各社各様の主張を掲げています。共通するのはウクライナへの軍事侵攻を中止し、クリミア半島のロシア編入を中止することです。その点では、ロシア以外の国、マスコミの主張も共通しています。しかし、G7主要国会議がロシアを締め出すこと、経済制裁を課すことには異論があります。この点はなかなか興味深いものがあります。
軍事大国同士の衝突は、絶対に避けることが必要ですし、軍事的な対立をあおり、緊張を高めるようなことが国際関係に良い影響を与えるはずはありません。信濃毎日新聞社説が指摘するように、話し合いの場を用意し、粘り強く関係国が協議を行うことを訴えるべきです。ロシアにとっては経済制裁が、良いはずはありません。また、ロシアとの経済関係が、EU諸国にとっても重要なことは非難することではありません。これだけ政治経済が国際化している中で、孤立化を迫ることは決してよい結果をもたらすとは考えられません。
国連が中心となり、ロシア、ウクライナの協議、調停を行うことが重要なのだと思います。
<信濃毎日新聞社説>
日米欧とカナダの先進7カ国(G7)にロシアを加えた「G8」の枠組みは、過去のものになるのか。
G7が緊急首脳会議を開き、ロシアをG8の会合から一時排除することを決めた。ロシアが国際社会の声を顧みず、ウクライナ南部クリミアの編入を強行したためだ。態度を変えない限り、参加を停止する。対立激化は避け難い。イラン核協議やシリア問題などロシアとの協調が必要な課題は多い。外交努力を尽くすべきだ。
会議は、オランダのハーグで開かれた。「G8」の呼称が定着した1998年のバーミンガム・サミット後、重要な政治問題についてロシアを外して首脳会議が開かれたのは初めてだ。採択されたハーグ宣言は、クリミア編入を「明白な国際法違反」とあらためて非難した。ロシアで予定されていた6月のG8首脳会議を各国がボイコットし、代わりにベルギーでG7の会議を開くことも表明している。
G7の結束は示したものの、事態の打開は望めそうにない。
ロシアのラブロフ外相は「われわれは、G8にしがみついたりしない」と述べた。世界経済を話し合う主な舞台が20カ国・地域(G20)首脳会合に移り、G8の影響力は低下している。そんな事情も踏まえてのことだろう。
クリミアでは、ロシア・ルーブルが公式通貨になるなど、ロシア化が加速している。ウクライナ軍の施設や艦船の大半をロシア軍が制圧し、ウクライナ政府は軍部隊の撤退を決めた。ロシアは、国境沿いに大規模部隊を展開している。クリミアと同様、ロシア系住民の多い南東部への介入が懸念される。
G7は、ロシアが状況を悪化させ続けた場合、経済制裁に踏み出す用意があると警告した。一方で外交解決の余地が残されていると指摘している。ロシアが欧州安保協力機構(OSCE)の監視団の活動を支持したことを「正しい方向への一歩」と評価した。
ロシアと経済的な結び付きが強い欧州連合(EU)内には大規模な制裁をためらう声も根強い。経済制裁が発動されれば、世界経済にも影響する。回避に向けた対話の努力が求められる。
安倍晋三首相は「力を背景とした現状変更は断固として許すことができない」と表明した。北方領土問題の解決に向け、プーチン大統領と信頼を醸成しようと会談を重ねてきた。こうした経緯を生かし、強く働き掛けるべきだ。
<北海道新聞社説>
東西冷戦後の国際秩序の枠組みが重大な岐路に立たされている。
先進7カ国(G7)はオランダ・ハーグで緊急首脳会議を開き、当面ロシアを主要国(G8)メンバーから排除する「ハーグ宣言」を採択した。
ウクライナ南部クリミア半島を力で自国領に編入したロシアが態度を変えない限り、6月にロシア南部ソチで開かれる予定のG8首脳会議は中止になる。 ロシアの行動を食い止めるためにも、G7を軸に対ロシア制裁で国際的な幅広い協調体制を構築しなければならない。
ハーグ宣言は、ウクライナの主権と領土の一体性を強く支持するとともに、ロシアの行動は明らかな国際法違反としてクリミア半島編入を強く非難した。 ロシアがウクライナ東南部に侵攻するなど状況を一層悪化させれば、追加制裁に踏み切る用意があるとも警告している。
軍投入による半島編入は断じて認められず、宣言を実効性のあるものにしなければならない。
だがいくつかの課題も残る。
第一にG7の団結だ。ロシア産天然ガスに依存するドイツをはじめ、欧州連合(EU)内部では対ロ制裁の足並みがそろっていない。ウクライナへの支援とともに一致した行動が求められる。シリア内戦やイラン核問題の解決にロシアの協力を仰いできたオバマ米政権にとっても真価が問われる局面だ。G7結束へ指導力を発揮してもらいたい。
第二は中国の協力だ。米中首脳会談で習近平国家主席は、ウクライナ問題では中立を保つ考えを示した。ロシア批判を控えることは周辺国の警戒を一層呼び起こす。このことを中国に理解させることが肝要だ。何よりもロシアに対し、G8からの離脱は利益にならないことを示さなければならない。旧ソ連崩壊後、G7はロシアを招いてG8首脳会議に発展させ、政治問題などの意識を共有することで世界の安定が図られてきた。
G7と対立したままではロシアの経済成長は望めないことを忘れてはならない。
来月モスクワでのG8外相会合に合わせて予定されていた日ロ外相会談は中止となる公算が大きくなった。
北方領土交渉への影響が懸念されるが、ロシアの行為は看過できない。日本は国際法順守の立場から筋を通すべきだ。