ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

大人の都合

2013-08-11 18:51:40 | Weblog
週末の間にやらなければならない仕事を持って帰ってきた。
いちおう終わったのだけど、それにしても家には誘惑が多い。
どこを向いても読みたい本だらけだ。

つまり、人から借りた本が、雑然と積まれているので、
どこを向いても目に入る。

さて、最近の日本では、といっても上海で窺い知る日本なので、
主にネットでの情報が主になるが、
一時期までの自虐史観がなりをひそめ、
どちらかというと、日本ってやっぱりスゴい国だぜ!モードなんだろうと思う。

基本路線としては賛成。
右傾化礼賛という意味ではなくて、
東京裁判を鵜呑みにする必要はない、という意味で。

昨日、友人と話をしていて、なるほど、と思ったことがある。
中国でも、南京大虐殺は、日本の蛮行としてよく話題に上る。
でも、731部隊の人体実験は、中国でもあまり話題に上らない。
それはなぜだろうか。

南京で亡くなった人の数が何万人だろうが、
それが全部日本軍のせいだとか、いやいや国民党だってやっただろうとか、
そんなことを論じても、私は水掛け論になると思う。
でも、731は確実にあった。亡くなった人数は「大虐殺」ではないけど、
人道的な観点からしたら「虐殺」そのものだったと思う。

私としては、この違いは東京裁判のせいだと思っている。
東京裁判で、731も裁くように国民党は働きかけたが、
731のデータがほしかったアメリカが黙殺した。
黙殺したばかりか、占領下の日本で研究を続けさせた。
一方の南京は、東京裁判でA級戦犯を裁く罪状のひとつとなった。

中国は当時、国民党の時代だった。
国民党は、武器から軍隊の育成まで、アメリカに頼っていた。
だから、アメリカが「No」と言うことには従わざるを得なかった。
そして共産党は、国民党の路線を引き継いだ。
南京大虐殺であれば、連合国がさばいた罪状の中にあるのだから、
それが少々脚色されていようが、連合国は絶対に「なかった」とは言わないからだ。

そしていま、日本も731のような闇の歴史を伝える努力をしなくなってきている。
それは、右傾化以前の問題として、憂うべきことだと思う。
日本の出版社は、売れるから出版するだけではダメだ。
伝える義務を持っているのだから。

これを言うと、すごいファンの人たちは、嫌がるのだけど、
宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」は、満洲国への夢だと思っている。

測量をしている人たち。砲兵たち。
「今こそ渡れ、渡り鳥」は、まるで満蒙開拓移民のようだし、
銀河鉄道からは、トウモロコシ畑が見える。
満鉄の車窓からもトウモロコシ畑が見えただろう。
ハルピン、長春、大連、ロシアが建てた西洋風の建物が並ぶ。
そして、鉄道に乗っている人は、「知らない言葉」で話す。
サウザンクロスが見えるのは、大東亜共栄圏の南の果てだ。

当時、日本の貧しい東北の農村の人たちが、満足に食べられるようになるために、
満洲国に夢を描いたとしても不思議ではないと思う。

だからといって、私は宮沢賢治が平和の代名詞であることに異論はない。
侵略主義者だと言う気もない。

ただ、私とは違う世代の人だと思うだけだ。
それを前提に、その人が描いた夢を知りたいだけだ。

日本人は極端に走るので、その気になると一致団結して素晴らしい技術を産む。
村八分を恐れて、とりあえず場を読む人も多い。
ただ、売文業者は、もっと客観性を持つべきだと思う。
大人の都合では、思想は育たない。