雲跳【うんちょう】

あの雲を跳び越えたなら

空白の叫び

2007-10-31 | 小説
 久々に、貫井徳郎氏の著書を読みました。

『空白の叫び』です。㊤㊦巻です。

 以前に読んだのは『慟哭』と『プリズム』と、あと、なんか探偵のお話(題名サッパリ忘れた)で、どれも凄い面白くて、ああ、これぞ驚愕?ってカンジでお気に入り作家だったにもかかわらず、その後バンバン新刊が出るも、なかなか読む機会に恵まれず、というか、なんか読むのめんどくさくて・・・とかなんとかで、毎回、図書館行くとチェックはするんですが、何気にスルー。。。

 でもコレはね、なんか、凄い惹きつけられました、㊤㊦二冊がドーンって並んでて、あとどっかで少年犯罪の話だって見た記憶があったんで、とにかく読んでみようと手に取りました。ってか、まぁ、他に読むもんなかったってのが真実。。。

 いや、しかし!読み始めると、もう、大変!以前に読んだときも、この人って登場人物の深層心理を緻密に描くなぁ、、、と感じていましたが、今作ではそれが物凄く、活きてました。っていうか、話の内容とかストーリーとか関係なく、「久藤」「葛城」「神原」この十四歳の少年三人の心理描写だけでもかなり良質な作品になってました。ホント、丁寧に彼らが如何にして犯罪者へと陥っていったかを膨大な量で描いていったおかげで、㊤の半分はそれ。でも、全然、飽きることなく読み進められました。偏に貫井氏の文章力、表現力によるところも大きいです。

 そんで、㊤のあと半分は三人が少年院で接触するんですけど、ここでも、たぶん、ここまで少年院ってヒドイとこなの?と、思ってしまう描写が何とも言えず、ゾクゾクしちゃいます。ってか、ホントにこんなとこだったら絶対入りたくないなーって思います。幸い、私が少年院に入る可能性は0ですね。刑務所、です。。。

 そして㊦ではおよそ十ヶ月という更生期間を終え、社会復帰を目指す三人ですが、犯罪者に世間はそんなに甘くはない、という現実に直面し、己の空白に身悶えしながら、次第次第に破滅の道へと進んで行こうとしてしまう、といったような内容です。
 ハッキリ言って、驚愕とか意外な犯人とか奇想天外なトリック、などは施されていません。わずかにラスト、驚愕させようとしていますが、途中、なんとなく解かってしまうので、あまり重点は置いてないみたいです。
 とりあえず、この作品はそんな稚拙なミステリに頼らず、『少年犯罪』という、現在とても難しい問題を少年の視点で描き上げた、とても濃密な作品だと、思います。

 誰もが持て余している心の空白に、様々な想いの叫びが響き渡っていました。

 
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2 コメント

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Unknown (ノロモン)
2007-11-01 00:53:39
これは読んだぞ!確か貫井氏を読み始めたキッカケは秀のお薦めやった気がする。三人が交わっていくとこなんかはとうとうきたか~って感じやったな。ほんでもページを開くたびビッシリの文字に、それこそ空白?余白?がほしい~って叫びやった。
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えぇ、そうよ♪ ()
2007-11-01 22:01:36
人にお薦めしといて、自分は三冊程度しか読んでなかったという・・・でも久々にこれ読んで、また貫井作品にハマっていこうと思います(まぁ、また二、三冊読んでしばらく放置プレイになるだろうけど)
確かに、物凄い文章量だったわ。。。読むのに二週間以上かかったもん(遅すぎ?
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