1992年の冬に、中古のフォールディングカヤックを購入し、独りで海を漕ぎ始めた俺。
今でこそシーカヤックはTV番組にも登場するなど一般に知られるようになっているが、当時はまだ、せいぜいカヌーを川で漕ぐというイメージの時代。
カヤックやカヌー、シーカヤックに関する情報はとても限られていて、貴重なムック本や、一般的になったばかりのインターネットを使って海外の情報などを入手して、勉強していたことを思い出す。
***
一連の騒動で外遊びを自粛し、この有り余る時間を活用して最近の休日は、シーカヤックとの出会いや、これまでの記憶に残る旅を、ブログという媒体を使わせていただいてデジタルアーカイブ化する活動を進めてきた。
非常事態宣言も、週末の外出自粛も解除され、地元のシーカヤックショップでもツアーが再開されているなど、これからようやく一歩一歩、以前に近い生活に戻っていけそうな今日この頃。
一旦、このデジタルアーカイブ化も一区切りとすることにしようか。
2002年に訪れた、初めての海外旅行先であるミクロネシアのシーカヤックツアーとは、ある意味対極にある、北欧のスウェーデンのストックホルムでのカヤックツアーも、忘れられない旅の一つであった。
***
2014年6月17日(火)~6月24日(火)まで、リフレッシュ休暇を利用して妻と二人でスウェーデンに行ってきた。
以前、同じ職場で働いていて仲の良かったトルコ人夫婦が転職してスウェーデンに住んでおり、遊びに来ないかと言われていたのである。
『6月20日が夏至祭ですから、この時期はどうですか?』 『うん。 今年はリフレッシュ休暇が取れるから、その時期に行くよ』
『せっかくだから、ちょっとでもカヤックを漕げないかな?』 『ええ、来られるというので、友人にどこで漕げるか聞いているところです』
『おー、それはありがとう。 楽しみだ!』
半年くらい前からチケットを手配し、待ちに待った北欧への旅。 妻も楽しみにしている!
***
6月17日の夜に広島空港を出発。
羽田空港で国際線へ。
羽田から深夜に出発するフランクフルト行きの飛行機に乗る。
約12時間の長旅である。
トランジットの長い待ち時間。
せっかくのフランクフルトという事で、セルフサービスのホットドッグにもチャレンジしてみた。
***
フランクフルトからストックホルムへは、約2時間。
北欧は、長い冬を終え、待ちに待った太陽の季節のようである。
俺たち夫婦にとっても、待ちに待った夏のスウェーデン。
どんな国なのだろうか? 楽しみだ!
***
空港まで迎えにきてくれた友人夫婦と無事再会。
『ありがとう。 本当にスウェーデンまで来たよ』 『そうですね。 ここで会えるなんて、私たちも嬉しいです』
『お昼ご飯はまだですか?』 『うん、まだ食べていないんだ』 『じゃあ、良いカフェがありますから、そこに行きましょう』
案内されたのがこのカフェ。
少し涼しいが、空は晴れて緑も美しく、素晴らしい眺め。
楽しい会話と美味しいランチ。 なんとも最高な旅のスタート。
***
友人夫婦の家に向かう途中、道で見かけるクルマの多くに、トレーラーを引っ張るヒッチが付いている事に気が付いた。
『あれ、多いねえ』 『そうなんです。 ボートやキャンピングトレーラーを引っ張るクルマもあるし、中には馬を載せてバカンスに行く人達も多いんですよ』
『へえ、それはスゴイねえ』
途中で買い物。
『ビールが好きだから、今日はいろいろなビールも準備していますから楽しんで下さい』
『いやあ、それはありがとう。 うれしいな』
『スウェーデンではお酒を制限していて、アルコール分が3.5%までのビールはスーパーや売店でも売っているんですが、それよりアルコール分が高いビールやお酒は、専門の販売店に行かないと売っていないんですよ』
『へえ、そんなシステムがあるんだね』
『じゃあ、晩ご飯を作りますから、ゆっくり飲んでいて下さい』 『ああ、ありがとう』
日本の事、会社の事、スウェーデンの事、広島でいろいろと一緒にドライブや旅行に行ったときの事などなど、楽しい会話とおいしい食事。
『いやあ、今日は楽しかった。 じゃあ寝るよ』 『はい。 おやすみなさい。 この時期は、真夜中まで明るいですから、ブラインドを下ろした方が良いですよ』
調べてみると、日が沈むのは夜の11時過ぎ。 日が昇るのは夜中の2時頃。 『へえ、これが白夜か』
