「孔版」と言うより「ガリ版」と言ったほうが、ある年代から上の方々にはなじみがあると思いますが、「孔版」が版画技法のひとつの名称で使われることがあるのに対して、「ガリ版」は死語に近いのではないでしょうか。
ヤスリの上に蝋紙を置き、鉄筆で一字一字書いて完成させたものを謄写版にセットし、インクを付けたローラーを転がして、一枚一枚印刷する方法は学校教育の現場で教師の配布物、児童生徒の文集、遠足の歌集など、ごく当たり前のもので、いくら上手に印刷しても指はインクで真っ黒になるのが常でした。
一枚一枚おこなう手刷りだったものが、そのうちに手回しの輪転機、さらには電動のものが出現して印刷時間が格段に短縮されるようになりました。
印刷する原理は同じでも、印刷したい原稿を光学的に読み取り、回転する胴に蝋紙に相当するシートを装着して版下を作り、高速印刷する機械が勤務先に導入されたときは、画期的だと思いました。
一方、家庭でも同じ原理の印刷機を簡単に使えるようにしたのが、プリントゴッコでした。年賀状といえばプリントゴッコというぐらい、毎年作りましたねぇ。ところがワープロが出現して、家庭でも印刷の真似事が出来るようになり、PCが普及するに至っては、そんな前近代的な印刷機を使う人が激減し、ついには製造中止に追い込まれてしまいました。
今や家庭で印刷するのは当たり前。3Dプリンターで拳銃を作ることだって可能なんですから。時代は変わりましたねぇ。
前記事『魔法の鳥』の著者、若山八十氏【(やそうじ)1903~1983年】が昭和21(1946)年11月に編集・発行したのが、この「孔版」です。
これは再刊の第1号で、その「あとがき」を見ると、最初の「孔版」は昭和19年8月号の休刊までに24冊発行したそうですが、見たことがありません。
表紙。
目次。
オリジナル作品が3枚収められています。上2枚は貼り込み。
「日本最初の謄写版店之図」
「河童有情」
「イソップ絵話 人間と狐」
升目に綺麗に収まる活字のような字を書きたいと、練習したことを思い出します。