折りたたみ北京~現代中国SFアンソロジー~(ケン・リュウ編/ハヤカワ文庫)
数年前から、ハヤカワ文庫でケン・リュウの作品を見るようになったが、手を出さずにいた。(新しいタイプのSFは博奕のようなもので、全く好みに合わないこともあるのだ。)劉慈欣の『三体』シリーズを読み終えた後、アンソロジーならリスクも少ないだろうと本書を買ってからも1年余り、積読のままだった。まあ、かなり分厚い(500ページ超)本なので。
読んでみると、予想以上に読みやすく、それぞれに個性ある作家の良作だった。もちろん、全てが好みではないが。
いくつかの感想。
ディストピアを描いた作品の割合が高い。これは、中国特有というのは不公平だろう。SFとはそういうものだ。が、極端な管理社会を描いた『沈黙都市』の解説に、編者が、中国政府への風刺として読む誘惑には耐えるように、とコメントしているのは、本気なのかジョークなのか、判別できない。(ところで、『三体』では文化大革命を取り上げているが、天安門事件を題材にした作品はあるのだろうか。)
表題作の『折りたたみ北京』は、チャイナ・ミエヴィルの『都市と都市』とは異なる形の二重都市(三重都市?)を、短編の中で描いて秀逸だった。
巻末に、劉慈欣の中国SFに関するエッセーが掲載されている。その中に、『三体』の第一巻と第二巻は幅広い読者を得るため、文芸としての質やリアリズムに配慮したが、第三巻ではそれを断念し、コアなSFファンのために書いた、とある。それで、第三巻が、SF的なアイデアの展開に傾いた、ぶっ飛んだ内容になっている理由が理解できた。
で、改めてケン・リュウの作品を読むかどうかは、また別の話。
数年前から、ハヤカワ文庫でケン・リュウの作品を見るようになったが、手を出さずにいた。(新しいタイプのSFは博奕のようなもので、全く好みに合わないこともあるのだ。)劉慈欣の『三体』シリーズを読み終えた後、アンソロジーならリスクも少ないだろうと本書を買ってからも1年余り、積読のままだった。まあ、かなり分厚い(500ページ超)本なので。
読んでみると、予想以上に読みやすく、それぞれに個性ある作家の良作だった。もちろん、全てが好みではないが。
いくつかの感想。
ディストピアを描いた作品の割合が高い。これは、中国特有というのは不公平だろう。SFとはそういうものだ。が、極端な管理社会を描いた『沈黙都市』の解説に、編者が、中国政府への風刺として読む誘惑には耐えるように、とコメントしているのは、本気なのかジョークなのか、判別できない。(ところで、『三体』では文化大革命を取り上げているが、天安門事件を題材にした作品はあるのだろうか。)
表題作の『折りたたみ北京』は、チャイナ・ミエヴィルの『都市と都市』とは異なる形の二重都市(三重都市?)を、短編の中で描いて秀逸だった。
巻末に、劉慈欣の中国SFに関するエッセーが掲載されている。その中に、『三体』の第一巻と第二巻は幅広い読者を得るため、文芸としての質やリアリズムに配慮したが、第三巻ではそれを断念し、コアなSFファンのために書いた、とある。それで、第三巻が、SF的なアイデアの展開に傾いた、ぶっ飛んだ内容になっている理由が理解できた。
で、改めてケン・リュウの作品を読むかどうかは、また別の話。
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