小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

京大・山中教授のips細胞の研究は日本を救えるか。

2012-10-08 22:26:24 | Weblog
 うれしい、の一言に尽きる。
 ネット上には喜びの声が次々と書き込まれている。
 書き込みのキーワードは言うまでもなく「山中伸弥」。日本時間8日6時半過ぎ民放のニュース番組でアナウンサーが「たった今入ってきたニュースです」と上ずった声で、山中伸弥・京大教授のノーベル医学・生理学賞受賞が決まったことを伝えた。
 その瞬間から喜びとお祝いの声がネットに殺到した。
 昨年から山中教授のノーベル賞受賞はすでに決定視していた。実際、昨年のノーベル賞選考段階で山中教授は本命視されていた。だが、残念ながら、昨年は最有力候補とされながら受賞を逃した。私も含めて日本国民の落胆は大きかった。その思いがやっとかなった。
 ノーベル賞を受賞した日本人は米国籍の南部陽一郎氏も含めると山中教授が19人目になる。だが、山中教授の研究業績は、単なる1/19ではない。
 科学分野(医学・生理学、物理学、化学)のノーベル賞受賞者は毎年選ばれる(該当者なし、という年もまれにだがある)。なかにはキューリー夫人のように2度もノーベル賞を受賞した偉人もいる。
 ノーベル賞の受賞者は、日本人であろうと外国人であろうと、受賞に値する研究成果を出した人たちである。そういう人たちにケチをつけるつもりは毛頭ない。だが、過去のノーベル受賞の対象になった研究成果に比べても、山中教授の研究成果は突出した数少ない研究の一つと言っても差し支えないと思う。
 1947年、米ベル研究所(日本でいえばNTT研究所のようなもの)のウィリアム・ショックレイをリーダーとする研究グループがトランジスタを発明した。そのトランジスタはのちに「3本足の魔術師」と絶賛されるに至るが、いったい何に使えるのか、肝心の発明者たちにすらわからなかった。
 それを世界で初めて実用化したのが東京通信工業(現ソニー)の創始者の一人、井深大氏だった。彼が実用化した製品がトランジスタラジオであった。その後単体の半導体素子だったトランジスタを集積したICが発明され、第2の産業革命と言われるエレクトロニクス時代が始まった。もちろんショックレイらトランジスタの発明に大きく貢献した3人はノーベル物理学賞を受賞した。
 山中教授の研究は、トランジスタを発明して第2の産業革命への第一歩を踏み出したショックレイらに匹敵すると思う。医学的知識が皆無の私にはips細胞なるものがどういう細胞なのか、ウィキペディアの解説を読んでも専門的すぎる説明なのでさっぱりわからない。ただ回復不可能な臓器を移植によらず患者の体の一部からとった細胞に何らかの細工を施すことによって正常な臓器を作り出す可能性があるようだということ、またその根拠もさっぱりわからないがこれまでは創れなかった夢の新薬を創れる期待があることぐらいしかわからない。NHKのニュースで山中教授自身がアナウンサーのインタビューに答えて、「実用化は10年、20年先でしょう」と述べたくらいだから、ショックレーらがトランジスタを発明した時と状況も似ている。
 ただ夢が実現した時は、ショックレーらが切り開いたエレクトロニクス革命と同様、世界の医薬界に革命をもたらすことだけは疑いを容れない。山中教授の研究成果はそれほど大きな意味を持っている。というより、山中教授を中心に日本の医薬界(公的研究機関や大学医学部、医療界、製薬会社の研究所など)がいくつかの横断的研究チームを作って、ips細胞の実用化で日本が世界をリードできるよう、厚労省は直ちにテーマごとの横断的研究グループを作るための努力を、厚労省の総力を挙げて取り組んでほしい。
 幸いなことに、エレクトロニクス産業と違って工場や技術を人件費が安い国に移転して、肝心の日本メーカーが国際競争力を失うような分野ではない。しかも後発グループに甘んじていた日本の医薬界が一気に世界の最先端に踊り出れる最後のチャンスだ。この分野の研究に必要な資金をつくるための特別目的税をつくってもいいとすら私は思っている。

なぜ読売新聞論説委員は政府の「女性宮家」創設案に賛成したのか!?

