古伊万里というのは茶道具のような「お道具」ではなく、あくまでも食器として作られています。(当たり前ですが)
つまり、お皿であれば料理を盛ったら、見込み中央部にどんなに凝った絵付けがされていても隠れてしまうことになります。
伊万里の歴史を辿ると、江戸中期に見込み中央部を白抜きした品や、中央に五弁花だけを絵付けした品が登場します
今回の品はそんな「中央部白抜き意匠」の品です。
「染付菊文六寸輪花皿」

中央部は二重圏線で区切られ、文様は全くない白抜きになっています
その周囲には濃い呉須と瑠璃呉須で変化をつけた濃みの中に菊文が描かれています。

中期古伊万里にこの手は時々見かけますが、わりと上手の品という印象をうけます
お皿にとって一番のステージである見込み中央を白抜きしたのは何故か?
昔なにかの本で読んだのは「食器としての機能・完成度を求めた」と書いてありましたが、納得できるようなできないような・・・。

落款は一般的な渦福で、裏面の唐草文もそこそこ丁寧ですが、「藍柿」と呼ぶにはあと一歩といった感じでしょうか。
私の場合、文様に惹かれるタイプなので、中央部白抜きや五弁花だけのデザインはあまり好きではありません
しかし、この品は染付けの発色が美しいことに魅力を感じて購入した品です。
ついでながら、こういったタイプの品では「車輪福銘」の品に優品が多く、それらの一群に比べると、ちょっと上手の中期古伊万里というのが
実際のところなのかも知れませんね。