さんたろう日記

95歳、会津坂下町に住む「山太郎」さんたろうです。コンデジで楽しみながら残りの日々静かに生きようと思っています。

山に咲く桜が咲いてたよ 父さん

2013-05-06 | 日記


 あでやかなソメイヨシノばかり見てきた私は近くの山には淡い色に咲く山桜はもうないんだと思っていました。かつて山桜の木の皮は貴重な工芸品に用いられてどんどん切られていましたから。

 でも、違うんですね、今日の子供の日、糸桜里の湯の裏山の遊歩道を散策してたくさんの山桜を見ることが出来たんです。

「父さん、山に山の桜咲いてるよ」とうるむ心で私は小さく叫びました。私は暖かい父の思い出と重なってほんとうの桜は淡い色に咲く山桜だと思っているんです。

 私は小学校2年の時「はしか」にかかりました。当時はまだ「はしか」のワクチンは出来ていませんでしたから、「はしか」は子供が必ずかからなければならない命定めの重い病気でした。激しい高熱が何日も続きやがて赤い発疹が出来ると熱も下がり治癒するつらい病気でした。

 高熱の苦しい日々を乗り切った私に発疹ができ熱が下がり始めようやく人心地のついた私を父は抱いて窓を開け近くの山肌にさく山桜を見せてくれました。そしてその日からはしかはみるみる治癒して元気になりました。当時私は尾瀬近くの山狭のちいさな集落にすんでいました。桜と言えばソメイヨシノではなくてすべてが山に咲く山桜だったのです。

父と母は何日も私の枕辺に付き添って看病してくれたんだと思います。そして治癒の見通しがついて嬉しかったんだと思います。

 こんな86歳にもなる高齢のじじいですけど、あのときの人心地のついた安堵の喜び、そして父の暖かい腕と笑顔、窓から見えるさわやかな山桜の思いは強く心に残っているのです。

 だから、山の道に咲く山桜を見ると「とうさん、山の桜が咲いてるよ」と心の中で叫びたくなるのです。