2012-10-08 08:54:21 | Weblog
 政府はなぜ今頃になって「女性宮家」創設の検討を始めたのか。
 劣勢が予測されている次期総選挙での、起死回生的手段として国民から支持を得るための一石を投じたいと考えたのか。
 いちおう政府は今年2月から12人の有識者から6回にわたって有識者からヒアリングした結果を踏まえ、論点整理を公表した。
 政府によれば、論点整理の具体的内容とはこうだ。
 現在の未婚の女性皇族(内親王という)3人が結婚後も皇族の身分を維持し(ただし一代限り)、皇室活動の一翼を担えるよう「女性宮家」を創設するというのだ(もちろんまだ構想段階)。その場合、内親王という皇族の称号を持ち続ける案も検討されたようだが、現時点では実施困難という結論になり国家公務員の身分で皇室活動を支援できるようにする案も併せて検討しようというのだ。
 意味がさっぱり分からないのは「国家公務員の身分で皇室活動を支援する」という内容だ。国家公務員は日本の行政機関や特定独立行政法人に勤務する人である。行政機関は政府の政策の立案や実施に直接関与する。その行政機関の職員(そういう立場の人を国家公務員という)はいわば「政治職」である。したがって「皇室活動を支援する国家公務員」は基本的には宮内庁の職員ということになる。いったい宮内庁の職員として、どういう役職に就き、どういう「皇室活動の支援」(皇室活動そのものではない)をするというのか。そこを明確にしてもらわないと議論のしようがないではないか。「女性宮家」の創設は困難であることを見越して、こういう意味不明な案も作ったのだろう。従ってこのブログでは「国家公務員の身分で……」案については無視し、「女性宮家」の創設に絞って問題点を指摘する。
 
 現在の皇室典範によれば、女性皇族が皇族以外の男性と結婚した場合は皇族の身分から離れると定められている。
 実は2000年代初頭に皇室典範を見直すべきではないか、という議論が国民的規模で巻き起こったことがある。そのきっかけは2004年に当時の小泉純一郎総理が私的諮問機関の「皇室典範に関する有識者会議」を設置し、皇室典範改正の検討を始めたことによる。
 皇室典範は第1条で皇位継承に関して「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と定めている。ところが小泉総理が私的諮問機関を設置した当時は、事実上皇位継承者は皇太子成人親王(皇位継承資格第1位)と皇太子の実弟・秋篠宮文人親王(第2位)の二人だけだった(ほかにも3位以下5位までの3人の皇位継承資格者がいたが、年齢等から考えて事実上皇位を継承する可能性はほぼゼロと考えられていた)。当然皇太子に男性の第2子が生まれることを国民の大多数は期待していたが、雅子様の体調問題もあって、その期待はなかなかかなえられず、皇位継承資格第2位の秋篠宮様にも男子のお子様がいなかったため、皇室典範の改正が喫緊の課題として浮上したのである。
 つまり皇太子にも秋篠宮様にも男子のお子様が生まれなかった場合、「日本国と日本国民統合の象徴である天皇」(憲法による規定)の継承者がいなくなってしまう可能性が高まったというのがというのが国民大多数の危機認識となったのである。実際、その可能性が現実化した場合、そういう事態にも対処できる皇室典範に改正すべきではないかということが、小泉総理の私的諮問機関設置の最大の理由であった。
 この時国民的規模で議論されたことは、現政府が「女性宮家の創設を検討すべきだ」とするスタンスを明らかにしたこととは全く意味が違う。そのことを、まず読者は念頭に置いてこのブログを読んでほしい。
 小泉内閣時代に議論されたのは、女性天皇を認めるか否か、さらに女系天皇も認めるべきか否か、の2点だった。皇族の範囲を広げるといった視点は全くなかった。問題にしたのは皇室典範で定められている皇位継承者の3つの資格条件を部分的に改正し、資格者の範囲を広げることによって当時の危機的状況を打開することが目的だった。だから議論されたのは女性天皇を容認するか、また女系天皇を皇統史上初めて容認すべきか、という2点に絞った議論を行ったのである。
 ここでもう一度皇室典範に戻るが、「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」という短い文には3つの条件が定められている。
