自民党、公明党、民主党、維新の会などが求めてきたことは、監視社会の実現だ。社会のあり方として根本的な問題があります。マイナンバーは国民主権を否定し、国民の上に国家を位置付ける思想から発想された制度です。
このような監視社会、国家権力が暴走する手段を国家が次々と法律により取得すること(合法性を装って)を許してはならないと思います。
<信濃毎日社説>マイナンバー準備作業を中断せよ
年金情報の流出問題はマイナンバー制度の問題点をあらためて照らし出す。来年1月の実施に向け政府が準備を進めている制度である。国民一人一人に12桁の番号を割り振り、税、社会保障、災害対策の各分野で活用する。
マイナンバーの情報が漏れ出したら暮らしは丸裸になってしまう。不安があるままのスタートは避けねばならない。準備作業を中断し、導入の是非を含めて議論をし直すよう政府に求める。
情報漏れを起こした日本年金機構では、データ保護の十分な体制が取られていなかった。職員の意識も甘く、行政連絡を装うメールにだまされて入り込まれている。不正アクセスが分かった後の対応も迅速さを欠いた。
マイナンバー制度は大丈夫なのか、心配になる。似た仕組みを運用している米国と韓国では実際、不正アクセスで情報が盗み出される事件が起きている。
内部の人間が情報を売り渡す可能性も否定しきれない。本来なら制度とシステムの全体を点検し直すときである。
担当の甘利明大臣は会見でシステムの安全性を強調し、実施のスケジュールを見直す考えのないことを表明した。どんなに厳重な対策を施しても裏をかかれ、情報が盗み出されている現実がある。大臣は深刻さが分かっていない。
この国会ではマイナンバーの利用分野を銀行預金と予防接種、メタボリック症候群健診に広げるための法案が審議されている。制度が始まってもいないのに利用を広げるのは拙速すぎる。今国会での成立は見送るべきだ。
政府は戸籍とパスポート、医療保険分野でもマイナンバーを使う考えを最近になって打ち出している。共通番号がカバーする範囲が広がれば広がるほど、漏れたときの被害は大きくなる。
今年1月の世論調査では、マイナンバー制度で最も不安に思うこととして「情報の漏えいやプライバシー侵害」「不正利用による被害」を、それぞれ3人に1人が挙げていた。国民の方がよく分かっている。不安を置き去りにして進めるのは許されない。
制度が動きだし政府がその気になれば、国民一人一人の暮らしぶりが手に取るように分かる。監視社会の実現だ。社会のあり方として根本的な問題をはらむ。マイナンバーは国民主権の社会と調和できる仕組みなのか。基本に立ち返った議論が必要だ。