豚も杓子も。

私にすれば上出来じゃん!と開き直って、日々新たに生活しています。

しちへん洗えば、鯛の味

2006年05月18日 | Weblog
妹のお姑さんが教えてくれた言葉です。

昔から広島市内には、「いわしのおばちゃん」というリヤカーを引いて小いわし売りさばく行商のおばちゃんがいらっしゃいました。今は、随分数も減ったようですが、それでも地区によってはまだまだ馴染みのある日常的な風景です。
網から直接仕入れたような新鮮ないわし。一尾がだいたい8~10センチくらいの大きさでしょうか。何尾というより、ひと山単位で取引されます。

鮮度が落ちるのが早いので、すばやく売りさばかなくてはなりません。
おばちゃんたちは、行商の傍ら、自らも専用の竹?のへらで身をへぎとり、いわしの刺身を作りながら街角を廻ります。
売り声は、「手手噛むいわし、いらんかえー」だったような。
手を噛むほどに新鮮ないわしは要りませんか、という意味ですね。

昨日のお魚の記事に対していただいた千鳥さんのコメントを読んでいたら、小いわしのお刺身のことを思い出しました。
これこそ、このあたりを代表する味だと思います。しかも、とってもリーズナブル。
めばるなんて本当に手がでません。せいぜい、手のひら大のを買って煮付けにするくらいですね。これも、美味しいですけど。
四人家族だとステーキを用意したほうがお得なくらいです。可食割合で言ったら、お肉は一応100%ですし。

小いわしの刺身は、ひたすら手間が命。
もちろん、新鮮であることは最低条件ですが、これに手早さと家族への愛が加わらなければなりたたない献立でしょう。
行商のおばちゃんのへらがあれば便利なのでしょうが、それほどの量ではないときは、(といっても四人分でどんぶり二杯ほどは欲しいですが)手でさばきます。
まず、えらに親指を差し入れて頭をひっぱります。すると、頭に渦巻状の黒い内容物がついてくるので、それごとちぎって捨てます。あとは、お腹を親指の背で開きます。中をざっと洗って親指の爪を身と背骨の間にに添わせて、骨から身を放します。これで身が二枚と骨に分かれました。いわゆる三枚におろした状態ですね。
この身は指のぬくもりで温くなっていますから、できれば氷水にとります。
100回くらいそれを繰り返して、四人分の量を確保。
その後、何度も水を替えて身を洗います。

これが、最初の言葉「しちへん洗えば鯛の味」なのですね。
すなわち、七回洗えば、値段の安いいわしも鯛のように美味しくなるよということでしょう。
あとは、中高に盛り付けて、わさびやしょうがのすりおろし、小口ねぎを添えます。醤油またはポン酢などお好みのもので食べます。

今日手に入れば、お目にかけたいと思ったのですが、あいにく入荷していませんでした。(ほっ・・。)
またその季節になったら、試してみようと思います。
もしも、鮮度が今ひとつというときは、その身をてんぷらやから揚げにすれば、これも飛び切りのご馳走です。シソの葉で香りを付けたり、柑橘類をひとたらしすれば問題ありません。
材料費が、これまたフレンドリーで、四人分で500円~600円くらいかなあ。

得意げに紹介しながら、実は心が痛いのですが、なんといってもこの料理は手間がかかります。
てんこ盛りにしてある小いわしの山を横目に、手早く調理できる切り身に手が出る現実があります。
お母さんって、やはり辛くても面白くなくても、おうちにいて家族のために生きていなくちゃと思わされることも度々ですが、これもそういうことの一つなのかもしれませんね。
でも、出来れば、本当にここで写真つきで紹介してみたいです。

そうだ、私は以前は魚の料理なんて全く出来なかったのでした。生簀で泳いでいる魚と目が合っただけで、数日は気分がすぐれない。まして、包丁で切りつけるなんてとんでもなかった時期もありましたね。
ま、そこから多少は進歩したのだからよしとしよう。