***
翌日。 朝食を食べ、友人と一緒にストックホルムの街へ。
今日は昼から、俺だけ2時間のカヤックツーリングの予定なのだが、出発場所の確認のため俺たちだけ先に街に出たのである。
妻と彼の奥さんは後から彼と合流して、俺がカヤックツーリングを楽しんでいる間に街を散策することになっている。
結構激しく降る雨の中、昨夜グーグルマップであたりを付けていた場所へと向かう。
『あ、あそこがツーリングのスタート地点だな』
『そうですね』 『OK。 じゃあ、後は俺一人でスタート時間まで待っているから大丈夫』
『そうですか。 ではまた後で』 『うん。 2時半に、このカフェで待ち合わせしよう』
ツアー開始まで、まだ1時間半ほどあるので、しばし町を散策。
スウェーデンでは、雨が降っても傘をさす人は少ないと聞いていた。 実際に見てみると、傘をさしている人は居るが、確かに少数派である。
雨が激しくなってきたので、俺も傘をささずにパドリングジャケット&パドリングパンツ、そして靴は嵩張るパドリングブーツ代わりに持参してきた田植え靴『みのる君』に履き替え、完全防水の怪しい姿でストックホルムの町を歩く。
この格好で、そのままカヤックツアーに参加するつもり。
雨の中、傘をささずに街を歩くというのも、なかなか趣き深いものである。
ただ、つま先の割れた田植え靴『みのる君』が、俺の怪しさを倍増している。 通報されないだろうなあ!
晴れていればもっと美しいのだろうが、それでも自分の足で自由気ままに歩いてみると、この街の雰囲気がよく伝わってくる。
***
川沿いのカフェで独り、ランチを楽しみながらスタートの時間を待つ。
12時15分。 カヤックツーリングの受付に行く。
『ハイ! 今日の12時半からのツーリングを申し込んでいるんだけど、雨でキャンセルにはならないかな?』
『ええ、大丈夫。 もう少し時間があるから上で待っていて』 『OK。 良かった、楽しみにしていたんだ』
12時半少し前に、さっきの女性が上がってきた。 『じゃあ、準備しましょうか』
『今日は何人参加するの?』 『今日はあなただけよ』
『え、それはラッキーだな。 ツアーのHPには、人が少ないとキャンセルする事もあるって書いてあったよね』 『いいえ、大丈夫よ』
『着替えは?』 『これで漕ぐよ』
『カヤックは漕いだ事ある?』 『うん。 22年ほど日本で漕いでいる』 すると驚いたように、『じゃあ、私より経験が長いのね』
今日はガイドが一人、客が俺一人ということで、タンデム艇でツーリングである。
普段、タンデム艇なら俺が後ろを漕ぐのだが、今日はお客という事で久し振りのバウ側。
『スウェーデンでカヤックを漕ぐのを楽しみにしていたんだ。 今日はよろしく』
静かにストックホルムの運河に漕ぎ出す。 感激の瞬間!
大学生で、夏はカヤックガイドの仕事をしているという彼女。 漕ぎ進みながら、街の様子や建物についていろいろと教えてくれる。
もちろん全て英語である。
『ここのツアーには日本人は来る?』 『いいえ、前に一人来たくらい。 アメリカ人とドイツ人が多いの』
『なるほど。 ドイツはスウェーデンと一緒でバケーションが多いからなあ。 羨ましいよ』
『この辺りはモーターボートが多いね』 『ええ、ストックホルムではモーターボートを持つ人はとても多いの。 免許も要らないし、足代わりに使っているわ』
『この先に見えるのが、ヴァーサミュージアム。 沈没した船を引き揚げて展示してあるの』 『ああ、今日はこのツアーが終わったら、友人夫婦と一緒にそこに行く事にしているんだ』
『スウェーデンにはいつ来たの?』 『昨日。 妻と一緒に初めてのスウェーデン旅なんだよ』
『今日は奥さんは?』 『俺がこのツアーに参加している間は、友人夫婦と一緒にガムラスタンを観光している』
『今日はその近くも漕ぐから、奥さん達が見えると良いわね』
カヤックしか通れない様な狭い運河や橋を潜り、ストックホルムの街を水面から楽しむ。
『ここは、古い乾式ドック。 乾式ドックって知っている?』 『ああ、知ってるよ。 俺が住んでいる近くの島にも、古い乾式ドックがあるんだ』
『あれは、キリンの装飾をしたクレーンよ』 『この辺りは流れがあって波が高いけど、初心者の人はツアーで大丈夫?』
『この辺りには、初心者の人は連れてこないわ。 今日はあなたが漕げるし、スピードも早いから、この辺りを全て案内するフルメニューにしたの。 やっぱり、漕げる人とのツーリングはリズムも合うし快適ね』
