安全保障関連法案を批判する自民党衆院議員の村上誠一郎元行政改革担当相は10日、共同通信の取材に応じ「集団的自衛権は憲法違反」との考えをあらためて示した。その上で憲法学者の「法案は違憲」との指摘を受け入れない政府、自民党に関し「あまりにも傲慢。自分たちが法律だとでもいうような姿勢は民主主義ではなく、立憲主義も危うくなる」と断じた。
憲法解釈を変更し、集団的自衛権行使を容認した昨年7月の閣議決定の際にも、村上氏は「憲法改正が筋。解釈変更は認められない」と反対を表明していた。
安全保障関連法案を批判する自民党衆院議員の村上誠一郎元行政改革担当相は10日、共同通信の取材に応じ「集団的自衛権は憲法違反」との考えをあらためて示した。その上で憲法学者の「法案は違憲」との指摘を受け入れない政府、自民党に関し「あまりにも傲慢。自分たちが法律だとでもいうような姿勢は民主主義ではなく、立憲主義も危うくなる」と断じた。
憲法解釈を変更し、集団的自衛権行使を容認した昨年7月の閣議決定の際にも、村上氏は「憲法改正が筋。解釈変更は認められない」と反対を表明していた。
戦争法案が提出され議論される中で、着々と戦争する国への準備が進んでいます。しかも、その内容がほとんど国民が知らないところで進行するという深刻さです。これで戦争できる国の法整備が進めば、憲法の9条は完全に空文化され、安倍、自民党、公明党の極右議員、自衛隊幹部による軍情報の独占と、情報操作により、戦争をしかめることも含めて何でもできる。邪魔ものが入らないように、そう彼らが考えています。
<琉球新報社説>文官統制全廃 大切な原則が葬られた
戦後日本の非軍事的な在り方を支えてきた大切な原則が、また一つ葬り去られた。そんな暗澹(あんたん)たる思いを禁じ得ない。
改正防衛省設置法が参院で可決、成立した。防衛大臣が自衛隊に指示・承認を下す際、文官の防衛官僚(背広組)が必ず関与し補佐する仕組みが撤廃された。2009年の防衛参事官制度廃止と併せ、「文官統制」の仕組みがこれで完全になくなる。
軍事面の制限撤廃に前のめりな安倍政権の特質がここでも表れた格好だ。平和国家日本は従来の姿勢を確実に転換した。国民的議論がないままの転換に暗然とする。
保守派は「文官統制」にかねて批判的だった。シビリアンコントロール、すなわち文民統制は、選挙で選ばれた政治家による統制を指し、背広組優位を意味するのではない、と主張してきたのだ。
ではなぜ民主国家は文民統制を強調するのか。よほど強調していないと実現が難しいからである。
そもそも軍事は機密のベールに隠されがちな分野だ。言い換えれば、軍事情報は軍隊がいつも独占的に保有し、民間はほとんど保有できないのが常だ。軍と民で「非対称的」な分野なのだ。
そうした専門知識を独占的に持つ軍人が作戦や武器を要求すれば、その必要性を非軍人の政治家が批判的に検証するのは難しい。そこで、専門知識を持つ文官に補佐してもらい、文民統制を確実にしようというのが「文官統制」の仕組みだったのである。
第1次大戦後、軍縮政策に反発した軍部は政治に対し「統帥権干犯」と主張した。統帥権、すなわち軍の統制権は独り天皇のみにあり、政治の関与はそれを侵すものと非難したのだ。政治が萎縮した結果が関東軍の暴走による満州事変、日中戦争の泥沼化である。
情報を独占する組織は、なかんずく武力を持つ組織は、外部の制御が失われれば暴走しかねない。それが、この日本が筆舌に尽くし難い犠牲を経て獲得した教訓なのである。
今回の法改正は、その教訓をかなぐり捨てた結果としか思えない。そうでないと言うのなら、逆に文民統制を完全に担保する仕組みをつくるべきだ。むしろ「軍(自衛隊)は政府の判断・決定に、常に従わなければならない」という法的規定を、直接的かつ明示的に定めるべきではないか。
憲法に規定された交戦権の放棄、軍備を持たない国が、海外で戦争できる国を目指し、その法的根拠を問われて合憲と主張するとは厚かましいだけでなく、法治国家とは言えない政権、与党であることを自ら証明しています。次々と法的根拠と法律の規定の根拠を質問され二転三転する様は、お粗末すぎて政権の体をなしていません。このような政党、政権が国家の構造を変えるような戦争法案を起案し、提示すること自身が異常な政治です。
会期を延長すればと強行採決できるという話ではありません。そもそも違憲であり、法的安定性、根拠がない法案を強行採決するような安倍、自民党政権、公明党の野蛮で、非民主主義的な政権運営が問われているのです。
毎日新聞:集団的自衛権「違憲論」に政府守勢
集団的自衛権の行使は合憲か違憲かが、安全保障関連法案の国会審議で大きな焦点になっている。中谷元(げん)防衛相は10日の衆院平和安全法制特別委員会で、「これまでの憲法の基本的論理は全く変えていない」などと主張したが、野党側は「法的安定性が揺らいでいる」などと攻勢をかけた。政府・与党は「夏までの成立」に向け、今国会の会期を大幅に延長する検討に入った。
◇野党「根拠脆弱」突く
「違憲ではないと発言している憲法学者をいっぱい挙げてほしい」
民主党の辻元清美氏は、安保関連法案は憲法違反だとして廃案を求める憲法研究者の声明の賛同者が200人以上に上ったことを紹介し、「全く違憲でないという著名な憲法学者もたくさんいる」と発言した菅義偉官房長官に質問した。
