「安倍政権は憲法学者や国民の異論、反論に耳を傾けようとせず、選挙で白紙委任を受けたと言わんばかりに成立に向けて突き進んでいる。
国民主権、基本的人権の尊重、平和主義―。現行憲法の3原則をあらためて確認したい。
安倍政権による安保政策の転換で、原則が掘り崩されていることに危機感を持つ必要がある。白紙委任していいのか。国民にも厳しい問いが突き付けられている。」
14年12月総選挙が安倍、自公政権に対する白紙委任ではありません。安倍、自公政権が言っているだけであり、選挙民、国民が戦争できる国を承認した結果でないことは明白です。そもそも、自公政権、政党が選挙民に戦争法案を公約として語る、選挙広報に書いたのかーーー一字も書いていません。本当に国民を愚弄した自民党、公明党、安倍です。憲法違反となる戦争法案だと公然と言われて、そうですか、それでも承認、支持しますとは言うはずがありません。
<信濃毎日社説>違憲法案 白紙委任にはさせまい
集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案の矛盾が噴き出している。衆院憲法審査会で学者から「憲法違反」と指摘されて以降、国会や市民の間で、法案の正当性を問う声は高まる一方だ。
もとをただせば、安倍晋三政権が昨年、集団的自衛権行使容認の閣議決定で、過去の見解をつまみ食いし、憲法解釈を都合よく変えたことが今の状況を招いた。
<我田引水の安倍政権>
つぎはぎの理屈のために国民には分かりにくさが増すばかりだ。憲法軽視、我田引水の政権の姿勢が強まっている。
政権が法案を正当とする根拠は1972年の政府見解と、その下敷きとなる59年の砂川事件最高裁判決だ。
安倍首相はおとといの党首討論でもこの二つを引き、「正当性、合法性には完全に確信を持っている」と言い切った。
なぜ、この二つから行使容認が是と言えるのか。合憲とする根拠をあらためて点検しよう。
72年の政府見解は、外国の武力攻撃で国民の権利が根底から覆される急迫、不正の事態を排除するため、やむを得ない場合に必要最小限度の自衛の措置を認めた。自国領土が侵害されて初めて行使できる個別的自衛権である。
その上で、他国への武力攻撃を阻止する集団的自衛権の行使は憲法上許されない―とした。
歴代内閣もこの見解を維持してきた。ところが、安倍政権は日本を取り巻く安保環境が変化し、他国への武力攻撃でも日本が脅かされることが起こり得るとし、自衛の措置として集団的自衛権は行使できると読み替えた。
集団的自衛権は行使できないとの結論を導くための前提を踏襲しながら、正反対の結果を出した。こじつけとしか言いようがない荒っぽさである。
もう一つの砂川判決を反論として引っ張り出すことにも問題が多い。政権幹部は「わが国が存立を全うするために必要な自衛の措置を取り得ることは国家固有の権能の行使として当然」とした判決の一部分だけを強調している。
そもそも駐留米軍の合憲性が争われた事件で、最高裁が外国の軍隊が駐留しても9条の「戦力」には当たらないとした判決だ。集団的自衛権の行使について判断を示したわけではない。
<反論の根拠にならぬ>
しかも、いわく付きの裁判でもある。一審判決は駐留米軍が「戦力」に当たり、違憲とした。米側が判決破棄などを狙い、日本側に内政干渉したことが米公文書などで明らかになっている。裁判の正当性には今も疑義が残る。
また、判決は日米安保条約に関して、高度の政治的問題は司法判断になじまない、とした。「統治行為論」として知られる。9条をめぐるその後の裁判に影響を与えてきた。憲法判断を避けた例は少なくない。
政権側は当初、この判決を行使容認の根拠にしようとした。公明党などが「判決は個別的自衛権を認めたもの」と反発、一度は後ろに引っ込めた経緯がある。
そこで頼ったのが72年見解だ。自衛の措置の範囲が「個別的自衛権に限定されたとは限らない」とも読めるとし、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定に踏み切った。場当たり的で、容認ありきの姿勢を印象付けた。
「ご都合主義」と批判されても安倍政権は意に介しない。
流れを変えたのは、安保法案に対する憲法学者の見解だ。今月上旬の衆院憲法審査会で3人の学者がそろって安保法案は憲法違反と断じた。その後も「憲法9条の下で許される武力行使は個別的自衛権までで、集団的自衛権の行使は典型的な憲法違反だ」などと明快な主張を続けている。
政権は違憲論の封じ込めに必死だ。自民党の高村正彦副総裁は「憲法の番人は最高裁であって憲法学者ではない」と言い放った。しかし、9条関係では憲法判断を避けた例があるように、番人になり得ているとは言い難い。
安保法案が成立すると、政府の裁量で自衛隊の海外での武力行使が広がる恐れがある。その結果、日本が敵視され、リスクを高めることになるかもしれない。軍事の論理が社会で幅を利かせていき、人々の自由や権利が制限される恐れが否定できない。
<3原則を踏みにじる>
にもかかわらず、安倍政権は憲法学者や国民の異論、反論に耳を傾けようとせず、選挙で白紙委任を受けたと言わんばかりに成立に向けて突き進んでいる。
国民主権、基本的人権の尊重、平和主義―。現行憲法の3原則をあらためて確認したい。
安倍政権による安保政策の転換で、原則が掘り崩されていることに危機感を持つ必要がある。白紙委任していいのか。国民にも厳しい問いが突き付けられている。