『いやあ、ありがとう。 それはうれしいな』
『お、向こうからカヤックが来るぞ。 君の友人かな?』
近付いてみると、レーシングカヤックである。 お互い手を振り行き交う。
『知り合いじゃなかったわ』 『せっかくこの辺りを漕ぐんなら、景色を楽しめば良いのにね』 『ええ、ほんと』
『君はレースとかには出たりするの?』 『いいえ。 私はキャンプツーリングが好き。 あなたは?』
『俺もレースには興味が無いんだ。 キャンプツーリングが好きで、昔は子供達も一緒にタンデム艇2艇にテントや寝袋を積んで家族で川下りしたり、海を旅したりしていた。 今ではほとんど一人でキャンプツーリングだけどね』
『あ、あそこに鳥達が居るわ』
『子供達を驚かさないように、ゆっくり行きましょう。 あまり近付きすぎないで』 『OK』
『この辺りは冬になると凍ってスケートリンクになるのよ』 『へえ、それは凄いね。 君はスケートは?』
すると彼女は笑いながら、『私はほぼカヤックだけ。 あなたは?』 俺も笑いながら、『俺も趣味はカヤックだけ。 たまに自転車にも乗るけど、メインはシーカヤックだし、それもキャンプツーリングが一番好きなんだ』
『君はアーキペラーゴのツーリングガイドはやらないの?』 『ええ、手伝いにいく事はあるけど、実は料理が下手なのであのツアーのガイドはやっていないのよ』
『あなたは日本でカヤックガイドをやっているの?』 『いいや。 俺はサラリーマンだからね。 それに俺も料理は上手くないのでガイドは出来ないんだ。 カヤックキャンプのときも、一人だから簡単な料理で済ませる。 そして、ビールがあればOK』
『ビールが好きなの?』 『ああ、大好物だ。 君は?』 『私もビール派。 でもスウェーデンではビールが高いから、それほど多くは飲まないの』
『どんなビールが好きなの?』 『知っているかな? 日本にはエビスビールというブランドがある。 俺はそれが一番好き』
『知ってる! 前に2週間ほど東京に行ったことがあるんだけど、エビスビールを飲んだ記憶がある』
話していると、彼女は本当にアウトドアが、中でもシーカヤックとキャンプツーリングが大好きな事が伝わってくる。
『なんだか、俺たち似ているね』 『ほんと、そうね』と笑い合う。 楽しいツーリングである。
『ここは橋が低いから、頭をぶつけないように気をつけて』 『うん。 俺の頭は髪の毛のクッションが無いからねー。 特に気をつけるよ!』 『ハハハ!』
『ここが、ヴァーサ号が沈んだところ』
『もっと先まで行ってみましょう』
『この帆船はレストランになっているの。 でも料金は少し高いわね』
『あそこに見えるのは、ノーベル賞を取った人が授賞式に来た時に泊まるホテル。 そこはとても高いわ』
『いろいろ聞いていると、ストックホルムの物価がよく分かってきたよ。 少し高い、高い、とても高い。 その3つしかないんだね』と笑う。
すると彼女も笑いながら、『本当にそうね』
『でも、あなたが頑張ってノーベル賞を取ったら、あのホテルに泊まれるわよ』 『俺はもう歳で時間がないけど、君はたっぷり時間があるから狙ったらどう?』
『ハハハ。 そうね。 でもフィジカルセラピーでは受賞できないわ』
『ここは、桟橋がオフィスになっているところ』
『君の写真を1枚撮っても良いかな?』 『ええ、もちろん』
『もうすぐゴールだわ』 『いやあ、今日はいろいろと案内してくれて、そしていろいろと話を聞かせてくれて、本当に楽しかったよ。 Good Job!』
『私も楽しかったわ。 あなたは今まででベストのお客さんよ!』
約2時間のガイドツアー。 ストックホルムの街を運河からフルメニューで眺め、会話を楽しみ、ストックホルムでの暮らしについていろいろな話を聞くことができた。
最高の旅の思い出である。
***
カヤックツアーが終わるとカフェで妻&友人夫婦と合流。
先ほど運河から眺めた、ヴァーサミュージアムへ。
このミュージアムは素晴らしい!
引き揚げられた古い沈没船やそれにまつわる様々な品々が展示されている。
なんといっても、その船が大迫力。
スウェーデンに住んでいる友人夫婦も、初めて来たという事だが、ここは好いと大好評。
***
家に戻る途中、公園では夏至祭/ミッドサマーフェスティバルの準備が始まっていた。
家に戻ると、庭でビール!
