ビブリア古書堂の事件手帖Ⅳ~扉子たちと継がれる道~
(三上延/メディアワークス文庫)
新シリーズの4作目。今作で取り上げられる作家は夏目漱石だが、漱石の初版本を含む「鎌倉文庫」が、今回の大きなテーマ。
そして今作の主眼は、作者がかねて予告していた、栞子の過去が描かれていること。
正直、このシリーズは行き詰まりかけているのではないか、と危惧していた。発行の間隔が長くなり、内容も、扉子よりはむしろ、依然として栞子が中心的な役割を果たしている。
前作から2年後に発行された今作は、そのような懸念をきれいに拭い去ってくれた。
戦後間もない時期に実在した「鎌倉文庫」の貸出本の行方、という謎を軸に、3世代の女性それぞれの17歳の姿が描かれ、物語の枠組みが大きく広がった気がする。
断片的な感想を。
解決編となる栞子の物語が際立っているのは確かだが、これまで、いくらか悪役のように描かれていた人物も、1人の本を愛する女性として丁寧に描かれている。
栞子の夫、大輔の視点で記述される章があるのは従来どおりだが、今回は、それに加えて、栞子の父、篠川登も登場するのが新鮮だった。
今後、例えば栞子の母が家を出るエピソードが語られる、というような展開を期待してもよいのだろうか。
次作もきっと待たされるだろうが、作者の呻吟を想いつつ、楽しみにしたい。
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