菅氏は百地章(ももちあきら)日本大教授ら3人の名前を挙げたが、辻元氏は「合憲だと言っている憲法学者もこんなにいると示せないのであれば、法案を撤回した方がいい」と批判。菅氏は「数ではない。憲法の番人は最高裁で、その見解に基づき法案を提出した」と述べ、合憲派の憲法学者は少数だと認めざるを得なかった。
菅氏の言う「最高裁の見解」とは、憲法9条で認められる自衛権に関し「自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうる」とした1959年の砂川事件判決を指す。
砂川判決の内容を踏まえて政府が出したのが、個別的自衛権の行使のみを容認した「72年政府見解」だ。72年見解は(1)自衛の措置は禁じられていない(2)自衛の措置はやむを得ない必要最小限度の範囲にとどまる(3)集団的自衛権の行使は許されない−−が柱。安倍政権は昨年7月の閣議決定で、(3)の結論を覆して、安全保障環境の変化から集団的自衛権の限定的な行使が許されるケースがあると結論づけた。
政府が9日に出した見解も「従来の憲法解釈との論理的整合性、法的安定性は保たれている」としたが、砂川判決が認めた「自衛の措置」に、集団的自衛権は含まれないとの解釈が主流だ。当時は集団的自衛権の行使は想定されていなかったためで、与党(自民党)内でも砂川判決を行使容認の根拠にするのには無理があるとの声は根強くある。
野党はこうした政府の憲法解釈の「脆弱(ぜいじゃく)さ」を突いており、辻元氏は「最高裁が今回の法制に違憲判決を出したらどうするのか」とたたみかけた。
中谷氏は「違憲、無効となるとは考えていない」と主張したが、繰り返し違憲判決の場合の対応を問われると、「法治国家なので最高裁の判断が出た時は適切に従っていきたい」と答弁を後退させた。
共産党の宮本徹氏は集団的自衛権の行使が可能になる「存立危機事態」について「世界の中で他国に対する武力攻撃で、国の存立が脅かされるようなことがどこかの国であったことがあるのか」と具体例の提示を迫った。だが、岸田文雄外相は「わが国以外の事例全てを確認するものがない」としか答弁できず、宮本氏は「憲法解釈を変更する根拠がない」と批判した。
安倍政権は憲法9条の早期改正は困難とみて、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に踏み切った。憲法解釈の変更を急いだ結果、政府の「矛盾が噴出してきている」(辻元氏)と野党は批判する。
「難しい国会になった。原因は(衆院憲法審査会の)人選ミスだ」。政府筋からはため息が漏れた。
◇会期、大幅延長は必至
政府・与党は今国会で確実に安保関連法案を成立させるために、24日が会期末となる今国会の延長幅の本格的な検討に入った。8月下旬までの延長が有力視されているが、参院で十分な審議時間を確保するため9月下旬まで延長する案も浮上している。
「今週、来週の運びを見て判断しなければなりません」。自民党の谷垣禎一幹事長は首相官邸を訪れ、安倍晋三首相に国会審議の状況を報告。特別委の審議を見極めたうえで、延長幅を決めるとの考えで一致した。
これに先立ち、谷垣氏や公明党の井上義久幹事長ら両党幹部は東京都内のホテルで会談し、延長幅について協議。自民党の佐藤勉国対委員長は会談後、記者団に「今後どうするかは幹事長がお決めいただく」と述べ、延長幅は谷垣氏に一任する考えを示した。
集団的自衛権の行使を含めた安保関連法案の成立は首相の最優先課題だけに、政府・与党は今国会中に確実に成立させる構えだ。ただ、関連法案への国民の理解が進んでいるとは言えず、強引に国会審議を進めれば内閣支持率が低下するのは必至だ。丁寧に審議をしている印象を与えながらも、早期の法案成立を目指すという難しい対応を強いられる。菅義偉官房長官は10日の記者会見で「今の国会でできる限り粘り強い審議をして成立させるというのが政府の基本方針だ」と強調した。
特別委での10日までの審議時間は約35時間。当初は24日の会期末までに衆院を通過させる方針だったが、衆院憲法審査会で憲法学者3人が関連法案は「違憲」と表明したことなどを受けすでに断念。政府・与党が採決の目安とする80時間の審議を経るのは7月上旬になる見通しだ。
衆院より少ない審議時間で参院での採決を目指す場合は、8月上旬の成立は不可能ではない。だが、参院でも1カ月半程度の審議が必要との声が与野党から上がっている。8月下旬まで延長する計算になるが、8月は盆休みがあることや、不測の事態に備え、9月下旬まで会期を延長する案も自民党国対内に浮上した。
今国会では衆院を通過させ継続審議にしたうえで、法案成立は秋の臨時国会に先送りすべきだとの意見も与党内にはある。ただ、「先延ばししている間に景気が悪くなったらどうしようもなくなる」(閣僚経験者)などと否定的な声が大勢だ。
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◇安全保障関連法案をめぐる政治日程
5月26日 衆院本会議で審議入り
6月24日 通常国会会期末
7月上旬? 衆院通過
8月上旬 <1カ月強延長した場合の会期末>
8月15日 終戦の日
安倍晋三首相が戦後70年談話を発表?
9月下旬 <大幅延長した場合の会期末>
9月 自民党総裁選