『いやあ。 今日のカヤックツーリングは最高だったし、ミュージアムも大迫力だったし、ほんと良い旅だなあ』
真夜中に目が覚めると、少しだけ外が暗くなっていた。
***
翌日は半日フリータイム。 俺の事を良く知っている友人が、自分達で好きなように歩き回れるように自由な時間もプランしてくれているのである。
うれしいな!
妻は昨日訪れたが、俺はカヤックツーリングのため行けなかったガムラスタン地区へ向かう。
駅に近い、古い教会。
地図を頼りにガムラスタンへ。 ここはストックホルムの観光の中心である。
妻と二人で街を散策。
歴史のある建物。
ノーベル賞博物館。
本当に素晴らしい。
少し足を延ばしてシティーホールへと向かう。
雨だった昨日とは打って変わって青空がのぞくストックホルム。
そして、シティーホール。
***
家に戻ると、友人夫婦と一緒に、公園で行われている夏至祭へ。
このタワーが夏至祭のシンボル。
公園には多くの人が集まり、夏の到来を楽しんでいる。
子供達のゲームがあったり、屋台が出ていたり、移動遊園地が営業していたり。
***
翌日は、夕方までフリータイム。
今日は、船で近くの島を訪れる予定。
朝の気持ち良い街を歩いて桟橋へ。
だいぶ土地勘もついてきた。
今日は晴れて絶好の観光日和。
北欧の青空が鮮やかである。
そして朝のガイドツアー。
船に乗り込み、島へと向かう。
30分ほどで到着したのは小さな島。 ストックホルムから一番近いアーキペラーゴという事だ。
最初はガイドについて島を散策。
このガイドの方は、俺の見立てではスウェーデン人ではない感じ。
昨日のカヤックガイドの女性の英語は分かり易くほぼ会話に支障がなかったが、今日のガイドは英語の訛りがあり、彼女の説明は残念ながら3割程度しか理解できなかった。
まだまだ修行が足りんなあ!
案内が終わると、1時間半ほどのフリータイム。
まずはカフェで朝食。
食後は島をのんびりと散策。
この島は自然豊かで、景色も素晴らしい。
***
島から戻ると、昨日とは別の地区を散策する。
『あ、カヤックツーリングだ』
係留されている船の一つ一つに、ポストが準備されている。
ここが、ノーベル賞受賞者が泊まる高級ホテル。
少し遅い昼食は、カフェで。
外の席をお願いし、ビールでランチ。
夜は、友人達とバーベキューを楽しんだ。
***
翌日は、郊外にドライブ。
まずはガソリンスタンドへ。
セブンイレブンが経営しているようだ。 洗車の費用を聞いてみると、機械洗車なのだが3,000円ほど掛かるのだとか。
やっぱりスウェーデンは物価が高い!
アウトドア好きなスウェーデンらしく、ガソリンスタンドで薪やバーベキューセットも売っている。
道路に出ると、馬を載せたトレーラーを牽引するクルマも。
彼がおススメだという郊外の小さな街へ。
お城を見学。
町を散策。
***
再びクルマで移動。
彼らがキャンプを楽しんだことがあるという、素晴らしい自然の中へ。
ここで、家から持参したサンドイッチでランチ。 いやあ、楽しいな。
俺は、彼がクーラーボックスに入れて持ってきてくれたビールも堪能。 『あー、美味い!』
***
最終日は、朝食をゆっくりといただき、家を辞した。
『いやあ、本当にお世話になったなあ。 おかげで最高の想い出ができたよ。 妻も本当に喜んでいる』
『またぜひ来て下さい。 次回はバルト海の船旅もいいし、クリスマス時期のスウェーデンも綺麗ですよ。 そして、トルコに行くのもいいですね』
列車で街へ。 最後に自分達への土産を買い、空港へ。
妻はキーホルダー。
俺はサーミのブレスレット。
ストックホルムから飛行機でミュンヘンへ。
ミュンヘン空港ではビールを堪能。
ここから羽田まで、約11時間の旅。
無事に日本に戻ってきた。
***
俺たち夫婦にとって初めてとなるヨーロッパへの旅は、スウェーデン訪問となった。
ストックホルムの美しい町並みを、妻と二人、片寄せ合いながら歩いているとき、『ほんとにこれって夢のようだね』と語り合った。
子離れ夫婦、50歳記念になる最高のリフレッシュ休暇である。
友人夫婦達の素晴らしいホスピタリティによって、楽しく充実した旅を堪能することができた。 本当に感謝!
***
こうやって想い出しても、本当に楽しく充実した様々な旅を楽しんで来られたんだなあ、と改めて実感している。
さて、ウィルス騒動で一変してしまったこの世界で、これからどんな旅を楽しむことができるであろうか?
