小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

急きょ安倍首相が出席する閉会中予算委が開かれることになったが…。

2017-07-14 11:13:16 | Weblog
 茶番劇に終わるはずだった加計学園問題を巡る閉会中審査が、公明党・山口代表の「鶴の一声」で一変、自民党が急きょ安倍首相出席の予算委で閉会中審査に応じることになった。
 実は首相不在の10日に行われた閉会中審査の翌日11日の午前、自民党の竹下国対委員長と民進党・山井国対委員長が国会内で会談し、山井氏が「疑惑がさらに深まった」として首相出席のもとでの予算委での集中審議を要求したのに対して、竹下氏は「10日の質疑は堂々巡りで(参考人の)前川氏の発言にも新しいものはなかったし、首相の関与を示す事実も出なかった」として閉会中の予算委審議を拒否していた。
 さらに昨日(13日)午後に国会内で行われた竹下・山井会談でも、山井氏の首相出席での予算委審議の再度の要求に対しても、竹下氏はけんもほろろに拒否していた。が、突然、状況が一変した。
 その当日午後6時半ごろ、竹下氏が国会内で記者団に「首相が自ら説明すると言われたので(国体委も)重く受け止め、閉会中予算委を開くことにした」と発表、NHKも『ニュース7』で報道した。この報道では、当日午後行われた公明党の会合での山口代表の「加計学園問題を巡る国民の疑念を払しょくするため、政府は説明責任を果たすべきだ」との発言を映像つきで流したが、なぜかこの報道のオンライン記事からは山口発言だけ削除された。
 NHKは籾井体制のときから安倍政権に「受信料支払いの義務化」の法整備を懇願しており、さらに籾井氏の後継会長の上田氏はNHK放送番組のインターネット同時配信を計画し、インターネット受信者からも受信料徴収できるよう安倍政権に強く働きかけている。そのせいか、最近のNHKの報道姿勢は安倍政権スキャンダルの報道に及び腰で、毎日新聞などは正面からNHKの報道姿勢への疑問をぶつけている。
 たとえば加計学園騒動の発端になった文科省の内部文書の存在を最初にキャッチしたのはNHKで、前川氏へのインタビューもしていながら報道せず、結果的に朝日新聞にスクープにされたという事実もある。「いま受信料問題を抱えているから、安倍政権の足を引っ張るような報道はするな」という経営陣からの指示があったとも言われており、公共放送としての在り方が問われているのだ。そういえば、ニュースだけでなく『クローズアップ現代マイナス』や『NHKスペシャル』でも、国民の最大関心事を避けている。
 公共放送としてのNHKの問題点と、その根っこにある放送法の問題については、昨年8月27日に投稿したブログ『放送法64条は時代錯誤だ。さいたま地裁でのNHK敗訴は当然だろう』でも書いたが、受信料支払い義務については今年末にも最高裁判所で憲法判断が下される予定になっているので、あらためて読者と共に考えたいと思っている。
 その場合、放送法を根拠にして義務の有無を問題にするだけではなく、権利と義務の基本的関係からNHKの体質も含めて考えてみたいと思っている。少なくとも私たちが受信しているNHKの放送内容は、私たち視聴者がNHKに望んでいるものにはなっていない。第一、私たち視聴者にはそういう機会が最初から与えられていない。NHKが放送するコンテンツは「NHK職員の、NHK職員による、NHK職員のための番組」になっていることは否定しようがない事実である。「公共放送とはどうあるべきか」を考えることも、「公共放送の在り方」を決めるのも、肝心の受信料を支払っている視聴者ではないという点に根本的な問題があることだけ言っておきたい。

 NHKの問題から離れる。いちおう予算委での審議が行われることになったが、決め手はこのブログ冒頭に書いたように公明党・山口代表の「鶴の一声」だった。そのことを明確にしておく。
 自民党国対委員長の竹下氏は「安倍総理大臣と相談した結果、『予算委員会に出てもよい』ということだったので、閉会中審査を開催することにしたい」と述べ、予算委員会の閉会中審査に応じる考えを明らかにした(NHK『ニュース7』による)ということだ。
 が、朝日新聞によれば竹下氏は記者団に「安倍首相との電話協議を『ほんの10分前』と説明し、急展開を強調」したという。また竹下・山井会談はその約3時間前だというから、その間に何があり、自民党の方針が急転換したのか。
 そう考えると、安倍総理が「自ら説明責任を果たさざるを得ない」という結論に至ったのは、この日の午後に行われた公明党の幹部会議(国会議員・都道府県本部代表ら)での山口氏の「政府は国民の疑念にしっかり説明責任を果たし、国民の信頼を回復しなければならない」と自民党の逃げ腰にくぎを刺した発言が大きかったと考えざるを得ない。
 この間の経緯を一番詳しく報道した朝日(ただし公明の幹部会議での山口発言については、なぜか触れていない)だが、竹下氏と総理との「電話協議」は、どっちから電話をかけたのかについては明確にしていない。記者団のだれも「その電話はどっちからかけたのか」という質問すらしなかったようだ。
 11日の竹下・山井会談のときは安倍総理はまだ帰国途上にあり、竹下氏は総理と民進党の要求への対応について指示を仰ぐことはできなかったかもしれないが、13日の会談の前には「閉会中予算委の開催は拒否する」という方針を総理や官邸との間で確認していたはずだ。
 それが、あわただしく方針をひっくり返すことになったのは、やはり山口氏の「鶴の一声」が安倍総理の甘い考えを吹き飛ばしたと言えるのではないか。
 都議選での自民大敗の原因については自民内部でもいろいろ取りざたされているが、もちろん安倍一強のおごりが最大の原因だったとしても、それだけでは説明がつかない要素もある。その最大の要素は、これまでの公明党との選挙協力がなくなったことではないかと思う。
 公明党は都議選に際し、いち早く小池都政を支えることを表明し、都民ファーストの会と選挙協力を結んだ。小池氏が築地市場の豊洲移転問題について煮え切らなかった時期でも、豊洲移転を都議選の公約として発表し、最終的には小池氏に「とりあえず豊洲移転」を決めさせた。
 こうして選挙協力の地固めが進んだ結果、組織票を持っていない都民フだったが公認候補50人中49人が当選、公明党は公認23人が全員当選した一方、60人を公認した自民党は当選23人という大惨敗に終わった。安倍総理は、都議選の結果から、現在の国会における一強体制も公明との選挙協力なしには支えきれないことを腹の底からわかったのではないか。山口発言を受け入れて予算委での説明責任を果たすという姿勢だけでも表向き見せないと、自公の間に隙間風が吹き出すことを懸念したというのが、自民方針転換の真相だと思う。

 しかし、前回ブログで書いたように、国家戦略特区の目的と岩盤規制にドリルで穴をあけるということはイコールではない。とくに文科省は他の省庁との人材交流もほとんどなく、霞が関でも特殊な村社会を形成してきた。10日の閉会中審査で参考人の加戸前愛媛県知事は、10年以上前から獣医学部の招致を文科省に働きかけてきたが、ことごとく岩盤規制で跳ね返されてきたという。何が何でも既得権益を守り抜きたいとする獣医師会と文科省の癒着によって守られてきた岩盤規制を打破することは重要だが、それと国家戦略特区構想を直結させようとしたところに、無理が生じた。その一点を抑えておかないと、安倍首相が出席する閉会中予算委を開いても、また「言った、言わない」の平行線議論に終始するだけだろう。茶番劇は繰り返してほしくない。
 

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