 まず「皇統」(現在はそういう表現は事実上使われていないので、以下「皇族」と記す)という限定である。内親王(男性皇族である親王のお子様で女性の方。たとえば皇太子の第1子・愛子様、秋篠宮様の第1子・眞子様、第2子・恵子様など)は未婚の状態の間は皇族に属するが、皇族以外の方と結婚されると皇族から離れ民間人になる(自ら皇族を離脱して民間人になられた元内親王もおられる)。
 つまり男子皇族の「親王」は一生皇族の身分が保証されるが、女性皇族の「内親王」は民間人と結婚されると皇族から離脱するのである。その「内親王」を、民間人との結婚後も宮家(1代限りということだが)にする(つまり皇族の身分を維持する)というのが政府が検討している「女性宮家」案なのである。
 そうなると、たとえ女性宮家は1代限りであっても、皇族には間違いないのだから、その元内親王に男子のお子様が生まれたら皇位継承資格が生じるのか否かを明確にすることが「女性宮家」問題を論じる場合の大前提になる。それを明確にしないまま「女性宮家」の創設などあり得ないはずだ。「女性宮家」創設についての最重要視点を欠いたアボな読売新聞論説委員は、10月6日の社説『女性宮家案 皇族活動の安定へ議論深めよ』の冒頭で「皇室活動の安定性を確保するために、方向性を打ち出したことは一定の前進である」と政府案を支持した。
 これは皇室外交に日本の将来をどこまで託すべきかに関わる問題でもあり、皇族の数を増やせば皇室外交力が大きくなると期待しているようにも取れる。野田政権と読売新聞はいったい何を考えているのかと言わねばならない。この問題は後でまた触れる。
 二つめに「男系」という条件である。すでに述べたように男性の皇族は終身「親王」という身分を持つ皇族である。ただし親王の身分は天皇からみて直系で2親等までの男性とされているが、この身分はやはり終身である。
 一方「内親王」も天皇からみて直系で2親等以内の未婚の女性皇族の身分である。が、天皇のお子様の内親王であっても、民間人と結婚した時点で皇籍を失うため、そのお子様は天皇からみて2親等ではあるが、内親王にはなれない。したがって現在の内親王は皇太子の娘の敬宮愛子内親王、秋篠宮の娘の眞子内親王、恵子内親王の3人だけということになる。彼女たちは今上天皇からみて孫(つまり2親等)にあたる。
 つまり「男系」というのはそれなりの意味を持つ皇位継承資格を持つ皇族とされているのであって(だがすでに述べたように親王の男性のお子様がすべて皇位継承資格を持っているわけではない。たとえばラクビーの普及に尽力された秩父宮(以下名は省略)、競馬の「高松宮記念」で知られる高松宮、「髭の殿下」として国民から親しまれた三笠宮の3人はいずれも大正天皇の男子であり、1親等の皇族だった(この3人の長兄が昭和天皇)。またこの3人の中で男子が生まれたのは三笠宮だけで、三笠宮の3人の男子はいずれも大正天皇からみて孫(2親等)になるため「親王」の称号を持つ皇族である。しかし大正天皇からみた場合は2親等のため皇族の身分だが(親王は終身皇族)、昭和天皇からみればいずれも「甥」に当たり、三笠宮家の皇籍はこの3人で終わる。また昭和天皇には二人の男子が生まれ、長男が今上天皇、弟の常陸宮には男子はいないため、皇籍は常陸宮でなくなる。さらに今上天皇の男子は皇太子と秋篠宮(いずれも1親等)で、皇太子には男子がなく女子が一人(今上天皇からみれば2親等)、秋篠宮には女子が二人、男子が一人(やはり2親等)いる。ということは皇室典範が定めている皇位継承資格の順位は1位が皇太子、2位が秋篠宮、3位が秋篠宮の男子(悠仁親王)の事実上3人だけである。
 さて内親王が民間人と結婚されると皇族の身分から離れて一般人になるのも皇族の地位や身分、権利・義務・責任が極めて限定的に決められているからである。現在の皇族の方たちでは皇室活動が十分ではないと政府は考えているようだが、それならそれで「今後、皇室活動はどうあるべきか、そのためには皇族の範囲をどう限定すべきか」の説得力ある説明もなく。単なる数合わせのような「女性宮家」の創設について、今なぜ国民的議論を行う必要があるのか、私にはさっぱり理解できない。ま、読売新聞論説委員の方たちはご理解されているようだが……。
