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銀英伝人物評60<ジークフリード・キルヒアイス>

2004年08月31日 12時14分59秒 | 銀英伝人物評
司法省に勤める下級官吏を父に持つ。子供の頃は町のガキ大将だったが、隣に引っ越してきたミューゼル家の姉弟により運命が思いっきり変わった。ミューゼル家の姉弟と仲良くなってしばらくたった頃、アンネローゼが後宮に入れられ、ラインハルトが幼年学校に入ると、その1ヵ月後にはラインハルトに誘われ、キルヒアイス自身も軍人を目指して幼年学校へ入学する。
幼年学校を卒業し、初陣となったカプチェランカβⅢでの戦いから常にラインハルトの傍らにあって、その常勝の神話を支えつづけてきた。外伝を見る限り、こいつがいなかったらラインハルトはとっくに4,5回は死んでいただろう(それは本人も言っているが)。
ラインハルトが元帥府を開くと、大佐から准将を飛ばして少将になったキルヒアイスに箔をつけさせるためにカストロプ動乱の討伐を命じる。この後中将に昇進。アムリッツァではヤンとも戦っている。この時指向性ゼッフル粒子を史上初めて実戦で使った。その後、今度は大将を飛ばして一気に上級大将に昇進。ついでに宇宙艦隊副司令長官にも就任。
リップシュタット戦役ではルッツ、ワーレンを従えて別働隊として戦う。
戦役後の祝勝式典上でアンスバッハの凶弾からラインハルトを守り死ぬ。

ラインハルトに対し、彼とは別の角度のものの見方を提示し、常に建設的な方向に思考を進めさせて来た。アムリッツァの戦いの後、ビッテンフェルトを処罰しようとしたラインハルトに理を尽くして説得したのはその最たる場面だろう。外伝で、ラインハルトに会ってから苦労性になったと言っているが、紛れもない事実だというのがよくわかる。
ラインハルトは生まれながらの天才だったが、キルヒアイスは自分の努力によって実力をつけた。ラインハルトの腹心を勤めるには相当の努力が必要だったのではないだろうか。おかげで射撃は幼年学校でトップ、格闘戦もシェーンコップに舌を巻かせるほどの実力を持ち、艦隊指揮でもついに不敗だった。そんなキルヒアイスに対し、ラインハルトは全幅の信頼を置き、「全宇宙が俺に背いてもキルヒアイスだけは俺の味方」と言った。
オーベルシュタインが参謀となってからは、彼のNO.2不要論によって、キルヒアイスは他の提督と同格扱いになるが、最後まで涙ぐましい忠節を尽くした。これはアンネローゼとの誓いのためであり、キルヒアイスの最期のセリフがラインハルトに対してではなく、「アンネローゼ様にお伝えください」であるように、アンネローゼのために捧げた人生であったのは何気に感動的だ。
死後に帝国宰相、帝国軍三長官と元帥号を贈られ、ラインハルトが帝位につくと大公の称号が贈られた。アンネローゼが大公妃なのはそのためである(うろ覚え)。これにはオーベルシュタインが反対したのだが、「誰が傷つくのだ」とラインハルトに一喝された。

忠誠心・功績・実力において比類ない存在であったため、キルヒアイスの死によるラインハルトの人的損害は甚だしかった。誰もが後に「ジークフリード・キルヒアイスが生きていれば」と、その死を惜しんでいる。
後にジークフリード・キルヒアイス武勲賞という賞が制定される。この賞を授与される資格についての説明はないが、軍事における功労者に対して贈られるものだろう。ちなみにこの賞は、贈られると葬礼および墓碑の建設を国庫でまかなってくれるというもので、帝国軍人にとっては最高の栄誉である、と原作に書いてある。ファーレンハイト、シュタインメッツ、ミュラーが受賞した。

歴史に"if"は禁物だが、せっかくなので、キルヒアイスがアンスバッハに殺されずに済んだ場合の歴史の展開をちょっと考えてみようか。

まずガイエスブルグ要塞によるイゼルローン攻略戦。当然キルヒアイスは反対しただろう。戦略的には特に意味のない戦いであったし、ラインハルトはケンプを捨て駒扱いしていた。

続いて皇帝誘拐。これもキルヒアイスは反対していただろう。新無憂宮の警備責任者のモルト中将が犠牲になるのを最初から計算した謀略だったからだ。
ということはラグナロック作戦の発動はもっと後にずらされていたかも。

まぁそれはおいといて、ラグナロック作戦が発動した場合、キルヒアイスがイゼルローン方面の攻略を担当していただろうことは、ラインハルトも語っているので、イゼルローン要塞を巡ってヤンと戦っていたことになるわけだ。ちなみにシェーンコップと一騎打ちになったかどうかは微妙。あれはロイエンタールがヒューベリオンを見て突出したのが原因だったから。とにかくヤンが要塞を放棄し、それをキルヒアイスが占拠すると。そこまでは原作と大差ない結果となる。