今でこそシーカヤックはTV番組にも登場するなど一般に知られるようになっているが、当時はまだ、せいぜいカヌーを川で漕ぐというイメージの時代。
カヤックやカヌー、シーカヤックに関する情報はとても限られていて、貴重なムック本や、一般的になったばかりのインターネットを使って海外の情報などを入手して、勉強していたことを思い出す。
***
一連の騒動で外遊びを自粛し、この有り余る時間を活用して最近の休日は、シーカヤックとの出会いや、これまでの記憶に残る旅を、ブログという媒体を使わせていただいてデジタルアーカイブ化する活動を進めてきた。
非常事態宣言も、週末の外出自粛も解除され、地元のシーカヤックショップでもツアーが再開されているなど、これからようやく一歩一歩、以前に近い生活に戻っていけそうな今日この頃。
一旦、このデジタルアーカイブ化も一区切りとすることにしようか。
2002年に訪れた、初めての海外旅行先であるミクロネシアのシーカヤックツアーとは、ある意味対極にある、北欧のスウェーデンのストックホルムでのカヤックツアーも、忘れられない旅の一つであった。
***
2014年6月17日(火)~6月24日(火)まで、リフレッシュ休暇を利用して妻と二人でスウェーデンに行ってきた。
以前、同じ職場で働いていて仲の良かったトルコ人夫婦が転職してスウェーデンに住んでおり、遊びに来ないかと言われていたのである。
『6月20日が夏至祭ですから、この時期はどうですか?』 『うん。 今年はリフレッシュ休暇が取れるから、その時期に行くよ』
『せっかくだから、ちょっとでもカヤックを漕げないかな?』 『ええ、来られるというので、友人にどこで漕げるか聞いているところです』
『おー、それはありがとう。 楽しみだ!』
半年くらい前からチケットを手配し、待ちに待った北欧への旅。 妻も楽しみにしている!
***
6月17日の夜に広島空港を出発。
羽田空港で国際線へ。
羽田から深夜に出発するフランクフルト行きの飛行機に乗る。
約12時間の長旅である。
トランジットの長い待ち時間。
せっかくのフランクフルトという事で、セルフサービスのホットドッグにもチャレンジしてみた。
***
フランクフルトからストックホルムへは、約2時間。
北欧は、長い冬を終え、待ちに待った太陽の季節のようである。
俺たち夫婦にとっても、待ちに待った夏のスウェーデン。
どんな国なのだろうか? 楽しみだ!
***
空港まで迎えにきてくれた友人夫婦と無事再会。
『ありがとう。 本当にスウェーデンまで来たよ』 『そうですね。 ここで会えるなんて、私たちも嬉しいです』
『お昼ご飯はまだですか?』 『うん、まだ食べていないんだ』 『じゃあ、良いカフェがありますから、そこに行きましょう』
案内されたのがこのカフェ。
少し涼しいが、空は晴れて緑も美しく、素晴らしい眺め。
楽しい会話と美味しいランチ。 なんとも最高な旅のスタート。
***
友人夫婦の家に向かう途中、道で見かけるクルマの多くに、トレーラーを引っ張るヒッチが付いている事に気が付いた。
『あれ、多いねえ』 『そうなんです。 ボートやキャンピングトレーラーを引っ張るクルマもあるし、中には馬を載せてバカンスに行く人達も多いんですよ』
『へえ、それはスゴイねえ』
途中で買い物。
『ビールが好きだから、今日はいろいろなビールも準備していますから楽しんで下さい』
『いやあ、それはありがとう。 うれしいな』
『スウェーデンではお酒を制限していて、アルコール分が3.5%までのビールはスーパーや売店でも売っているんですが、それよりアルコール分が高いビールやお酒は、専門の販売店に行かないと売っていないんですよ』
『へえ、そんなシステムがあるんだね』
『じゃあ、晩ご飯を作りますから、ゆっくり飲んでいて下さい』 『ああ、ありがとう』
日本の事、会社の事、スウェーデンの事、広島でいろいろと一緒にドライブや旅行に行ったときの事などなど、楽しい会話とおいしい食事。
『いやあ、今日は楽しかった。 じゃあ寝るよ』 『はい。 おやすみなさい。 この時期は、真夜中まで明るいですから、ブラインドを下ろした方が良いですよ』
調べてみると、日が沈むのは夜の11時過ぎ。 日が昇るのは夜中の2時頃。 『へえ、これが白夜か』
***
翌日。 朝食を食べ、友人と一緒にストックホルムの街へ。
今日は昼から、俺だけ2時間のカヤックツーリングの予定なのだが、出発場所の確認のため俺たちだけ先に街に出たのである。
妻と彼の奥さんは後から彼と合流して、俺がカヤックツーリングを楽しんでいる間に街を散策することになっている。
結構激しく降る雨の中、昨夜グーグルマップであたりを付けていた場所へと向かう。
『あ、あそこがツーリングのスタート地点だな』
『そうですね』 『OK。 じゃあ、後は俺一人でスタート時間まで待っているから大丈夫』
『そうですか。 ではまた後で』 『うん。 2時半に、このカフェで待ち合わせしよう』
ツアー開始まで、まだ1時間半ほどあるので、しばし町を散策。
スウェーデンでは、雨が降っても傘をさす人は少ないと聞いていた。 実際に見てみると、傘をさしている人は居るが、確かに少数派である。
雨が激しくなってきたので、俺も傘をささずにパドリングジャケット&パドリングパンツ、そして靴は嵩張るパドリングブーツ代わりに持参してきた田植え靴『みのる君』に履き替え、完全防水の怪しい姿でストックホルムの町を歩く。
この格好で、そのままカヤックツアーに参加するつもり。
雨の中、傘をささずに街を歩くというのも、なかなか趣き深いものである。
ただ、つま先の割れた田植え靴『みのる君』が、俺の怪しさを倍増している。 通報されないだろうなあ!
