震災後3年が来週来るということで、マスコミが東日本大震災関連記事、復興の進み具合に関して取材、現状報告、課題などを提起しています。そのことは被災地の復興にとっても重要なことと思います。ただし、3年もたっても復興住宅、被災者の住宅再建、居住地が定まらないことは異常だし、行政の怠慢と指摘される問題です。そのための、土地の買い上げ、権利関係の整理、資財の不足、価格の急騰が毎日新聞社説で取り上げ、提起しています。
だれが考えても、被災者の居住地、住宅が再建、確保されることが優先することは自明のことです。その上で、住宅を作る地域の整理、確保を自治体が政治課題として解決しなければならないこともはっきりしています。また、地権者との調整、了解なども自治体が中に入り、関係者との協議がどうしても必要なこともあきらかです。そのための法整備、自治体職員数の確保などは国、他の自治体が支援をすべき課題です。3年という月日が流れても、被災者が住むことの出来る住宅が確保できないなどは考えられないことです。
資材確保、急騰する価格などは、メーカー、行政が協議し調整できることです。いろいろな公共工事があるかもしれませんが、東日本震災復旧、復興課題は最優先で解決すべき課題です。過疎化に苦しむ地域の課題とも重なる課題があります。地域に働く場所、企業を確保すること、地域産業を育成することは東北も、被災地も、過疎地域にも共通する課題です。
<毎日新聞社説>
東日本大震災の津波被災で1100人を超す犠牲者を出し、住民の集団移転を進める宮城県東松島市。同市野蒜(のびる)地区の丘陵で宅地造成の際にできる大量の土砂を海沿いまで運ぶ全長1.2キロの巨大ベルトコンベヤーが今年から稼働している。
トラックで土砂を運んだ場合、4年近い年月を要するというのが市の試算だった。それでは計画自体が破綻してしまうと阿部秀保市長らが国にかけ合い、70億円の工費で設置した。震災前約4万3000人だった人口は流出もあり、約3000人減った。寒風と重機音の中、搬出した土砂が山を築く光景は復興の「時間との闘い」を象徴している。
◇厳しい時間との闘い
震災発生からまもなく3年、今なお全体で26万7000人が避難生活を強いられ、このうち10万人はプレハブ仮設住宅の暮らしが続く。自宅を再建できた被災者はまだ、ごく一部である。
津波対策の切り札とされる集団移転は震災5年にあたる2016年3月になっても岩手、宮城両県で宅地供給が済むのはなお半分程度だ。同時点で賃貸形式の復興住宅の供給すら8割程度にとどまる。住宅、雇用など暮らし再建の展望が開けないことが被災者にとって一番つらい。この1年で被災3県の集団移転計画が全体の約2割にあたる約5800戸縮小したのも、多くの人が故郷での自宅再建をあきらめざるを得なかった厳しい現実の表れだろう。
安倍内閣や与野党が「復興の加速」を本気で目指すのであれば、避けられない二つの政治的な課題を特に指摘したい。
ひとつは移転用地の買収に手間取る自治体の窮状の打開だ。岩手県大槌町など用地の複雑な権利関係が障壁となり、取得作業が滞る自治体がなお少なくない。復興庁は要員の支援や手続きの簡素化で対処しているが、関係自治体には土地収用の特別措置法制定を求める声が強い。私有財産権との兼ね合いもあり行政が動きにくい領域だけに、必要ならば早急に議員立法による対処を政党が判断すべきだ。
もうひとつは被災地で深刻化する資材などの工費高騰や建設業界の人手不足への対応である。
安倍内閣の下で全国的に公共事業が活発化、復興事業の落札業者が決まらず入札不調に終わるケースが目立っている。アベノミクスによる経済政策や東京五輪開催に向けた建設需要が復興の妨げとなりかねない。工費の算定基準見直しや、外国人労働者の短期的な活用を求める議論も出始めている。復興需要への対応策を急がねばならない。
さまざまな困難に直面しながらも再建への取り組みは進んでいる。東松島市の場合、震災前からあった地域の自治組織が参加して数カ所の移転候補地を選び、移転先の住民予定者による協議会を主体にまちづくりプランが練られている。
そのうち「東矢本駅北団地」の協議会では宅地の割りふりをはじめ、町並みや新自治会のルールなども移転を予定する人たちが相談しながら決めている。団地や併設する復興住宅でペットを飼えるよう、ルール作りも手がけている。根気のいる作業だが協議会長の小野竹一さん(66)は「100%でなくとも70、80%はみんなが満足できるようにしたい。日本一の団地にしたい」と意気込みを語る。
◇「日本の課題」の縮図
国が自治体に、自治体が住民に計画づくりを委ね、支え役に回るのが地域主導のサイクルだ。だが、その歯車はなかなかかみ合わない。
宮城県山元町の場合、公共交通や都市機能が整った内陸部に津波の被災集落を再編、集中する「コンパクトシティー」構想を町は主導する。だが、もとの居住地近くでの移転を望む被災者らは生活環境を無視した方針だと反発、対立を生んでいる。
国からの復興交付金も復興庁が他の自治体との横並びにこだわるため「使い勝手が悪い」との声がなお、被災自治体から聞かれる。日々変化するニーズに対応するには首長が必要と判断したものは原則として交付を認めるくらいの信頼がないと、地域主導は実現しまい。
国が担うべき役割も次第に変わる。政府は震災発生から5年間を集中復興期間と定め、19兆円だった復興費総額は25兆円に拡大された。だが、今後比重を増すのはハードからソフトに軸足を移した再生支援だ。
津波で浸水した跡地の有効利用、農水産業の再生や雇用確保などに民間企業やNPOも含めた協力がこれからはますます大切になる。復興庁は大手企業と地元企業をつなぐ場を考えるなどしているが、取り組みはまだ不足している。中央官庁のタテ割りを超え、一体的支援を展開できるか真価が問われよう。
高齢化が進み、人口が減る中で地域のコミュニティーを保ち、雇用や暮らしをどう守っていくのか。被災地の課題は日本の多くの地域が共通に抱える課題でもある。だからこそ、復興の行方は明日の社会を映す鏡なのだ。被災地の挑戦がとても大事な局面を迎えるいま、行政のみならず私たち一人一人がこれを支える思いを新たにしたい。