それからバーミリオン会戦までの流れは原作どおりとして、問題はバーミリオンでの戦いでどちらが勝つか。キルヒアイスが他の提督と同じく、一度ウルヴァシーから離れて、また戻ってくる作戦をとった場合、結局ミッターマイヤーと同じ判断をくだしたのではないだろうか。多分ヒルダはミッターマイヤーではなくキルヒアイスのところにハイネセン急襲を進言しに言ったと思われる。もしミッターマイヤーのところに言ったとしても、キルヒアイスがバーミリオンに戻ったところで間に合わないはずだ。というのも、ヤンはラインハルトと戦うにあたって、一番先に戦場に駆けつけるのは疾風ウォルフだと予想し、戻ってくるまでにラインハルトを倒し終わるよう計算していた。また実際にその計算は間違っていなかった(結果的にミュラーがもっと早く戻ってくるが)から、戦場に駆けつけるのをあきらめたわけだから。
ということは、ラインハルトがヤンとの会談で言った、キルヒアイスが生きていれば「死んだ卿と対面したはずだ」という発言は間違っていたことになるが…。

なんかどこかで予想がおかしい気がするが、気にせず続けよう。
さて、ローエングラム王朝が開闢し、キルヒアイスはおそらく帝国軍三長官のどれかに就くだろう。問題は新領土総督に誰が就任するかだが・・・。キルヒアイスはこの際ありえないと思う。ラインハルトが手元に置きたがるし、オーベルシュタインも反対するだろう。ということはやはりレンネンカンプか!?それもおかしい気がする。レンネンカンプの就任についてはオーベルシュタインが能力的にふさわしくないと反対しているし、キルヒアイスもこれに同意見だろうと思うからだ。ということはメックリンガーが適任ではないだろうか。まぁそういうことにしておこう。

そうすると、ヤンへの疑惑は先延ばしになるわけで、3年後にラインハルトが史実どおり病没する。ヒルダとの結婚はなかったと断言しよう。なぜなら、ラインハルトとヒルダが結ばれたのはラインハルトがヴェスターラントの生き残りに弾劾されたショックが原因だからで、もしキルヒアイスが生きていればヒルダの出番はなく、キルヒアイスがラインハルトを支えただろうからだ。
ついでに言うと、ロイエンタールの叛乱もキルヒアイスが生きていれば防げたに違いない。

じゃぁ後継ぎがいないローエングラム王朝は一体どうなる?やがてヤンがメルカッツらを糾合して叛乱を起こし、求心力のなくなったローエングラム王朝はロイエンタール派とキルヒアイス派で分裂して全宇宙がまた戦乱になるのか?そうなったら面白いがなんかこの予想はどこかおかしいな。書かなきゃよかった。

銀英伝人物評59<アンスバッハ>

2004年08月31日 11時09分18秒 | 銀英伝人物評
ブラウンシュヴァイク公の腹心。外伝でも何度か登場している。軍人としての有能さを持ち合わせながらも、比類ない主君への忠誠心ゆえにシュトライトなどとはやや考え方のスタンスが異なる。

クロプシュトック侯爵の討伐で投獄されたミッターマイヤーをラインハルトたちが救いにきた時は、わざとフレーゲル男爵らが懲らしめられるのを待ってから登場して多少なりともミッターマイヤーに憂さ晴らしをさせるなど、複雑な行動をとったりしていた。

リップシュタット盟約が結ばれたとき、ブラウンシュヴァイク公の下にはアンスバッハの他にシュトライト、フェルナーという有能な家臣がいたが、それぞれ別々の身の処し方をとったのは面白い。アンスバッハは主君への忠誠心という一点で最大限にその意思を尊重したが、果たして勝てると思ったのだろうか…。

オフレッサー上級大将が敗れた後ガイエスブルク要塞へ戻ってきたが、寝返りの嫌疑をかけられたため、ブラウンシュヴァイク公に直接弁明しようとしたが、アンスバッハが射殺した。にもかかわらず、殺した後で「本当に裏切ったのでしょうか」とぬけぬけと言っているのは笑った。最初から気づけよ。

ヴェスターラントへの熱核攻撃を反対したことにより牢に入れられてしまうが、最後は部下の手により牢を出てブラウンシュヴァイク公に自裁をさせる。ブラウンシュヴァイク公自身は死を嫌がり、自分の娘をラインハルトに嫁がせるのと引き換えに助命を請おうとした。だが、アンスバッハは、かつてヒルダが洞察したようにラインハルトの狙いが貴族とその制度自体の滅亡にあるというのを察知していたため、その無益さを話した。もし本当に助命をすれば、当然ラインハルトに嘲笑されてさらに名誉を損なうことになるからだ。臣下としては正しい判断だと思う。

その直後の祝勝式典ではブラウンシュヴァイク公の遺体の中にハンドキャノンを隠しておき、それでラインハルトを吹っ飛ばそうとしたが、キルヒアイスによって阻まれたため、自害した。無論ラインハルトを殺したところで、ブラウンシュヴァイク一門が復活するわけではないだろうが、主君の遺命を守りとうそうとしたその行動はラインハルトですら美を感じ、キルヒアイスの死の責任をアンスバッハに帰する考え方はしなかった。
なんとなく、古代中国に登場する忠臣を彷彿とさせる男だ。