続・切腹ごっこ

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「切腹・日本人の責任の取り方」

2006-02-01 | ★レビュー(本)
切腹・日本人の責任の取り方山本博文・著。

おもに江戸時代の武士が、どういう経緯で切腹に至ったかということを紹介しながら、武士の常識や藩主と藩士の関係を書いている。

武士の切腹(つまり死罪)の理由というのは、現代人の人権意識や責任の所在の考え方からすると納得のいかないことがほとんどだ。
自分が時代劇を見慣れているせいもあって順を追って説明されると、切腹に至る理屈も理解できないことはないが、到底了承することはできない。

それに「詰め腹」の場合、具体的な理屈のない場合も多かったようだ。
「ここは切腹させた方がよい」「混乱を収めるためには誰かに責任を取らせなければいけない」という曖昧な理由から一人の人間の命が奪われるのだ。

戦国の気風が残る江戸時代初頭は、上司の命令に背き切腹を拒否して出奔(逃亡)する武士もいた。
江戸時代以前は仕える大名を替えることも珍しくなかったからだ。
しかし太平の世になると、一度主君に背いて出奔すれば他藩に仕えることも容易ではなくなる。
そのため藩主、上司の命令に背くとどちらにしろ生きていけないことになり、出奔して路頭に迷うよりは、大人しく切腹を選ぶようになる。
本人が切腹すれば、「家」自体は存続を許されることが多かったから、という理由もあってのことだ。


そういうシステムを前提にして武士の世界が回っていたと言えばそれまでだが、まともな理由もなく、なんとなく現状をスッキリさせるために人生を終結させられたのではたまったもんじゃない。
戦国時代、合戦の末に敵に追い詰められて腹を切る方がまだ納得して腹を切れる。

ただ、切腹フェチの自分としては、そういう不条理な理由であっけなく命を散らしてしまう潔すぎる態度にも魅力を感じてしまうのだ。
★「切腹」の、地味だけど厳しい実情を知りたい人にはおすすめの一冊です。

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