日銀による異次元の金融緩和が何をもたらし、もたらしつつあるかが分かったこの1年ではなかったかと思います。安倍、自民党中枢が考えたことは、見せ掛けの景気回復を演出するために、株式市場への投資をあおり、株価の上昇を政治主導で実施しました。海外の投資家が安い金利の資金を使い、投機市場に参入し、株価などの上昇を演出しました。しかし、実体経済の構造転換、長期的な見通し、展望がない中で設備投資などは拡大しようがないことはまともな経済学者、経営者であれば、自明のことです。しかも、これだけ国内企業が多国籍化して海外に生産拠点を移しているときに、円安が輸出数量(結果としての売り上げ、輸出額)を増やすことなどはありえないことは誰でもわかることです。この程度のことも分からないとすれば、政策立案者としての資格、能力がないといわれても仕方がないことです。ですから、政策立案者が知らないはずはありませんし、付け焼刃の国民だましの政策であることは彼ら自身が一番良く知っているはずです。
デフレの解消、自民党型政治経済の最大の特徴は、原因を分析することができないことです。なぜなのかといえば、彼らの政策目的がすべて、大手企業の利益拡大、アメリカ政権、アメリカ支配層の利益優先にあるからです。そのために取った政策、経済政策は貧困の拡大、非正規労働の拡大、労働者の賃金水準お切り下げ、消費税率の引き上げ=法人税率の引き下げを実現することにあり、それらの政治経済政策の結果として、社会の不安定化、少子化、貧困化がもたらされています。原因を作りながら、その克服対策を自らが立案することはそのこと自身に自己矛盾があり、出来ないことはあきらかです。そこで、表面を取り繕う政権運営に終始することとなります。
したがって、自民党、自民党型政治で、現在日本が直面している政治経済の閉塞状況を打開することができないのは理論的にあきらかです。金融緩和はインフレ、統制不能のインフレに発展する危険があります。また、このようなゼロ金利政策は、そこから抜け出すことが非常に困難であることも示しています。アメリカもこの金融政策で、抜け出せずに困っています。反面、都市部と地方の格差、富裕層と貧困層の格差拡大など社会的不公正、治安の悪化などを招くことは確実です。
おろかな安倍、自民党の欺瞞的な経済政策、日銀の無責任な金利政策、国債買取は、確実に国家財政に付けを回し、構成に取り返しのつかない負の遺産を背負わせることはあきらかです。早く修正させることがどうしても必要です。
<東京新聞社説>
日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁が就任して一年。異次元の金融緩和で円安株高は進んだが、消費税増税を控えデフレ脱却にはなお不透明感もある。アベノミクスの勢いが衰える中で黒田日銀も正念場である。
就任直後に決めた「日銀の資金供給量を二年間で二倍に増やし、二年後をめどに2%の消費者物価上昇率を実現する」という大胆な金融緩和策は、それまでの日銀の「小出し」姿勢を改め、市場のムードを大きく変えたのは確かだ。行きすぎた円高を修正し、低迷していた株価は、この一年間で約14%上昇した。円安が進んだことで海外の売り上げが多い大企業の収益は大幅に改善した。
とはいえ、実体経済は安倍政権が喧伝(けんでん)するほどには良くなっていない。輸出は、製造業が生産拠点を海外移転させたことなどで、円安が進んだのに増えてこない。消費は、株高などの資産効果で高額品が売れたのと、消費税増税前の駆け込み需要が中心だ。
所得や雇用環境は、低賃金の非正規雇用が増えるなど「質」は低下した。設備投資も消費税増税を警戒して手控えられている。要するにアベノミクスによる経済の好転は広がりに欠け、恩恵を受ける国民はごく一部でしかない。
肝心の物価上昇は、総裁就任時に小幅マイナスだった消費者物価指数は一月には前年同月比1・3%に上昇。日銀の期待通りの数字とするが、内容は円安によるガソリンなどエネルギー価格や輸入品高騰という「悪い物価上昇」の面が強い。賃金や雇用が伸びる好循環による「良い物価上昇」でなければ意味がないはずだ。
