過日のこと。
祝島について早々、いつもの小屋へ挨拶によると
出迎えてくれたのはヒトではなく、組みあわされた木材だった。
思わず見いる。
ここは、これまでに、伝馬船の模型づくりや
千石船やトロール船の模型もみせてもらった船大工さんの小屋。
祝島で毎日のように船にのるうちに自分はどうやら船好きと気づき、
せっせと通うようになっていた。
そこでいま、中世の船を再現中なのだ。
声がする方へと歩くと、小屋の外で
4月よりも陽に焼けたいつものお顔が並んでいた。
ビールをわけていただき再会をよろこぶ。
しかも今回は
中世の船を再現する場に出会えたばかりか
その超難関作業にも立ちあえ、望外の喜びに。
作業を見ていてもいいと言っていただけたので、
気がつくと丸一日、わたしは船づくりを見学させてもらった。
こんなに幸運でいいんだろうか。
そういえば、わたしが生まれ育った家は
船をデザインして建てられた家という。
ひょっとして船ハウスで育った縁ゆえか?
…ともあれ、写真も撮らせていただけたうえ
ブログ掲載も了解していただけたので、眼福をすこしお裾わけ。
これは、船底にする材木の下で火を燃やし
熱で材木をあたためてカーブをつけているところ。
木が燃えないように表面を水でぬらす。
この水は糠をといてあり
焦げるときには糠が焦げる仕組みというから
さすがよく考えられている。
ここからの一連の写真は
中世の船を再現する過程の「超難関」にあたる。
ここでもバーナーの火で木材をあたため、
万力(まんりき)や木の支えなどを多用して
徐々に成形をしていく。
これを何度もくりかえし、まっすぐな木の板を捻るように曲げてゆく。
船底中心のこの部分は
もっとも曲げなければならないから「超難関」のようだ。
実際は、中世にはこれはくり舟だったとか。
今ではそんなに大きな木が手にはいらないため、
かつては大きな木をくりぬいて造った船を
木造船をつくる技術によって再現しようということらしい。
船底に隙間をつくらぬよう、
木材と木材のあいだになんども鋸(のこぎり)をかけ、
さらに密着させていく。
やはり万力を多用して、根気よく形づけてゆく。
こうした作業をくりかえし、くりかえし、
ようやく「超難関」が無事終了。
釘穴に船釘(ふなくぎ)を打つ。
火を使うから暑いうえ、
鋸(のこぎり)をかけるにしろ釘を打つにしろ力仕事で
すごい重労働だ。
しかも緻密さも必要だから、見てるだけのわたしまで
思わずいつもより緊張した。
いやはや、木の板がこんなに曲がるとは。
祝島の技術力はどうやら奥が深そう…
という予感をあちこちで強くはしていたけれど、
中世の船を再現するこの木造船の技術も
見事としか言いようがない。
ちなみにこの船、
2012年の大河ドラマで使われる予定という。
ふだん見たことないけど
この船みたさに、来年は大河ドラマみちゃうかも?
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