今日の棋譜20201128
昭和29年4月、升田幸三先生と第13期名人戦第2局です。
大山先生の先手で矢倉です。
5筋を突き合いますが
升田先生は何か動こうとしています。
大山先生も57銀と合わせますが、44銀には66歩、守りを重視します。
升田先生は5筋の歩を交換して
「中央に銀二枚を並べる戦型」です。優秀な戦法には思えませんが
74歩~64歩~63金~73桂で急戦をねらう将棋を中原先生が指していたことがあったなあ、と思っていたら、大山先生は75歩、それを嫌ったのでしょう。
升田先生の55歩は、どちらの銀を使うのかわかりませんが、64銀の形にして75歩を取ろうとしています。
なので大山先生は55歩を取らず69玉56歩同銀。55歩65銀は先手が指しやすいか。
64歩46歩63金68角55歩、升田先生が中央の位を取ることになりました。
31角の前に74歩同歩同金もあったのですが、31角76銀74歩だと位を保たれます。
棒金のねらいでしたか。でも後手陣が薄すぎるので、73金~63金としておく方が良いのだと思います。
もう1歩あれば74歩同歩75歩なのですが、銀を引いて74歩同歩同銀ねらいではたいしたことはないです。
大山先生は45歩同銀24歩
角を出て42歩を利かします。52玉15角と応じられても、どこかで42歩を取られるのでしょうから
角交換のほうが普通です。角を打ちこんで
馬を作れば、74歩同歩75歩に85銀とできるわけで、7筋の受けにもなっています。
升田先生は自陣角を打って(これは得ではないけれど)
75金あるいはこの74歩から攻めるしかないところでしょう。
でも金銀の交換ではつまらない感じですが
84歩~85歩の楽しみがあります。大山先生は(駒得なのに)何か動かねばなりませんが
35歩同角38飛、角を質駒にして35飛同歩34歩の寄せをねらいます。
76歩に58玉は危ないほうに近づいている感じがしますが、飛を切る準備なのでしょう。
56銀68金打
84歩75歩?75同飛に65歩では大したことはないようですが
升田先生は飛を引いて桂を取り切ります。
57歩47銀成同馬
82飛のところで、大山先生は35飛同歩34歩を決行します。ここで升田先生は
28飛67玉を入れて84桂ですが、単に84桂のほうが良かったのではないかと思うのです。入れなければ金を取らせにくいのではないかと。
大山先生は33桂を取って37銀で粘ります。
24飛成85金のところで、升田先生の36歩はまぎれたかも。単に76銀58玉85銀の駒得(76桂ねらい)のほうが確実でしょう。36歩に25歩
37歩成が利いたのは大きいですが、37同桂76銀
58玉のところで32竜と手が戻ります。大山先生は45桂打で反撃です。44金には71角か84金同飛62角か、決めるのは難しそうですが。
升田先生の45同同銀では危ないでしょう。桂を跳ねさせて
39竜と潜って寄せてしまうはずが、馬を引かれて決め手が見えません。
28竜53角で後手玉が危なくなってきました。先手玉は36桂などで詰めろの、現状2手すき。
32玉に39銀は安全策ですが、戦力不足です。少し升田先生が良いのでしょう。
19竜84金、84同飛は15馬24合駒45桂22玉24歩で詰めろになっていそうです。
32玉77金右、大山先生は攻め駒が欲しいのです。
36桂に31金は変な手ですが
王手で馬を逃げます。
34玉76金44銀、この後手玉は案外に捕まえにくいです。
38銀に対して、升田先生は53角を取るのですが
45銀から王手竜取りを掛けられて失敗です。
竜を取られて逆転したか。
54角65歩35香37桂、後手玉のほうが不安定なので苦労が多いです。
34玉74金、大山先生はまたも駒を取りに行きます。銀をもらって25銀では詰みません。32飛同飛同金で詰めろだから3手すき。
升田先生は36角68玉74同銀同歩までは良いとして、この69銀(詰めろ)では他の手(59銀や84桂)のほうが良いのではないか、
というのは45銀同角同歩で角を取られてしまうからなのです。
58金67玉、これが投了図です。
先の69銀が敗着なのかと考えてみるのですが、後手玉はまだ詰めろではなく、先手玉に詰めろくらいはかかりそう(78銀不成同玉67銀、取れば詰みで88玉76銀成)。考えるとおかしな投了図だなあと思って、そういえば升田先生が時間切れで負けた将棋があったはずだと思い出しました。調べてみるとまさにこの将棋です。本によると、50から1、2、3・・・10まで読まれて負けたとか。残念過ぎます。
ところどころこの指し方で良いのかなあと思うところがあるのですが、その先の意図まで考えるのは面白いです。形勢も揺れ動いていて、考えながら並べる楽しみがあります。