 ただし皇位継承資格の最後の条件である「男子」については中断状態になっている議論を再開する必要はあると私は思っている。2004年に小泉総理が設置した私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」を中心に、広く象徴天皇制の在り方について議論を始めようとしたときは、現在と違ってそれなりの必要性があったからだ。それは何度も繰り返すことになるが、皇室典範は皇位継承について「皇位は。皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と定めている。ところが1965年の秋篠宮文仁親王誕生以来約40年もの長きにわたって皇室に皇位継承資格を有する男子(すなわち親王)が生まれなかったため、将来皇位継承資格者がいなくなってしまう恐れが現実性を帯びてきた。その時に初めて「男系の男子」という皇位継承資格条件の是非についての国民的大議論が始まったのである。
 この議論の中で問題が生じたのは国民がこの議論の意味をよくわからず(その点についてはマスコミの責任は大きい。女性天皇を容認するかと、女系天皇を容認するかは全然別問題だという説明をきちんとしなかったからである。女性天皇を容認するということは、愛子様に皇位継承資格を与えることを意味するが、愛子様が即位された場合、次の天皇に男女を問わず愛子天皇のお子様が皇位継承者になると女系天皇が皇室史上初めて生まれることになる。そのため男系・女系の意味をよく理解しているごく少数の方たちから「愛子天皇の後継天皇の継承資格をどうするのか」といった疑問が出されたのだが、その疑問の意味を大半のマスコミが理解できなかったようだ)、その結果「海外には女性の国王もいるではないか。日本にだって推古天皇や持統天皇など8人10代もの女性天皇が存在したではないか、という女性天皇容認論が多数を占めたのである。
 ここで明確にしておくが、「女系天皇はかつてひとりたりとも存在したことはなかった」という歴史的事実である。が、「女性天皇は存在した」というのも歴史的事実である。つまり「女系天皇」と「女性天皇」は全く異なる意味を持ったカテゴリーなのだ。それが議論を混乱させた最大の要因であった。
 ところで小泉総理の私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」での議論について『ウィキペディア』ではこう解説している。
 
 (有識者会議での)会合では、皇位継承の原理の案として①第1子優先、②兄弟姉妹間で男子優先、③男系男子優先、④男子優先、の4つが提示された。①の場合、男女にかかわらず天皇直系の長子が皇位を告ぐ。②の場合、例えば愛子内親王に弟が生まれた場合、その子が皇位を告ぐ。生まれなかった場合は愛子内親王が皇位を告ぐ。③の場合、父親が後続である男子が優先される。④の場合、男系女系にかかわらず、男子が優先される。(中略)(2005年)10月25日、有識者会議は全会一致で皇位継承資格を皇族女子と「女系皇族」へ拡大することを決めた。(中略)ただこの時点では、皇位継承順位は男子優先か長子優先かについて意見がまとまっていない。(中略)有識者会議の結論に対して、言論界の一部からは強い反発があり、特に女系天皇も容認しようとする同会議の姿勢に対しては「なし崩し的である」(※ 意味不明)との強い疑問の声も上がった。有識者会議には単なる男女平等論調の観点から意見を述べた委員が複数いることも判明し、また結論を急ぎすぎていると同指針に対する批判も相次いだ。女系による皇位継承の容認は、日本の建国以来、神武天皇の男系の血統を連綿と継承してきたとされている「万世一系」と称される皇統の断絶を意味するとし、有識者会議が否定した旧皇族の復籍を、特別法の制定などの方法によって実現させ、男系の皇位継承を維持するべきとする意見が表明されている。(中略)この数年間、皇位継承問題についての世論調査は全国紙や通信社、テレビ局によるものだけでも計10回以上実施されている。その結果によると、ほぼ常に2/3以上の国民が女性天皇や女系天皇に賛成し、女性天皇への賛成は75%以上にもなる。女性・女系天皇を容認する場合に男子と長子といずれを優先すべきかについては、前述のように意見が分かれている。ただし、国民が女性天皇と女系天皇との違いをどれだけ理解しているかについては疑問が残る。(中略)
前述したように、女性天皇や女系天皇の是非についての世論調査は何度も行われているが、両者の相違についての理解度についての統計調査はほとんど実施されていない。

 ウィキペディアの解説の引用も含め、私のブログを読んでくださっている方は、これで女性天皇と女系天皇の違いについては十分ご理解いただけたと思う。
