『青空のむこう』原題:The Great Blue Yonder アレックス・シアラー著 金原・瑞人訳
交通事故で亡くなってしまった少年「ハリー」は受付で事務手続きを済ませ「死者の国」の入口へと進むのです。 お話しはハリーが死後の自分を語っているようで、絵のない「絵本」みたいです。 ここは、太陽は沈むことなく夜は来ない。 死者の国で「アーサー」というハリーと同い年の少年に出会い親しくなります。 アーサーは百数十年前に死んだのですが(この国では歳をとりません)顔も覚えていない「母」を探すためにこの国に留まっているのでした。 ハリーも、事故に遭う前に姉エギーと喧嘩をして取り返しのつかない言葉を言い放って家を出たこと(事故に遭ってしまったのですから)を後悔していました。 姉も、弟に言い返した言葉に後悔し傷ついているのではないかと思っていました。
姉に謝らなければ、本心じゃなかったんだと、愛してるよ、と・・・ そんな思いでアーサーに「生者の国」へ連れて行ってもらい、やり残したこと(姉に謝ること)を実行しようとしました。 そして、自分が居なくなったあとのことが気になって学校へ行ったり、町中を歩いて?みたり(幽霊になっているので誰にも見えません)するのです。 ガッカリすることもあったのですが思いがけない嬉しさもあり納得。
最後に両親・姉の住む家に向かい家族の悲しみを感じてしまうのですが、姉の部屋に行きノートに、鉛筆に集中して「許して欲しい、エギーのこともモチロン許す」と書き、姉との会話?もでき、思い残すことなく「死者の国」へと戻っていくのでした。
思い残しの無くなったハリーの「彼方の青い世界」への旅立ちの準備が始まりました。
「死者の国」に着いて、人生に何の後悔もない人はそのまま「彼方の青い世界」に旅立つのですが、ハリーのように姉に謝れなかったことを後悔していて旅立てないでいる「死者」も多くいるのでした。 読んでいて思い出したのは「葉っぱのフレディ」 葉っぱが落ちて「土」に還り新しい命に繋がるということ。
命を全うするのって難しいですよね。 「死」はいつ訪れるのか「神のみぞ知る」ですから・・・ だからこそ、悔いを残さないように丁寧に時を重ねなくては!と思い知らされる一冊でした。 優しい、易しい語り口は、読み易くそれでいて何か沁みるなぁ~という感じで読了しました。