豚も杓子も。

私にすれば上出来じゃん!と開き直って、日々新たに生活しています。

カラフルメリイ

2006年05月16日 | Weblog
NYLON100℃の舞台、ケラリーノ・サンドロヴィッチ作・演出「カラフルメリイでオハヨ ~いつもの軽い致命傷の朝~」を観てきました。



出演される役者さんに引かれて随分前から楽しみに待っていた舞台でした。
しかし、観に行くことを迷ってもいましたが、行ってみて良かったです。事前に情報を入れていかなかったせいもあって、新鮮な感覚で観ることができました。
気持ち、元気になったような気がします。

一言でこうだったと語ることはできませんが、10分の休憩を挟んでの三時間半はおおむね目が離せない充実した時間でした。
場面転換も細かくて、ほとんどショートコントで構成されているような運びでありながら、9年ぶり4回目の上演という定評ある舞台らしい安定感を感じました。

背景となっている世界は、老年性の痴呆症(認知症)なのでしょうか。
最近、シュールな設定としてよく取り上げられるような気がします。
同じような設定として、昨年の中谷まゆみさんの「お父さんの恋」、これはシュールというより極めてリアルでしたが。
そして先日の後藤ひろひとさんの「姫が愛したダニ小僧」もそのひとつにあげられると思います。これは、主人公のおばあちゃんの脳内への冒険物語でした。
「カラフルメリイでオハヨ」の主人公は、おじいちゃん。この主人公が、たぶん、老年性の痴呆症。

SFや宇宙に求めない非日常の世界は、今、人の心の内に向かっているそうですが、その中でも、老いに伴って生じてくる世界は舞台を作る人たちの関心を呼んでいるということかもしれません。あまりにも身近だけど、計りしれない深遠さも併せ持つ、非常に繊細な題材でもあります。

「人生は大いなる冗談です・・」とエンディングで主人公が講釈し始めると、とたんに緞帳が降りてきて、チョン。という終わり方も、いきなりでなかなか面白かったです。

お爺さんを抱える家族の混乱が悲劇的に描かれるのではなく、むしろ重なるような笑いどころも満載。
「お前たちのことをクソミソに言っていたのだ。クソミソのクは、モヘンジョダロのピだ・・・」。かなり笑ってしまいましたが、これはやはり現地で聞いてこそですね。

時間を割き、間に合うように算段し、実際に出かけてこそ感じられることが観劇の魅力だと思います。
演じる側だけでなく、それを受け止めるこちら側の状態にも左右される舞台への反応は、自分でも予測がつかないので本当に興味深いです。
それがあるから、また繰り返し出かけていくことになるのでしょう。