晴れていればもっと美しいのだろうが、それでも自分の足で自由気ままに歩いてみると、この街の雰囲気がよく伝わってくる。
***
川沿いのカフェで独り、ランチを楽しみながらスタートの時間を待つ。
12時15分。 カヤックツーリングの受付に行く。
『ハイ! 今日の12時半からのツーリングを申し込んでいるんだけど、雨でキャンセルにはならないかな?』
『ええ、大丈夫。 もう少し時間があるから上で待っていて』 『OK。 良かった、楽しみにしていたんだ』
12時半少し前に、さっきの女性が上がってきた。 『じゃあ、準備しましょうか』
『今日は何人参加するの?』 『今日はあなただけよ』
『え、それはラッキーだな。 ツアーのHPには、人が少ないとキャンセルする事もあるって書いてあったよね』 『いいえ、大丈夫よ』
『着替えは?』 『これで漕ぐよ』
『カヤックは漕いだ事ある?』 『うん。 22年ほど日本で漕いでいる』 すると驚いたように、『じゃあ、私より経験が長いのね』
今日はガイドが一人、客が俺一人ということで、タンデム艇でツーリングである。
普段、タンデム艇なら俺が後ろを漕ぐのだが、今日はお客という事で久し振りのバウ側。
『スウェーデンでカヤックを漕ぐのを楽しみにしていたんだ。 今日はよろしく』
静かにストックホルムの運河に漕ぎ出す。 感激の瞬間!
大学生で、夏はカヤックガイドの仕事をしているという彼女。 漕ぎ進みながら、街の様子や建物についていろいろと教えてくれる。
もちろん全て英語である。
『ここのツアーには日本人は来る?』 『いいえ、前に一人来たくらい。 アメリカ人とドイツ人が多いの』
『なるほど。 ドイツはスウェーデンと一緒でバケーションが多いからなあ。 羨ましいよ』
『この辺りはモーターボートが多いね』 『ええ、ストックホルムではモーターボートを持つ人はとても多いの。 免許も要らないし、足代わりに使っているわ』
『この先に見えるのが、ヴァーサミュージアム。 沈没した船を引き揚げて展示してあるの』 『ああ、今日はこのツアーが終わったら、友人夫婦と一緒にそこに行く事にしているんだ』
『スウェーデンにはいつ来たの?』 『昨日。 妻と一緒に初めてのスウェーデン旅なんだよ』
『今日は奥さんは?』 『俺がこのツアーに参加している間は、友人夫婦と一緒にガムラスタンを観光している』
『今日はその近くも漕ぐから、奥さん達が見えると良いわね』
カヤックしか通れない様な狭い運河や橋を潜り、ストックホルムの街を水面から楽しむ。
『ここは、古い乾式ドック。 乾式ドックって知っている?』 『ああ、知ってるよ。 俺が住んでいる近くの島にも、古い乾式ドックがあるんだ』
『あれは、キリンの装飾をしたクレーンよ』 『この辺りは流れがあって波が高いけど、初心者の人はツアーで大丈夫?』
『この辺りには、初心者の人は連れてこないわ。 今日はあなたが漕げるし、スピードも早いから、この辺りを全て案内するフルメニューにしたの。 やっぱり、漕げる人とのツーリングはリズムも合うし快適ね』
『いやあ、ありがとう。 それはうれしいな』
『お、向こうからカヤックが来るぞ。 君の友人かな?』
近付いてみると、レーシングカヤックである。 お互い手を振り行き交う。
『知り合いじゃなかったわ』 『せっかくこの辺りを漕ぐんなら、景色を楽しめば良いのにね』 『ええ、ほんと』
『君はレースとかには出たりするの?』 『いいえ。 私はキャンプツーリングが好き。 あなたは?』
『俺もレースには興味が無いんだ。 キャンプツーリングが好きで、昔は子供達も一緒にタンデム艇2艇にテントや寝袋を積んで家族で川下りしたり、海を旅したりしていた。 今ではほとんど一人でキャンプツーリングだけどね』
