ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

仏教百話

2010-02-03 12:05:37 | Weblog
増谷文雄著、ちくま文庫

ブッダの出家から寂滅までのことばを、見開き完結のお話にまとめた入門書。

お釈迦さまのお話はどれもシンプルでいい。
心に「すとん」と落ちる。
でも、読んだ時は納得するのだけど、
いざ実践しようとしたときに、途方にくれることもある。

これは、お釈迦さまが説法をしたときには、具体的な事象があって、
それに対する言葉だったわけだけれども、
いまの私とは、やはり少し離れた世界でのことだから、しょうがないのだと思う。

その隙間を埋めるために、長いあいだ経典は研究されつづけているわけだし、
各宗派にわかれて、さまざまに研究・実践されているわけなので、
原始だから正しくて、新興だから邪だ、という話とも違うと思う。

要は、お釈迦さまが言うように、
仏教の根本である「法」に基づき、中道をまもり、慈悲心による言動かどうかが重要。
つねによい批判精神とともに「法」とあれば、過度な個人崇拝や教団理論に陥ることなく、
仏教は日常の糧になるものだと思う。
ただ、これは本当に難しい。

この本でに、お話の筋とともに、偈(げ)という韻文も随所に載っている。
すごく美しいと思ったものを1つ書きたい。

「さきには放逸であったけれども、
いまは放逸にふるまうことなき人は、
あたかも雲間を出でし月のように、
この世を照すであろう。

かつておのれのおかした悪業を、
いまや善業をもっておおう人は、
あたかも雲間を出でし月のように、
この世を照すであろう。」

ただ自戒をうながしているだけの言葉ではなく、
人をゆるすこと、本質を見ること、そして可能性を感じること、
いろいろな意味が込められていると思う。

改めて、この世のすべては移り変わるものだからこそ、
人は救われるのだと思った。