 秋篠宮に男系男子の悠仁親王がお生まれになったことによって、とりあえず皇位継承問題は回避できたが、今後も男系男子の皇位継承が保証されたというわけではない。そういう意味では、国民の総意に基づいた皇室典範の見直しや皇室活動の内容について有識者からヒアリングを行い、その論点を整理して国民の意見を問うことは決して意味のないことではない。が、国民の議論も経ず、論点整理がなぜいきなり「女性宮家」の創設(たとえ一代限りとしても)に直結するのか、また「女性宮家」の創設が困難な場合は国家公務員の身分で皇室活動を行うという代案(両論併記といってもいい)を提案したのか、私にはまったく理解できない。
 でも理解できる方はいらっしゃるようなので、その方の主張にとりあえず耳を傾けてみよう。言うまでもなくバカ集団の読売新聞論説委員が書いた社説である。読売新聞論説委員(以下論者と記す)はこう主張する。
「(女性宮家の創設について)妥当な内容だろう。財政支出を抑制する観点から、結婚後も皇室にとどまることができる女性皇族を天皇の子・孫である内親王に限定した点も理解できる」
 この文脈はめちゃくちゃである。まず「財政支出の抑制」という表現に私は引っかかった。女性宮家の創設がなぜ財政支出の抑制になるのか? 内親王が民間人と結婚して皇籍を外れると(その時には相当額の生活支援金が与えられるが)、普通の民間人になるのだから以降財政負担はなくなるはずだ。一代限りであっても女性宮家を創設して内親王を終身皇族にとどめると、その間財政負担は増大する。どういう算盤を使用すれば、皇族にとどめつつ財政負担を抑制できるのか教えてほしい。ひょっとすると一般家庭にとっても家計を抑制できるアイディアがおありなのかもしれないので、ぜひお聞きしたい。
 さらに論者の主張に耳を傾けよう。
「論点整理は、『女性皇族が、婚姻を機に皇籍を離脱することで、皇族数が減少し、皇室のご活動を維持することが困難になる事態』に強い危機感を示している。
 未婚の女性皇族8人のうち秋篠宮ご夫妻の長女、眞子さまをはじめ6人がすでに成人された。
 女性皇族の結婚後の身分をめぐる議論が長期化すれば、眞子さまらのご結婚にも深刻な影響を及ぼしかねない」
 まず論点整理が主張する「皇族数が減少し、皇室のご活動を維持することが困難になる事態」は現状では確かに避けられない。そういう場合、選択肢は皇族数を減らさないために女性宮家を創設するというだけではないはずだ。いったん女性宮家を創設してしまうと、将来内親王が増えたから元に戻しましょうと制度を簡単に変えられるわけがない。そうなると皇族が増えた分だけ皇室が行う公務を増やそう、となることは目に見えている(ピーターの法則)。
 IT技術の急速な進歩によって公務員の仕事の能率は急速に向上した。たとえば市役所や区役所で住民票や印鑑証明などを発行してもらう場合、銀行のATM機のような設備を導入することによって人手を要さず短時間で発行できるようになった。民間企業ならその分社員を減らす工夫をするが、官公庁や役所は違う。その実態は、A官庁は所属する公務員の仕事を確保するため不必要な業務を無理やり作り出し、B官庁、C官庁と縄張り争いを始める。皇族を増やすということは、官公庁と同じく皇族の公務を増やす結果になりかねない。皇族の数が減ったら皇室の公務を減らし、宮内庁の幹部や政府高官が肩代わりすることをなぜ考えないのか。
 皇室の公務は大きく分けて、国内での大きな行事への出席と、いわゆる皇室外交の二つである。二つ
のうちあまり減らすべきではないのは皇室外交のほうだ。国内行事についてははっきり言ってどうにでもなる。
 通常独立国の外交力を左右する要因は、軍事力と経済力の両輪である。中国が急速に国際的発言力を強化できたのは、この両輪で世界を脅かすほどの存在になったためである。
 現在の日本はどうかというと、日本の軍事力は他国にとって脅威の対象ではまったくない。相当の軍事力を持ってはいるが、憲法の制約もあり、軍事力を外交の切り札に使うことができないからだ。誤解を避けるために言っておくが、私は事実を述べているだけで、日本が保有する軍事力を外交手段に使えるよう憲法を改正した方がいいなどとは毛頭考えていない。ただ日本の防衛力を高め、国土と国民の安全をより確実なものにするため集団自衛権については国民的議論を行うべきだとは考えている。
 さらにもう一つの外交力である経済力については、残念ながらひところの威力を失っている。単に数字の上でGNPが中国に抜かれたというだけでなく、国内の産業空洞化(実質的に日本が世界に誇ってきた最先端技術の海外流出を意味する)に歯止めがかからず、最先端技術製品の分野すら日本メーカーのブランド力は低下の一途をたどっている。