『あ、あそこに鳥達が居るわ』
『子供達を驚かさないように、ゆっくり行きましょう。 あまり近付きすぎないで』 『OK』
『この辺りは冬になると凍ってスケートリンクになるのよ』 『へえ、それは凄いね。 君はスケートは?』
すると彼女は笑いながら、『私はほぼカヤックだけ。 あなたは?』 俺も笑いながら、『俺も趣味はカヤックだけ。 たまに自転車にも乗るけど、メインはシーカヤックだし、それもキャンプツーリングが一番好きなんだ』
『君はアーキペラーゴのツーリングガイドはやらないの?』 『ええ、手伝いにいく事はあるけど、実は料理が下手なのであのツアーのガイドはやっていないのよ』
『あなたは日本でカヤックガイドをやっているの?』 『いいや。 俺はサラリーマンだからね。 それに俺も料理は上手くないのでガイドは出来ないんだ。 カヤックキャンプのときも、一人だから簡単な料理で済ませる。 そして、ビールがあればOK』
『ビールが好きなの?』 『ああ、大好物だ。 君は?』 『私もビール派。 でもスウェーデンではビールが高いから、それほど多くは飲まないの』
『どんなビールが好きなの?』 『知っているかな? 日本にはエビスビールというブランドがある。 俺はそれが一番好き』
『知ってる! 前に2週間ほど東京に行ったことがあるんだけど、エビスビールを飲んだ記憶がある』
話していると、彼女は本当にアウトドアが、中でもシーカヤックとキャンプツーリングが大好きな事が伝わってくる。
『なんだか、俺たち似ているね』 『ほんと、そうね』と笑い合う。 楽しいツーリングである。
『ここは橋が低いから、頭をぶつけないように気をつけて』 『うん。 俺の頭は髪の毛のクッションが無いからねー。 特に気をつけるよ!』 『ハハハ!』
『ここが、ヴァーサ号が沈んだところ』
『もっと先まで行ってみましょう』
『この帆船はレストランになっているの。 でも料金は少し高いわね』
『あそこに見えるのは、ノーベル賞を取った人が授賞式に来た時に泊まるホテル。 そこはとても高いわ』
『いろいろ聞いていると、ストックホルムの物価がよく分かってきたよ。 少し高い、高い、とても高い。 その3つしかないんだね』と笑う。
すると彼女も笑いながら、『本当にそうね』
『でも、あなたが頑張ってノーベル賞を取ったら、あのホテルに泊まれるわよ』 『俺はもう歳で時間がないけど、君はたっぷり時間があるから狙ったらどう?』
『ハハハ。 そうね。 でもフィジカルセラピーでは受賞できないわ』
『ここは、桟橋がオフィスになっているところ』
『君の写真を1枚撮っても良いかな?』 『ええ、もちろん』
『もうすぐゴールだわ』 『いやあ、今日はいろいろと案内してくれて、そしていろいろと話を聞かせてくれて、本当に楽しかったよ。 Good Job!』
『私も楽しかったわ。 あなたは今まででベストのお客さんよ!』
約2時間のガイドツアー。 ストックホルムの街を運河からフルメニューで眺め、会話を楽しみ、ストックホルムでの暮らしについていろいろな話を聞くことができた。
最高の旅の思い出である。
***
カヤックツアーが終わるとカフェで妻&友人夫婦と合流。
先ほど運河から眺めた、ヴァーサミュージアムへ。
このミュージアムは素晴らしい!
引き揚げられた古い沈没船やそれにまつわる様々な品々が展示されている。
なんといっても、その船が大迫力。
スウェーデンに住んでいる友人夫婦も、初めて来たという事だが、ここは好いと大好評。
***
家に戻る途中、公園では夏至祭/ミッドサマーフェスティバルの準備が始まっていた。
家に戻ると、庭でビール!
