着物の前を寛げて切腹に臨む若い侍、というのを描いてみた。
といっても、そういうふうに書かないとただ着物を肌蹴て腹を見せている画にしか見えないかもしれない‥。
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『日本人はなぜ切腹するのか 千葉徳爾著』という本に、「若者が性的快感の代用として切腹へと志向する例がある。」という一節がある。
もちろん若者なら誰でもということではなく、日頃からそれを身近に感じ、イメージし、慣れている者。自分の最期はそういう形で飾りたいと思っている者。そういう若者が非日常的な緊張感に直面した時、切腹という行動に駆り立てられるのだという。
今ではそんな若者は極々少数だろうが、太平洋戦争直後の時期まではそういう心理状態にあった若者は少なからず存在し、実際に行動に移した例もあるそうだ。
さらに江戸時代まで遡れば、武家の子息は成人の儀式として切腹を習い、武士の最期はこうあるべきと教えられたはずだ。誰々が御腹を召されたなどという話を聞くこともあったかもしれない。
そういう環境に育った若者なら比較的容易に、性的興奮の赴くまま切腹へと志向したのではないだろうか。最近の時代劇ではそんな「若気の至り的な切腹」は見かけないが、小説の中なんかにはある。
ある若い侍が、すれ違った旅姿の侍と口論になる。些細なことが原因なのだがお互い退くに退けず、とうとう二人とも刀を抜いてしまった。
そこへ通りがかった若い侍の幼友達数人。その中の一人が訳も聞かず助太刀を買って出てそのあげく旅姿の侍を斬り殺してしまう。
殺してしまってから身元を調べると、どうやら隣の藩の人間で大事な用で旅路を急いでいたらしい。斬ってしまった方は、「これはまずいことになった。厳しい処分は免れない‥」と青くなる。
若い侍は「いや、もともとこれは自分が起こした口論が原因だ。厳しい処分を待つまでもない、この場で腹を切るからそう報告してくれ」と言って着物の前を寛げた‥。