名将会ブログ (旧 名南将棋大会ブログ)

名古屋で将棋大会を開いています。
みなさんの棋力向上のための記事を毎日投稿しています。

20170525今日の一手(その513);相手の働いている駒を攻める

2017-05-25 | 今日の一手
20170525今日の一手

4月22日の名南将棋大会から、MさんとSさんの対局です。形勢判断と次の一手(できれば少し先まで)を考えてください。

おまけ、寄せ方の問題です。

先手優勢ですが、紛れのない寄せ方はどれでしょう。


一昨日の一手の回答

☆ 形勢判断をします。
先手の1歩得で竜を作りあっています。後手に持ち歩があるので損得なしとします。
玉の堅さは後手のほうが堅いです。
先手の攻め駒は(96角は後手の囲いに届いていないので除外)21竜と持ち駒銀銀桂で4枚。
後手の攻め駒は33角29竜と持ち駒銀桂で4枚。

総合すれば先手不利です。

☆ 大局観として
終盤では駒の損得の重みが下がり、玉の堅さを重視することになります。この場合は玉の堅さがかなり違うのです。
穴熊だから堅い、というわけではなくて、金銀3枚(73金は働きが弱いですが、無いよりは良い)と81桂VS金金と跳ねてしまった77桂の差があります。穴熊だからというのは玉の深さによるもので、78にあるよりは91のほうが相手の攻め駒からは遠いわけです。手番を持っているので攻めたいと思うわけですが、単純に寄せ合いに行くと2手くらい違いそうな局面です。

困りましたね。攻防になるような手が欲しいです。


△ 実戦は94歩で勝負。だったのですが、なんとこれを手抜かれて66歩

と踏み込まれました。66同歩67歩同金55桂58銀

67桂成同玉55銀78桂に79金

79同金同竜69金99竜

端を手抜いて99の香を取ってしまえば優勢です。ただしこれは先手のHさんがいうことを聞きすぎました。

79金には93歩成です。

93同桂同香成同香85桂

後手の端の取り方で変化がありますが、93同桂ではない時に85桂と跳ねれば攻防になります。69金と取られても詰めろにならないのです。これは先手の勝ち筋。チャンスがありました。
後手としては79金が危なくて、94歩と手を戻すべきでした。

では最初の94歩66歩に93歩成が成立しているかどうか。

93同桂に94桂と打っておき、67歩成同金66歩

この時に82桂成同玉91銀72玉71竜

で後手玉が詰んでいます。

後手はどこかで51歩と受ける必要があり

これで形勢互角のはずなんですが、ちょっと先手が悪いみたいです。うまい守りの手がないし、攻め合いでは少し足りません。32竜にも66歩で負けそうです。

また仮に最初の94歩に同歩だとして

後手に歩を余計に渡したので、66歩同歩67歩の筋が厳しくなっています。少し条件が悪くなっているか。(ただし後で調べる変化に影響がないものもあります。)


△ 53角成が自然な攻め方です。

72金引には64桂89銀79玉

角が移動すると77桂の守りが減るので、89銀から77角成という筋ができるのですが、次の72桂成が詰めろなので、これはどうにか先手の勝ちか。

また、63から桂を打って

62金上同馬同金71銀

と詰めろを続けていくのもありそうです。

ならば53角成で先手が良さそうなのですが、いきなり77角成が厄介です。

77同玉には85桂86玉77銀

どんどん攻められて71馬の余裕がありません。(後手は詰めろになっていなくても角をもらって詰めばよい。)

戻って77同金には85桂

桂馬のお代わりがあるので、89桂と受けたいですが、77桂成同桂66桂

から詰めろが続きます。(66同歩89銀68玉66歩)