問題は、消費税増税が始まる四月以降である。春闘で大手企業のベアが相次いだが、それでも所定内給与の押し上げ効果は約0・3%にとどまるとエコノミストはみる。消費税率が3%上がれば、実質所得は約2・7%減少し、家計への打撃は相当なものになる。
景気の失速懸念が強まり、思ったように物価が上昇しなかった場合に、黒田日銀はどう動くのか。すでに日銀は新規に発行される長期国債の七割を市場で買い占め、財政の穴埋めと受け取られかねない状況だ。さらなる緩和は、意図せぬ金利上昇を招いたり、金融政策を正常に戻す道のりを難しくしよう。
消費税増税の影響を考慮すれば、硬直的に「二年で物価上昇率2%」にこだわるべきではない。重要なのは、十五年続くデフレからの脱却を確実にすることである。
<2014年度予算>
過去最大規模となる一般会計総額95兆8823億円の2014年度予算は20日の参院本会議で、自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立した。年度内成立は3年ぶりで、1999年と2000年の3月17日に次ぐ戦後3番目のスピード成立。政府・与党は、13年度補正予算と合わせた「101兆円予算」の一体的な執行で、4月1日の消費税率8%への引き上げに伴う景気の腰折れ回避を目指す。
14年度予算は、社会保障費が初めて30兆円を突破。20年の東京五輪開催に向けた公共事業費や、中国の海洋進出に対応する防衛費を2年連続で増額した。歳入のうち、税収は消費税増税と景気回復に伴う法人税収の伸びを見込み、7年ぶりに50兆円の大台を超えた。新規国債発行額は13年度当初に比べ3・7%減の41兆2500億円。
<北海道新聞社説>格差の拡大放置できぬ
地価にようやく底入れの兆しがみえてきた。
国土交通省が発表した1月1日時点の公示地価は、東京、大阪、名古屋の三大都市圏に加え、札幌などの拠点都市で住宅地、商業地とも6年ぶりに上昇し、全国平均はほぼ横ばいとなった。だが、地方では調査地点の4分の3が下落し、低迷は深刻だ。都市と地方の格差拡大は、もはや放置できない水準にあるといえる。
政府は過度な大都市優遇を見直し、地方重視の視点を政策に盛り込まなければならない。安倍晋三首相が成長戦略の柱に掲げる国家戦略特区はその好例だ。土地利用規制の緩和や高層ビル開発の促進など、大都市を視野に入れた政策が目立つ。2020年の東京五輪・パラリンピック開催に向けたインフラ整備も結局は首都対策にすぎない。
地価の二極化を是正するためにも、地方の実情に即した産業振興を積極的に打ち出すべきだ。
今回の調査では、三大都市圏で上昇率が10%を超す地点が増加した。金融緩和で生じた資金が、大都市のマンションやオフィスなどの不動産市場に流入しているのが要因のひとつである。
「ミニバブル」の様相すら見せ始めたこうした動向には、とりわけ警戒が必要だ。復興に向け土地需要が高い東日本大震災の被災地の一部でも、上昇が顕著に現れた。このまま高騰が続けば、土地取得が難しくなり、復興の妨げになりかねない。投機的な土地取引に対し、政府は監視の目を光らせなければならない。
一方、北海道内の地価は、全国の傾向と同様、札幌への一極集中が急速に進行している。札幌では住宅地、商業地ともに6年ぶりにプラスに転じた。マンション需要の高まりとともに、消費税率引き上げ前の駆け込み需要にも支えられた。全般に下落幅が縮小したとはいえ、道内には、留萌や紋別など地価の回復が見通せない地点は数多い。厳しい状況に変わりはない。
苦境を脱却するうえで、地価上昇に向けた自治体の努力も欠かせない。国内外から人を呼び込み、魅力を発信する取り組みを加速させる必要がある。移住促進や企業誘致、観光振興などの各分野で、一層知恵を絞っていくことが大事だ。道もこうした窮状を厳しく受け止め、自治体の取り組みを強力にバックアップすべきだ。