小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

女子フィギアのテレビ放送はおかしい。スポーツは生が原則だ。

2009-12-28 17:39:26 | Weblog
 浅田真央が全日本選手権で優勝し、オリンピックの出場をやっと決めた。真央ちゃんフアンの私としても素直に喜びたいが、26,27の両日フジテレビが放送したのは録画だった。なぜ生放送しないのか極めて疑問が残る。
 日本で行われる2大女子フィギア競技は、グランプリ出場権がかかったNHK杯とオリンピック出場権がかかった全日本選手権である。女子フィギアの人気が急増したのは浅田真央が史上最年少でNHK杯で優勝してグランプリの出場権を獲得し、グランプリも史上最年少で優勝して以来である。それ以降浅田真央が出場する競技は、海外の競技も含めすべてのテレビ局がゴールデンタイムに放送するようになった。
 実はNHK杯もかつては土曜日のショートプログラム、日曜日のフリーの両競技を午後7時30分から録画中継していた。浅田真央が最年少優勝を飾ったときもそうだった。まず初日のショートプログラムの放送直前のニュースで、NHKのアナウンサーが浅田真央がトップで通過したことを報道してしまった。結果を放送の前に報道するスポーツ番組は、前書きで犯人と犯行の手口を明らかにした推理小説のようなもので、一体そんな推理小説をだれが読むか。私はNHKの視聴者センターに猛烈に抗議した。
 翌日曜日もラテ欄(業界用語でラジオ・テレビ欄のこと。昔はラジオ番組とテレビ番組が1ページに掲載されていたため、この業界用語が生まれ、現在も定着している)にフリー競技の放送が7時30分から予定されていたので、視聴者センターに電話をして「今日の放送も録画中継だったらニュースを録画して後で見ることにするから生か録画か教えてほしい」と聞いたところ「しばらくお待ちください」と少し待たされた後「今日は生です」と答えたので、私は安心して7時のニュースを見た。ところが、ニュースの冒頭でアナウンサーが「浅田真央が最年少でNHK杯に優勝しました」と報道した。
 私は烈火のごとく怒り、再度NHKの視聴者センターに電話をして、「お前たちは嘘をついてまで視聴率を稼ぎたいのか」と抗議した。電話に出た人は「しばらくお待ちください」と言ったあと「責任者に代わります」と、電話を回した。改めて電話口に出た人は「責任者の岡田です。お客様から昨日抗議の電話をいただいたこと、今日の昼間にお問い合わせがあり私どもの職員が今日の放送は生ですとお答えしたことを確認しました。まことに申し訳ありませんでした。しかもその職員が独断で生ですとお答えしたのでなく、番組制作担当者に確認を取ってお答えしたことまでわかりました。今後は2度とそういったことがないよう原因を徹底的に調査して改善を図っていきます」と誠意に満ちたご返事をいただいた。そこで私は「スポーツは生が原則です。オリンピックやワールドカップ、ゴルフの4大メジャー、NHKのBSが早朝に放送するアメリカのプロ野球やゴルフ番組もすべて生です。昼間働いている人は見ることができない大相撲や高校野球も生です。しかもフィギアのNHK杯は日本で行われている競技で、生放送が困難な時間帯に行われているはずがありません。しかも録画放送の直前のニュースの冒頭で結果を報道してしまうということは犯人と犯行の手口をあらかじめ前書きで公表した推理小説を読まされるようなもので、岡田さんだったらそんな推理小説を読みますか?」と主張した。岡田氏は「まことにごもっともなご意見で、今後NHK杯の放送の在り方について検討いたします」と約束してくれた。
 NHK杯の競技が昼間ではなく(男子は夕方)NHKの放送時間帯に行われるようになったのはその翌年からである。この女子フィギアを全日本スケート連盟がNHKに譲歩したのは主催者がNHKだからだとは思う。あるいはNHKがスケート連盟に助成金を上乗せしたのかもしれない。フジテレビの場合はスケート連盟に対する力関係がNHKほどではないのは十分理解できる。が、スポーツ放送は生、というのは絶対的な大原則である。
