前置きとして書きますが、今回の記事は消費者として思った事を綴ったものであり、経営論なんぞをエラそうに語るのが目的ではない事をおことわりしておきます。
アイドルが急激に増えたのは、いつ頃の事だっただろうか。第一回TIF(TOKYO IDOL FESTIVAL)が開催されたのは2010年で、Wikipediaによると、この年の参加アイドルは45組。今となっては、そんなもんだっただろうか?と観に行った者でありながら、その少なさに驚きますが、それでも当時は多いほうだと感じたものでした。メジャーもマイナーも網羅したような、そういうイベントが皆無だった事もあり、「いろんなアイドルが活動しているのだな」という新鮮な驚きがありました。アイドル業界の全体像がよく掴めていなかった。当時、掴めていた人は、関係者でもヲタでも非常に少なかったとは思いますが。
2011年の第二回では、かなり多様化が進行した印象があり、地方アイドルというキーワードが注目されるきっかけにもなるのですが、それでもこの回の参加者数は57組。公式発表による来場者数も前年の8,000人に対して10,000人と少し増した程度です。それが、2012年になると参加者数111組、来場者数25,000人に倍増しています。
この辺りを境に増えたというより、増えてきたマイナーアイドルたちが小さな脚光を浴びる機会が増えてきたという事なのでしょう。そういう人達が、こういう大きなイベントにも呼ばれるようになった。
それで、「よっしゃ行くぞ」とばかりに、小銭を稼げそうなジャンルとして地下アイドルに参入してくる人が増えた。そんな印象です。いや、実際に小銭が稼げるのかは知りません。でも、これだけたくさんの地下アイドルが氾濫しているのですから、経営する側には、それなりの旨味はあるのでしょう。女性である事を売りにするビジネスとしては、(一部の例外を除き)店舗を持たないビジネスである事に様々なメリットがあるのかなとも思われます。
でもですね。これだけ増えたはいいけれど、その増加に見合った分だけ好素材が増えたわけでも、素晴らしいビジョンを持った運営のプロが増えたというわけでもないように思えます。アイドルが増えて助かった人達というと、作曲の仕事が増えて収入に結びついたマイナーミュージシャンとか、バンドブームが下火になり稼働率の停滞に困っていた都内のライブハウスあたりでしょうか。そんな事を書いた記事を読んだことがあります。いい事もあるもんです。
それで、以前に比べて人材が大幅増したアイドルという職種。必然的に、その人材は玉石混淆となったわけですが、それはアイドルそのものだけでなく、スタッフも同様。むしろスタッフのほうが「ダイヤモンドより石ころの多い率が高め」ではないか?と思っております。
アイドルならば、石ころは石ころなりの愛で方もあると思えるし、実力や魅力というものの定義が曖昧なジャンルですので、むしろ積極的に石ころを愛でるという楽しみ方さえ出来ます。
でも、売る側、育てる側が一緒になって石ころぶっていてはダメだろうと、今まで観てきて、そんな風に思えた現場もいくつもあります。以前も書いた事ですが、売る側にとっては長い人生の間の、いくつものビジネスの中の商品の一人かもしれませんが、アイドルにとっては人生でたった一度しかない青春期のひとときなのです。「アイドルの人生を背負っているという覚悟で」とまでは言えませんが、もう少し大事にしてあげてほしいと思う事はしばしばでした。
結局、アイドルというものが低い位置で商売できるものになったという事なのかなと、ずっと思っています。いいものを育てて、いい値段で提供していくような商売ではなく、低価格で気軽に楽しんでもらう商売が主流になったのではないかと思うわけです。
これってアイドルのデフレ化というものなのだろうか。千円札で買える笑顔って商売の在り方は、売る側も、買う側も間口が広くなるけれど、そんなお手軽商売が正解と言えるジャンルなのだろうか。
その答えはわかりません。ブームの冷え込みで一気に廃っていくどころか、消えたり、現れたりしながら、毎年毎月たくさんのアイドルが生み出されている事を考えると、それだけのニーズがあるのでしょう。店舗型ビジネスが売り方を変えてアイドルという肩書で売るようになっただけとも思えるし、それなら、「そりゃニーズは一定数見込めるよなあ」とも思いますが、あくまで「ビジネス」なのだと考えれば、間違いでもないのだろうなあとも思います。
でも、石ころは石ころなりの愛で方を提供するならば、安いものをたくさん買ってもらうような売り方ではなく、石ころを安売りしなくて済むような付加価値を作ってあげてほしいなと願います。道端の石ころを少しでも価値あるものにしていく事、それこそが売る側の大人の腕の見せ所なのではないでしょうか。
それが出来ず、結局既存のフォーマット(それも人間をデフレ化させていくシステム)に乗っかるしかない。或いは、巷で一番売れているアイドルの縮小版みたいなものしか提供できないなら、別な女の子ビジネスに鞍替えしてほしい。そこまで思う次第であります。高い位置から叫んでいるようなものの言い方ですが、消費者側としての率直な想いです。