#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.44 棋譜ファイル ----
開始日時:1954/04/26
手合割:平手
先手:大山名人
後手:升田幸三8段
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 8四歩(83)
3 7八銀(79)
4 3四歩(33)
5 7七銀(78)
6 6二銀(71)
7 2六歩(27)
8 4二銀(31)
9 4八銀(39)
10 3二金(41)
11 7八金(69)
12 4一玉(51)
13 5六歩(57)
14 5四歩(53)
15 7九角(88)
16 5三銀(62)
17 5七銀(48)
18 4四銀(53)
19 6六歩(67)
20 5五歩(54)
21 同 歩(56)
22 同 銀(44)
23 5六歩打
24 4四銀(55)
25 5八金(49)
26 5二金(61)
27 2五歩(26)
28 5三銀(42)
29 2四歩(25)
30 同 歩(23)
31 同 飛(28)
32 2三歩打
33 2八飛(24)
34 5四銀(53)
35 7五歩(76)
36 8五歩(84)
37 6七金(58)
38 5五歩打
39 6九玉(59)
40 5六歩(55)
41 同 銀(57)
42 6四歩(63)
43 4六歩(47)
44 6三金(52)
45 6八角(79)
46 5五歩打
47 4七銀(56)
48 3一角(22)
49 7六銀(77)
50 7四歩(73)
51 同 歩(75)
52 同 金(63)
53 7五歩打
54 8四金(74)
55 7七桂(89)
56 6三銀(54)
57 4五歩(46)
58 同 銀(44)
59 2四歩打
60 同 歩(23)
61 同 角(68)
62 2三歩打
63 4二歩打
64 同 角(31)
65 同 角成(24)
66 同 玉(41)
67 7一角打
68 7二飛(82)
69 2六角成(71)
70 3三桂(21)
71 3六歩(37)
72 4四角打
73 4八馬(26)
74 7四歩打
75 同 歩(75)
76 7五歩打
77 8五銀(76)
78 同 金(84)
79 同 桂(77)
80 7四飛(72)
81 4六歩打
82 5四銀(45)
83 3五歩(36)
84 同 角(44)
85 3八飛(28)
86 7六歩(75)
87 5八玉(69)
88 5六銀打
89 6八金打
90 8四歩打
91 7五歩打
92 7二飛(74)
93 7六金(67)
94 8五歩(84)
95 5七歩打
96 4七銀成(56)
97 同 馬(48)
98 8二飛(72)
99 3五飛(38)
100 同 歩(34)
101 3四歩打
102 2八飛打
103 6七玉(58)
104 8四桂打
105 3三歩成(34)
106 同 金(32)
107 3七銀打
108 2四飛成(28)
109 8五金(76)
110 3六歩(35)
111 2五歩打
112 3七歩成(36)
113 同 桂(29)
114 7六銀打
115 5八玉(67)
116 3四龍(24)
117 4五桂打
118 同 銀(54)
119 3五歩打
120 同 龍(34)
121 4五桂(37)
122 3九龍(35)
123 4八馬(47)
124 2八龍(39)
125 5三角打
126 3二玉(42)
127 3九銀打
128 1九龍(28)
129 3三桂成(45)
130 同 玉(32)
131 8四金(85)
132 3二玉(33)
133 7七金(68)
134 3六桂打
135 3一金打
136 2二玉(32)
137 3四桂打
138 3三玉(22)
139 1五馬(48)
140 3四玉(33)
141 7六金(77)
142 4四銀打
143 3八銀(39)
144 5三銀(44)
145 4五銀打
146 3五玉(34)
147 3六銀(45)
148 同 玉(35)
149 3七馬(15)
150 2五玉(36)
151 1九馬(37)
152 5四角打
153 6五歩(66)
154 3五香打
155 3七桂打
156 3四玉(25)
157 7四金(84)
158 3六角(54)
159 6八玉(58)
160 7四銀(63)
161 同 歩(75)
162 6九銀打
163 4五銀打
164 同 角(36)
165 同 歩(46)
166 5八金打
167 6七玉(68)
168 投了
まで167手で先手の勝ち