団ひとりの、事実を元にしたフィクションエッセイ。
 ともかく痛快である。あのベストセラー小説「陰日向~」は未読だが、芸人としての劇団ひとりには常々興味があるので、エッセイということもあって読んでみた。
 いやはや、やはり、この人は頭のいい人だなあ、とつくづく感心させられた。と同時に、こいつ本当にバカだなぁ(笑)、とも。
 ふつうのエッセイではない。もう、ネタとしての色が濃い読み物だ。随所垣間見られるユーモア溢れる言い回し。散りばめられた伏線の末の巧みなオチ。書いてあることを鵜呑みにしてしまうと、いったい劇団ひとりのひととなりというか性根を疑いかねないが、あくまで芸人の書いた少し大げさなエッセイとして読むと、まったく感心させられる。でもたぶん、七、八割くらいは事実と思われるので、やはり性根は疑ったほうがいい。だがそれでも、堪らなく惹き込まれ共感すら覚えてしまうので、どうやら自分の性根も疑ったほうがよい様である。
 とにかく自意識の在り様がハンパではない。でもそれも「ああ、わかるわかる」なのだ。情けないことに……。たいがい、好意のある人物と共感せられたならば、嬉しいはずなのに、彼に至ってはそれが恥ずかしいのがなんとも可笑しい。
 自虐の一歩手前とでも言おうか、自尊心だけは甚だ大仰なのに厭味などさらさら感じない、清々しいまでに痛快なエッセイであった。
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