朝刊を手にとると、上野千鶴子さんの写真が目に飛びこんできた。
一面に記事掲載で、今日は最初に対面した人間が上野さんとあいなった。
「3・11から 女性の視点―下―
急なかじ切り 知恵必要 東大名誉教授 上野千鶴子さん」
(東京新聞2011年12月9日朝刊)
残念ながらウェブにはないみたいなので以下に一部抜粋してご紹介。
(ぜひ全文を読まれることをお勧めしたいので、ご興味おありの方はお手にとってみてください)
「…原発のある地域は、原発マネーで潤い、やがて、それなしでは生きていけない構造に巻き込まれた。
金力は、構造的な暴力です。相手を協力者に仕立てていく。依存と同意を強制していったともいえる。
その構造は、沖縄の基地問題とよく似ています。(以下略)」
その圧倒的な金力は、原発ができる前からふるわれる。
たとえば今日12月9日、
中国電力の上関原発計画の予定地をかかえる山口県上関町では
原発の準備工事の進捗率0%ながら、原発関連交付金で温浴施設がオープン。
総事業費9億5300万円のうち、原発交付金で約8億4600万円を充当したという。
(参考:2011年12月4日中国新聞
「上関海峡望む温浴施設が完工」http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201112040025.html)
こうした国から支払われる交付金以外にも、原発立地地域には
電力会社からさまざまな寄付がなされる。
関西・中部・北陸電力三社が原発を計画していた石川県珠洲市にも、
能登半島各地につたわるキリコ祭りでつかう灯篭「キリコ」の収納庫や、
農産物の保冷庫や温室、貝の養殖施設などが、電力会社の寄付でできた。
施設の維持費や電気料金は電力会社もち。
だが計画凍結後、キリコ収納庫以外はいずれも壊された。
電力会社がそれらの施設のための費用負担をやめたので、とても維持できなくなったからときく。
(参考:2011年12月2日「しんぶん赤旗」
シリーズ原発の深層 第4部 蠢(うごめ)く利権集団③ 過疎対策おきざりに
同シリーズ第1部の目次はこちら→http://www.jcp.or.jp/akahata/html/menu5/index.html)
それにしても、
「・・・原発立地地域の人たちの多くは安全神話を信じ込まされてきた被害者かも知れませんが、
少なくとも私自身は、少なからぬ人たちが原発は危険だと警告しているのを知っていた。
なのに、許容はしなくとも反対の声をあげなかった。暗黙の同意を与えていたことになります。
福島の人たちより罪が深い。悔いと反省があります。」
と、今朝の東京新聞紙上で上野さんがいっておられたのには頭がさがった。
確かにそうともいえるかもしれないが、
2011年3月11日まで世のなかにはそういう人が少なくなかった。
そのなかで上野さんは、たまたま出会ったわたしに学びの場をあたえ、
珠洲の原発計画をめぐる本をだす機会をあたえてくださったばかりか、
最後のゲラチェックの段階まで、ふだんは一歩はなれて見まもり、
肝要なときには間髪をいれずコメントをくださった。
おかげで珠洲の経験をよりひろい世界で共有することができるようになったうえ、
『ためされた地方自治』出版後に珠洲へご一緒したとき上野さんから何気なく尋ねられたひとことが
その後わたしの問題意識を深めていき、上関への関心をいや増した。
いまのように世間のあちこちで「ゲンパツ」という言葉を耳にするようになる、だいぶ前のことだ。
上野さんについては、おりしも『現代思想』(青土社)で
「総特集 上野千鶴子」(2011 Vol.39-17, 12月臨時増刊号)がでている。
読みはじめたばかりだけれど、なんとも読みごたえある一冊で楽しい。
上野さんの関心と思考と行動のすそ野の広さに、あらためて驚く。
この、分野横断的な総合力というか、つなぐチカラ、対話するチカラ、聴くチカラみたいなものが、
原発なしの社会をつくるのに必要そうな気がする。