読みました

本を読むのが好きです。
忘れないように感想等を書いています。
その他、ねこのひとり言…。

今年の6冊目

2009-08-22 12:12:14 | 読書
                          

「しずり雪」 安住洋子著

 時は老中水野忠邦の改革で厳しい奢侈取締りが行なわれている。
蒔絵職人の孝太は小枝と所帯を持ったばかりで仕事を失っていた。
ある日、音沙汰の途絶えていた作次が仕事を持ってきた。

裏がありそうだが小夜も病気になり、困った孝太は仕事を引き受ける。
魂を込めた会心の一品が出来て二両を受け取り、作次への度重なる
貸金も回収して一息ついた。雪が降り続いた翌日、友五郎親分が訪れる・・・。

小夜との幼い頃からの思い出と、幼馴染の作次からの無心を
断れない孝太の心情が切なく描かれています。作次の最期の行動に
救われます。

他に三編。
各編に友五郎親分の登場と過酷な時代に生きぬく人々の
哀感が描かれて切ない。

養生所の若い医師の生き方-理不尽に運命を曲げられる者達に
対する熱心さ―の背景を描いた「寒月冴える」

お互いを思いやる余りにすれ違う、初恋の成就の難しさと、
背中の刺青に振り回される男の人生を描く「昇り龍」

藩の不正を問い質したせいで斬殺された父の思いを抱えて
養子に行った息子が、複雑な感情に悩みながらも成長し、ついに仇と
対決する感動の中篇「城沼の風」には思わず涙が溢れました。