『いやあ。 今日のカヤックツーリングは最高だったし、ミュージアムも大迫力だったし、ほんと良い旅だなあ』
真夜中に目が覚めると、少しだけ外が暗くなっていた。
***
翌日は半日フリータイム。 俺の事を良く知っている友人が、自分達で好きなように歩き回れるように自由な時間もプランしてくれているのである。
うれしいな!
妻は昨日訪れたが、俺はカヤックツーリングのため行けなかったガムラスタン地区へ向かう。
駅に近い、古い教会。
地図を頼りにガムラスタンへ。 ここはストックホルムの観光の中心である。
妻と二人で街を散策。
歴史のある建物。
ノーベル賞博物館。
本当に素晴らしい。
少し足を延ばしてシティーホールへと向かう。
雨だった昨日とは打って変わって青空がのぞくストックホルム。
そして、シティーホール。
***
家に戻ると、友人夫婦と一緒に、公園で行われている夏至祭へ。
このタワーが夏至祭のシンボル。
公園には多くの人が集まり、夏の到来を楽しんでいる。
子供達のゲームがあったり、屋台が出ていたり、移動遊園地が営業していたり。
***
翌日は、夕方までフリータイム。
今日は、船で近くの島を訪れる予定。
朝の気持ち良い街を歩いて桟橋へ。
だいぶ土地勘もついてきた。
今日は晴れて絶好の観光日和。
北欧の青空が鮮やかである。
そして朝のガイドツアー。
船に乗り込み、島へと向かう。
30分ほどで到着したのは小さな島。 ストックホルムから一番近いアーキペラーゴという事だ。
最初はガイドについて島を散策。
このガイドの方は、俺の見立てではスウェーデン人ではない感じ。
昨日のカヤックガイドの女性の英語は分かり易くほぼ会話に支障がなかったが、今日のガイドは英語の訛りがあり、彼女の説明は残念ながら3割程度しか理解できなかった。
まだまだ修行が足りんなあ!
案内が終わると、1時間半ほどのフリータイム。
まずはカフェで朝食。
食後は島をのんびりと散策。
この島は自然豊かで、景色も素晴らしい。
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島から戻ると、昨日とは別の地区を散策する。
『あ、カヤックツーリングだ』
係留されている船の一つ一つに、ポストが準備されている。
ここが、ノーベル賞受賞者が泊まる高級ホテル。
少し遅い昼食は、カフェで。
外の席をお願いし、ビールでランチ。
夜は、友人達とバーベキューを楽しんだ。
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翌日は、郊外にドライブ。
まずはガソリンスタンドへ。
セブンイレブンが経営しているようだ。 洗車の費用を聞いてみると、機械洗車なのだが3,000円ほど掛かるのだとか。
やっぱりスウェーデンは物価が高い!
アウトドア好きなスウェーデンらしく、ガソリンスタンドで薪やバーベキューセットも売っている。
道路に出ると、馬を載せたトレーラーを牽引するクルマも。
彼がおススメだという郊外の小さな街へ。
お城を見学。
町を散策。
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再びクルマで移動。
彼らがキャンプを楽しんだことがあるという、素晴らしい自然の中へ。
ここで、家から持参したサンドイッチでランチ。 いやあ、楽しいな。
俺は、彼がクーラーボックスに入れて持ってきてくれたビールも堪能。 『あー、美味い!』
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最終日は、朝食をゆっくりといただき、家を辞した。
『いやあ、本当にお世話になったなあ。 おかげで最高の想い出ができたよ。 妻も本当に喜んでいる』
『またぜひ来て下さい。 次回はバルト海の船旅もいいし、クリスマス時期のスウェーデンも綺麗ですよ。 そして、トルコに行くのもいいですね』
列車で街へ。 最後に自分達への土産を買い、空港へ。
妻はキーホルダー。
俺はサーミのブレスレット。
ストックホルムから飛行機でミュンヘンへ。
ミュンヘン空港ではビールを堪能。
ここから羽田まで、約11時間の旅。
無事に日本に戻ってきた。
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俺たち夫婦にとって初めてとなるヨーロッパへの旅は、スウェーデン訪問となった。
ストックホルムの美しい町並みを、妻と二人、片寄せ合いながら歩いているとき、『ほんとにこれって夢のようだね』と語り合った。
子離れ夫婦、50歳記念になる最高のリフレッシュ休暇である。
友人夫婦達の素晴らしいホスピタリティによって、楽しく充実した旅を堪能することができた。 本当に感謝!
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こうやって想い出しても、本当に楽しく充実した様々な旅を楽しんで来られたんだなあ、と改めて実感している。
さて、ウィルス騒動で一変してしまったこの世界で、これからどんな旅を楽しむことができるであろうか?