小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

総理不在の閉会中審査で加計学園問題の本質に迫れなかった野党の責任は小さくない。

2017-07-11 10:25:28 | Weblog
 やはり茶番劇だった。昨日(10日)の加計学園疑惑をめぐる国会の閉会中審査のことである。衆院での審査には、おそらく出席しないと思われていた萩生田副官房長官が参考人として出席したことはしたが(参院審査は欠席)、萩生田氏が指示したと指摘されていた獣医学部新設4条件への追加条件(広域で1校に限る)は、すでに山本地方創生相が「(追加条件は)自分が指示した」と身代わりを買って出ており、野党も「嘘だ」と追及できる証拠がないため萩生田氏は逃げ切った。
 通常「身代わり」は部下が上司をかばうために買って出る。大臣が官房副長官の部下であるはずはないから、何らかの忖度を自ら働かせたのか、あるいは大臣に身代わりを要請できる立場の人物の関与によるものなのか、真相を明らかにすることはおそらく不可能だろう。
 さらに、前川前文科省事務次官がキーパーソンと断定し、「総理は自分の口からは言えないから私が代わって言う」と早期の対応を要請した和泉首相補佐官や、「獣医学部の件でよろしく」と官邸の圧力を匂わせた木曽内閣官房参与(当時)=ともに前川「証言」=や、加計学園の理事長で安倍総理の「腹心の友」である加計氏も閉会中審査に出席しなかった。
 もともと安倍総理不在中の閉会中審査に政府が応じたのは、総理に累が及ばないうちに加計学園問題に幕引きを図るためだったのだろう。私が7日に投稿したブログ『「こんな人たち」を落選させた東京都民の良識とは…』の末尾に書いた通りの結果になった。
 とりわけひどかったのは参院審査での民進党代表・蓮舫氏の菅官房長官への追及だった。菅官房長官の前川氏に対する個人攻撃ととられても仕方がない発言(文科省官僚の闇天下り問題の責任を前川事務次官=当時=が自ら取ろうとせず、地位に恋々としがみつこうとしていた云々)を巡って菅氏と前川氏の証言を交互に繰り返させることに持ち時間の大半を費やし、肝心の加計学園問題の本質に迫る姿勢がまったく見えなかったことである。一体いつまでキャスター気分でいるのだろうか。
 案の定、政府は「閉会中審査を行ったが、新しい問題は何も出なかった」と、加計学園問題に終止符を打つことを明らかにしている。今日(11日)安倍総理は予定を1日早めて(九州豪雨災害のため)帰国するが、加計学園問題で臨時国会を開催したり、閉会中予算委員会で加計学園問題を審議するつもりは毛頭ないようだ。総理不在の閉会中審査を拒否しなかった野党の責任は大きい。