 NHKが録画中継していた時代、ネットをしながらフジテレビの全日本選手権を見ていた。するとネットで浅田真央がショートプログラムをトップで通過というニュースが流れた。私はすっかり生だと思っていたのでフジテレビの視聴者センターに電話をして番組担当者につないでもらった。私が番組担当者に聞いたのは「今放送中の女子フィギアは何時に行われたんですか」という質問だった。女性の担当者は「この放送は生ですよ」と、イケシャーシャーと答えた。そこで私は「ネットで浅田真央がトップで通過というニュースが流れているんだけど」と言った途端、「少々お待ちください」と言って2分ほど待たされた挙句別の男性の担当者(たぶん番組の責任者だと思う。ちなみにテレビ局の視聴者センターで電話に出た人が名前を名乗って視聴者に対応するのはNHKだけである。新聞の場合は私は読売と朝日しか知らないが責任者を除いて絶対に名前を名乗らない)が出て「申し訳ありません。彼女はちょっと混乱していたようで午後1時30分から競技は行われました」と録画中継であることを認めた。いまではフジテレビの視聴者センターは録画であることを隠そうとはしない。「それならラテ欄に録画と表示すべきだ」と主張しているが、いまだ実現できていない。なお女子フィギア以外の録画中継のスポーツ番組はすべて「録画」と表示するのが原則になっている。
 私はフジテレビに生中継させるためには方法は二つしかないと思っているが、この方法もなぜか不可能なようだ。その二つの方法を述べる。
 一つは読売や朝日などの新聞がラテ欄に「録画」と表示してしまうことだ。そのことを両紙の読者窓口に申し入れたが「担当者に伝えます」というだけで、なぜか実現できていない。
 もう一つはフジテレビを除くテレビ局各局が夕方のニュースで結果を報道してしまうことだ。特にNHKは自らスポーツ放送の姿勢を改めた経緯があるだけに、またニュース番組では午後7時からのニュースが視聴率も最も高いだけに、そのニュースの中で結果を報道してしまったら、間違いなくフジテレビは生放送に切り替えざるを得なくなる。
 3年ほど前だったと思うが、グランプリか全日本選手権だったか女子フィギアのビッグ競技が行われた日の7時のNHKニュースでサッカーかラクビーの天皇杯の準決勝の試合結果を報道しながら女子フィギアの結果を報道しなかったので視聴者センターに「おかしいのではないか」とクレームをつけたことがある。その時私の電話に出た男性職員は「私はサッカー(あるいはラクビー)の天皇杯準決勝のほうが大きいニュースだと思いますよ」と答えたので「責任者に代わってくれ」と申し入れ、再び岡田氏が出た。岡田氏は「本当に自分の意見を言ったのですか」とびっくりしたので、私は「自分の意見を言ってもいいが、天皇杯の準決勝(ちなみに当日NHKは生中継した)のほうが女子フィギアのビッグイベントの決勝よりスポーツニュースとして重要だという認識を持っていることのほうが問題だ。NHKは女子フィギアのNHK杯をゴールデンタイムに生放送している。そのNHK杯より格上のビッグ競技より天皇杯の準決勝のほうがビッグニュースだという認識はNHKが中継放送したからという理由から生じている。こういう認識の職員がいるとNHKはますます国民からの距離が遠くなる。自分の意見を言ってはいけないというのがマスコミの共通した姿勢だが、それよりNHKが放送したスポーツがすべてのスポーツよりビッグニュースだという感覚のほうが大問題だ」と述べ、岡田氏は「重大なご指摘です。視聴者目線でものを考えるよう視聴者センターの職員の再教育をします」と言ってくれた。それはそれで問題は解決したのだが、なぜ女子フィギアの結果をニュースで流さないのかという疑問をぶつけると、とたんに岡田氏の口調があいまいになった。
 いちおう岡田氏の弁解を紹介しておくと、他局が放映権を持っているスポーツについてはその局の放送が終わるまで報道できないということだった。「それはおかしい」と私は反論した。「他局が放映権を持ち、しかも中継中のプロ野球は全試合の途中経過を報道しているではないか。もちろん映像は放映権の侵害になるから流せないし、現にプロ野球の途中経過も映像は流していない。だから女子フィギアの場合も映像抜きで結果だけ報道すべきだ。そうすれば女子フィギアのビッグ競技はすべて生放送になる。それが視聴者目線に立ったスポーツ報道の在り方ではないか」と突っ込んだ。岡田氏も「そう言われれば、確かに女子フィギアについての報道はおかしいと思いますが、スケート連盟との間に何らかの約束事があるんでしょうかね。私もそこまではわかりません」といったやり取りが岡田氏と話し合った最後である。
 一体なぜ新聞社はラテ欄に「録画」と表示しないのか、またNHKをはじめテレビ各局はニュースの時間帯には結果が分かっている女子フィギアの結果を報道しないのか。いつまで視聴者を愚弄した放送状態が続くのか。もういい加減にしてほしいと私は思う。