 そうした状況の中で皇室外交が果たすべき使命は今まで以上に大きくなりつつあることは疑いを容れない事実である。が、皇室外交は皇族の数を増やせば解決できるような話ではない。いま皇室外交の要は皇太子が事実上お努めされている。秋篠宮さまも力の尽くせる限りご努力いただいている。日本人の一人として感謝の念に堪えない。
 外交はいかなるケースも極めて微妙な問題を含んでいる。そういう教育を子供のころから受けてきたのは親王(男性皇族)だけである。そういう教育を受けていない内親王(女性皇族)に、付け焼刃で教育したところで親王に匹敵する外交手腕を身に付けれるようになるかといえば、それは不可能と言うしかない。
 確かに国際的にみて女性の地位は高まってきている。そのことを考えると、将来的に女性皇族の教育方針も考えるべき時期に来ているのではないかとは私も思う。が、それは今後の親王、内親王の教育の在り方について有識者会議で検討し提案してもらいたいとは思う。しかし、今3人の女性宮家を創設することと直結するような話ではない。少なくとも「有識者」とされるジジイやババアの感覚で考えるような問題でもない。もっと長い目と複眼的視点で将来の皇室の在り方、皇室に何を期待すべきか、皇室の公務はどこまで求めるべきかなど、若い人の感覚で考え提案してもらいたいと思う。
 さらに論者は「論点整理」についてこう紹介している。
「女性皇族が結婚後も皇族にとどまって宮家を創設した場合も問題はある。その夫や子供に対し、皇族の身分を付与すべきかどうかといった点だ。これについても両論併記にとどめている」
 内親王が民間人と結婚後も皇族としての身分を維持するという規定だけなら、皇室典範の部分的改定ですむが、その夫や子となると皇族の原則をそっくり変えなければならなくなる。まず男子・女子にかかわらず、皇族は在位中の天皇の2親等までという大原則がある。この原則により、大正天皇の1親等は昭和天皇を含め4人の男子皇族(親王)がおり、そのうち昭和天皇を除いて2親等の男子皇族がいたのは三笠宮さまの3人の男子(すべて親王)だけである。次に昭和天皇の場合は男子1親等は今上天皇と常陸宮さまの二人だけで、2親等の皇族は今上天皇の1親等である現皇太子と秋篠宮さまだけである。そして現時点での今上天皇の2親等皇族は4人である(うち親王は一人だけ、後の3人は内親王)。したがってこの3人の内親王が、仮に結婚後も皇族にとどまるとしても、その期間は今上天皇の在位中までであって、皇太子が即位されると愛子様を除いてほかの2人は天皇の「姪」になって2親等から外れてしまうのだ。たとえ親王と同じく終身の皇族身分を与えるようにしたところで、それは彼女たちだけの話で、夫や子供が皇族になれるわけがない。そんな絶対にありえないケースを「両論併記にとどめている」と評価する記述をした論者の頭の中を見てみたい(ただし私が「絶対にありえない」と書いたのは現在の3人の内親王が結婚後も皇族の身分を維持できるようにした場合ということを前提にして言っており、将来に生じうるあらゆる可能性まで想定はしていない。そこまで考慮するとしたならば内親王が二桁になる可能性だってありうるわけで、その場合どうするのかも併記する必要が生じるからだ)。
 
 以上で内親王の皇籍離脱問題についてのブログを終えるが、すでに述べたように現在の皇室典範を継続した場合、皇位継承者がいなくなる可能性は否定できない。そこで女性天皇については多数の国民が賛意を示しており、女系天皇とは切り離して皇位継承問題を考えたほうがよいのではないかと思う。
 私論として提案するのは、皇位継承者候補の第1位は男女を問わず天皇の第1子、第2位は第2子、第3位は第3子……とする。要するに天皇の血が1/2受け継がれている子供たちの生まれた順にする。もし万一子供がすべて他界してしまった場合は、子供の子供(つまり孫)をやはり子供の継承順位からはじめて第1子、第2子……とする。
 このような皇位継承制度にすれば、最もシンプルで合理的なシステムになる。ただし、この方法だと1/2の確率で女性天皇が生まれる。さらに女性天皇の第1子が皇位に就くと、男女を問わず自動的に女系天皇になる。しかし男系にこだわると、女性天皇は認めても甥や姪が天皇になる可能性は否定できない。そうなった場合、果たして象徴天皇に対する敬意を国民が持ち続けられるだろうか。これは男系にこだわるか、直系の血筋にこだわるかの問題である。
 現状では何もことを急ぐ必要はない。ただ「有識者」の意見に頼るのではなく、広く国民の意思を問い、国民の総意に結論をゆだねることが最も大切なことだと思う。