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湘南でゆるゆら暮らしココロ赴く先へガシガシ出かけるライター山秋真が更新。updated by Shin Yamaaki

『ためされた地方自治』おかげさまで再版/上野千鶴子さんの帯文/井出創太郎さんの銅版画

2011-09-06 23:56:35 | 『ためされた地方自治』

拙著『ためされた地方自治―原発の代理戦争にゆれた
能登半島・珠洲市民の13年』の再版本が届いた。



おかげさまでの再版。せっかくなのでこの機会に
上野千鶴子さんに書いていただいた帯文もご紹介させていただく。



 「買収、外人攻撃、人質有権者…国策や電力会社の攻勢、
 地方政治の泥仕合に衝撃をうけた都会の若い女性が、
 事件の生き証人となりながら自分の生き方をゆさぶられた記録。
 いつのまにか巨悪に加担させられているわたしたちの魂も、
 ゆさぶらずにいない。
上野千鶴子(元・東京大学大学院教授)

この春に東大を早期退職されたので
今回は「東京大学大学院教授」のまえに「元」がついている。
この呼び名、先生はあまりお好きでないかも?
という気がしないでもないが、きっといろんな配慮もあってのこと。
そのあたりは初版時に先生もご理解くださっていたし、
ここはわたしがこだわってもはじまらない。

この本の外見でわたしがこだわったのは
表紙、すなわち本の「顔」だった。
銅版画家・井出創太郎さんの作品をつかわせていただいている。
まったく別の表紙になるところだったのを、頼みこんで
井出作品に変更してもらったという経緯がある。

この本では
四半世紀以上も原発建設計画にゆれた珠洲の人びとの
長年の苦労・悩み・切なさ・もがきなどを描いている。
人間の悲しみや膿・腐臭も感じられるかもしれない。
と同時に、その歳月が呻吟一色ではなく
笑い・楽しみ・情熱もあったことをも描こうとした。
だから
この本の「顔」は、珠洲のもがき・呻吟・苦悩だけでなく、
冴え冴えとした明るさ、うねるような情熱、そして
ある種のすがすがしさをも感じられるものであってほしい、
というのがわたしの願いだった。

両立しづらい要素を同時に表現する表紙を求めたわけで、
我ながら無理な望みのような気もした。
ただ、同時代に生きる人びとを描いている以上、
安易な妥協はしたくないし、できない。
ならばどうしたら? と困っていた時に
井出創太郎さんの銅版画作品がひらめいたのだ。

自然界でゆっくり腐食するという銅を
腐食液に浸けて加速度的に腐食させることで、
植物(シュロの葉)の版を銅にきざむ。
その過程でできた緑青(りょくしょう)もそのままに、版画を刷る。
刷りあがった作品は、
腐食液の中でもだえるような生きものの「うごめき」を見せながら、
紙のうえに刷りこまれた緑青が
もだえの中にもすがすがしさを醸しだしている――。

それが、井出さんの銅版画。
この本の表紙は井出作品でなければならなかったと思う。

そしていま、
ひとりでも多くの方にこの本を読んでいただけたらと願わずにいられない。
ささやかなアクティヴィズムのひとつとして。
よかったらあなたも、あなたの大切な方にお勧めくださると嬉しい。

ちなみに、
以下のウェブサイトをご参照いただくと
井出作品についてもっとわかるはず。

相倉 その光と襖」(富山県・世界遺産の五箇山でのプロジェクト)
http://www.shokoren-toyama.or.jp/~gokayama/washiart.htm

渡部家住宅―その光と記憶」(愛媛県松山市でのプロジェクト)
http://watanabeke.exblog.jp/

落石計画(北海道根室市でのプロジェクト)

http://www.ochiishikeikaku.com/

落石(おちいし)計画のサイトには次の言葉が。

あえて辺境とよばれる、隔絶された岬の旧無線局跡で毎夏、継続すること。
この試みが、都市への一極集中が進む現状を、美術の力で組み替えるための
ささやかな嚆矢となることを切に望んでいます。
落石計画実行委員会

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