 加計学園問題の真相に迫るためには二つの視点が必要だ。一つは「国家戦略特区」の対象として、なぜ今治市に獣医学部新設が認められたのかという根本的問題。二つ目は、そこから派生した「加計学園ありき」になったプロセス。
 当然ながら最初の視点のほうが重要だ。この視点については私はすでに6月28日に投稿した『加計学園騒動はなぜ収まらないのか!?』で詳述したので、簡単に触れておく(まだお読みになられていない方は是非読んでいただきたい)。
 首相官邸ホームページによれば「国家戦略特区」とは、産業の国際競争力強化及び国際的な経済活動の拠点を形成するため、いわゆる岩盤規制全般について突破口を開いていくことを目的とし、これまで11の拠点が内閣府によって指定を受けた。その拠点の一つに「広島・愛媛県今治市」という広域拠点が含まれている。なお、やはり首相官邸のホームページによれば「広島・愛媛県今治市」が国家戦略特区に指定された理由は、「観光・教育・創業などの国際交流・ビッグデータ活用」であった。
 この国家戦略特区構想に、なぜ今治市に獣医学部新設という計画がへばりつくことになったのか。少なくとも、「広島・愛媛県今治市」という広域拠点構想とは相容れない、と考えるのが常識的な判断であろう。が、内閣府は獣医学部新設認可の追加条件として「広域で1校」という規制をかけた。これが「加計ありき」のための規制だったというのが前川氏の言い分であり、「行政が歪められた」とする根拠だ。
 すでに述べたように「広域」の地域は「広島・愛媛今治市」というエリアで指定されていた。その「広域」エリアが内閣府によって、なぜかいつの間にか「四国」に変えられた。そのうえで「四国には獣医学部がなく、獣医師が不足している」という論理にすり替えられた。そのことを指摘する政治家もジャーナリストもいないのはなぜだろうか。前川氏も、内閣府がすり替えた論理の矛盾を突けば、閉会中審査の様相は一変していたかもしれない。
 昨日の閉会中審査に参考人として出席した文科省OBで前愛媛県知事の加戸氏によれば、「10年以上前から鳥インフルエンザや口蹄疫対策で頭を悩ましており、出身の文科省に何度も獣医学部新設をお願いしてきたが、その都度岩盤規制によって跳ね返されてきた」という。「加計学園の招致に至ったのは、愛媛県の県議と加計学園の幹部が昵懇であり、その関係から加計学園の獣医学部新設計画が進んだ」とも述べた。
 いうまでもなく加戸氏を参考人として招致要請したのは政府側である。言っておくが、今治市に獣医学部を新設するかどうかは、国家戦略特区構想とは関係ない。加戸氏が、「岩盤規制によって県の要請が何度も文科省から岩盤規制によって跳ね返されてきた」ことは多分事実だと思う。
 確かに文科省は1984年以降、獣医師の需要は満たされているとして、既存の16大学以外の新設は認めない方針をとってきた。その背景には人材の過剰供給を嫌う獣医師会の意向があったとされる。
 農畜産行政は農水省が担当し、獣医師の養成教育機関である大学獣医学部の新設許認可権は文科省が握っている。
 いわゆる「岩盤規制」とは何か。特定の業界とその業界を管轄する省庁が癒着して、業界の既得権保護のために省庁が新規参入に歯止めをかけている実態があり、それを称して「岩盤規制」という。官僚の天下り問題の根っこには、そうした官と民のもたれあいがあることはこれまでも指摘されてきた。
 が、そもそも国際競争力のある産業の育成や創業を目的とする「国家戦略特区」と「岩盤規制に風穴を開ける」ということが、なぜイコールになるのか。そこに加計学園問題が生じた根本的問題がある。
 従来、日本は「官僚主導」で政策が作られてきた。旧民主党が政権をとる前、自公政権に対して「政治主導」を主張してきた。もともと「官僚主導」については「省益あって国益なし」と厳しい批判が寄せられてきた。文部官僚に限らず、官が「民の健全な育成」の名のもとに岩盤規制を敷いて既成の業界の既得権益を保護してきたことは否定できない事実である。
 私自身は岩盤規制に風穴を開けるという方針は支持したい。獣医学部を作りたい大学があれば、作らせればいい。日本獣医師会が反対しようがしまいが、大学側が希望し、学生が望んでいるのであれば、文科省がいらぬ「お世話」を焼く必要はない。獣医師の過剰供給によって、いまの獣医師が競争社会の荒波にさらされるのは、自由主義社会である以上やむを得ない。現に、かつては儲かって楽な仕事として雨後の竹の子のように増えた歯科医師が、いまどんどん廃業に追い込まれている。法科大学院もいま廃校ラッシュだ。

 そうした岩盤規制を破るということと、国際競争力のある産業の育成・創業を目的にした「国家戦略特区」がなぜリンクすることになったのか。それが、加計学園問題の根幹をなす問題であることを、野党もメディアも分かっていない。もちろん、加計学園が勝手に獣医学部を今治市に新設することに関しては私は自由だという見解を持っている。今治市が土地を無償で提供し、愛媛県が支援することについては、今治市民と愛媛県民が認めるか認めないかの話であり、私には関係ない。
が、国家戦略特区として国が認定して国が何らかの支援をするということになると話は別だ。「なぜ安倍総理の腹心の友である加計氏が理事長を務める学園にのみ、特別の扱いをするのか」という問題が生じるからだ。そこに、官邸や内閣府の政治家・官僚の総理に対する忖度が働いていたとしたら、安倍総理自身が直接自らの意向を口に出していなくても、そういう「忖度人間」ばかりで内堀を固めてきた総理の責任は問われざるを得ないと、私は思う。
 
 

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