平凡に86銀と打って受けても

77桂成同銀85桂のお代わり。59桂で抵抗しますが

38竜68銀打77桂成同玉58歩

のんびり桂馬を取りに来られ、71馬から行けば44角の王手竜取りが待っています。71竜から同銀同馬72金打

こういうのが穴熊の深さなんです。角を渡すと44角が両取りか攻防になるので先手の負け筋です。馬を引き上げると59歩成から85桂で寄せられます。


△ 65桂という勝負手もあります。

金を逃げたら66銀と埋めれば案外に耐久力があります。99角成に73桂不成

といけば詰めろ。でも73同桂72銀に89銀79玉78香

78同金寄同銀成同玉66桂同歩89馬

きれいに詰まされます。

途中で73同桂のところで72銀の詰めろではなく、89金と受けることになるのですが、77香

77同角同馬同金65桂打

で1手負けでしょう。


△ 受けるなら58銀と埋める手。

これで53角成とやりやすくなります。でも59銀とかけられると金を逃げられません。53角成68銀成同玉64桂88桂56歩

一手受けるだけでは後手の攻めの速度は落ちません。

59銀に79銀と埋めて頑張ってみます。

68銀成同銀64桂88桂19竜

先手の攻撃力が減ってしまい、また、駒損で長くするわけにもいきません。53角成も防がれたので94歩同歩85桂ですが76桂

という強烈な返し技があります。ジリ貧になりそうな展開になり、動けば斬られます。


× 88銀と受ければ

65桂や85桂と攻めやすいわけですが、66歩同歩67歩

の筋に対応できていないので悪いです。


○ 後手の攻め筋は角が中心でしたから、31竜と角を追います。

まだ77角成は早いですし、銀を使って受けるわけにもいかず、44角45歩26角に94歩同歩85桂72金引64桂

角筋がそれたら(53角成を防ぐ逃げ方でしたが)端攻めを絡めて攻められます。62金寄に93歩同桂同桂成同香72銀

まだ後手に受けの余地がありますが、攻めは十分に続きます。これはうまくいきすぎました。

45歩には55角の方ですね。

56歩19角成53角成62銀

は長いけれどやや穴熊のペースです。

44角には重く53銀と打つのが良さそうで

26角には65桂63金55桂

という調子です。べたべた重く攻めても、先手玉に寄り筋が見えないので勝てそうです。

55角には62銀打。

これも先手のほうが勝ちやすそうです。

ということは31竜に最初から55角と逃げるのが正しく(また、55角などではなく39竜には37歩が有効です)

有効な利かしが入ったと考えます。39歩として待つか、56銀46角65桂72金引53桂成

としておくか(64桂が狙い)。形勢は互角ですが、問題図よりは改善していると思います。


☆ まとめ
問題図では先手が不利。そこで勝負手としてみれば

実戦の94歩というのは後手玉に嫌味をつけるという意味で成功しています。穴熊に攻められるだけというのは避けたいのです。相手の攻めが切れそうでなければ、いつでも寄せ合いにできるようにしておくとか、入玉を見るか、というのが勝ち方です。
さすがに94同歩の一手ではないかと思ったら、手抜いてもらえてチャンスが生じていました。

65桂で寄せ合い勝負、というのも怖いですが、形勢不利と思えばやる価値があります。次の73桂不成が詰めろですが、後手に桂を渡すと99角成が詰めろになっていて負け筋です。これは一発勝負。

普通に指すなら
53角成が自然な攻め方で、72金引なら寄せ合いで勝てそうです。62銀と受けられて・・・のほうを考えこんでしまいそうですが、実はばっさり77角成で寄せられてしまいます。こういうのは穴熊の怖さです。

銀を打って受けるだけというのはじり貧負けです。

一番働いている33角に働きかけるというのが最善で、追いかけ方は31竜がベター(34歩とか32竜とか45桂も悪くはないですが)。55角ならまだ難しいのですが、受けやすくなっています。

地味な感じなのですが、相手の働いている駒を攻めると有効だということがあります。取ることができなくても、一番良い位置から移動させると働きが鈍るのです。気を付けて棋譜を眺めてみると、この類の手は何度も出てきます。



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 大山将棋研究(529); 四間... | トップ | 大山将棋研究(530); 四間... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

今日の一手」カテゴリの最新記事