2014年8月14日(木) YB125SPで『しまなみ海道』&福山を巡る一泊ツーリングから戻った翌日。
今日から妻と二人で、岡山県北を一泊二日でゆっくり楽しむドライブ旅行へ。
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今回決めている唯一の目的地は、前から気になっていた吹屋エリア。 それ以外は、風の吹くまま気の向くまま、ふらり風来坊のいつもの流儀である。
スマホナビでルートを探索すると、下道を走っても高速道路を利用するルートと30分ほどしか違わない予想。
『時間もあるし、初めての道を走るのは好きだから、今日は下道で行く事にしよう』
数年前から、いくつかのスマホアプリを1年交代周期でカーナビとして使い、それぞれの使い勝手や特徴を実体験として確かめている。
今回は、つい最近入れ替えた新たなアプリでの初めての遠出。 どんな案内をするのか楽しみだ。
時折雨模様の曇天の中、車の通行量の少ない快適なルートを案内してくれ、初めての道を楽しくドライブ。
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離合も難しいような細い裏道も走りながら、中国山地の景色を堪能しつつ吹屋地区へと向かう。
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吹屋まで数キロの地点で、気になる看板を見かけた。 『西江邸』
予定にはなかったのだが、なんとなく気になったのでクルマを止めて立ち寄る事に。
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駐車場からは、勾配のきつい坂を歩いて上ると、
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見事な邸宅が。
一人600円也の入館料を支払い、見学させていただく事に。
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ベンガラが塗られた戸板。
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白州跡。
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庭にちょっと出るときにつっかけた下駄。
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ここ西江邸では、建物についてご主人に、建物の中については奥さんに、丁寧に案内していただいた。
かつては銅山で有名だった吹屋地区だが、西江家が鉱山を開き、紅柄/ベンガラの生産を始められたのだそうだ。
今でも、かつて生産された紅柄が10トン残っており、神社仏閣など伝統的な建築物の補修や、美術工芸品の制作用に提供されているとの事。
銀行として使われた部屋の説明では、戸板を閉めると自動で鍵がかかる仕組みになっていたことや、床下に入れないように石組みで囲われてた構造について教えていただく。
その他、通常は3部屋続きまでしか許されなかった構造がこの邸宅では5部屋続きまで許された事、部屋によって異なる釘隠し、仕事用の部屋と身分の高い人の居住用の部屋の構造の違い等々、歴史ある邸宅をじっくりと見学し、質問しながらお話を伺うと、とても興味深い。
『ベンガラを生産していたのは、ここ以外にどこがあったんでしょうか?』
『ベンガラは、自然にも作られるものなので、日本の様々な場所で少量は取れて使われていたんです』
『なるほど、地産地消の材料として使われていたんですね』
『ただ、ベンガラを工業的に産業として生産したのは、この地区だけなんですよ』
『ベンガラと工業用酸化鉄は別物なんです』
『やはり、ちょっとした不純物や成分の違いが、色や特性の差として出るんですか?』
『ええ、そうなんです』
『それにしても、残っている10トンは貴重ですね』
『はい、そうなんです。 でも、10グラムあれば2間塗れるんですよ。 ベンガラはかなり伸びが良いんです。 ですから、10トンあればかなり塗れます』
『生産を再開するというのも考えられているんですか?』
『原料がある鉱山も見つけてはいるんですよ。 でもそれを掘って、もう一回生産するかと言われると。。。 いろいろと難しいでしょうね』
『いやあ、とても興味深いお話を伺う事ができました。 ありがとうございます』
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予定外の立ち寄り場所であったが、ベンガラ/紅柄に関する貴重で興味深いお話を伺う事ができた。
久し振りの、『あるくみるきく』
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再びクルマに乗り込み、吹屋地区へ。
まずは、吹屋小学校。
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いい雰囲気の木造校舎。
しばし町を散策。
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お昼ご飯は、前日のテレビ番組で紹介されて気になっていた『千屋牛』を食べたくて調べると、吹屋地区でこの牛肉を扱っているのを見つけた『ラフォーレ吹屋』へ。
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いつものように、妻と俺で別々のメニューを注文し、シェアしていただく。
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軽く焼いた肉を、塩で一口。 『おー、これは美味いなあ』
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おいしい千屋牛を、ゆっくりと堪能。
『ごちそうさまでした!』 満足、満足。
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ここからは、狭い山道を走って次のスポットへ。
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駐車場にクルマを止めて見上げると、立派な邸宅が。
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『広兼邸』
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そう、ここは『八つ墓村』のロケ地としても有名な場所である。
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見事な石垣。
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↑ こんな表示も発見。
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民宿に行く前に、温泉でのんびりまったり。
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今日は、久し振りとなるお気に入りの『真賀温泉』
温泉で旅の疲れを癒し、予約していた民宿へ。
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部屋に入り、着替えると、
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出されたお菓子をつまみに、地元のお酒をいただきながら、本を開く。
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『海賊とよばれた男』 これが、面白いのだ。
中国山地の静かな民宿で、地元の酒をグビリ、本のページをパラリ。
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雨の音を聞きながら、面白い本を読み進む時間は、まさに至福の一時。
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午後7時。 晩ご飯の時間である。
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食事を食べながら、宿のおばちゃんと四方山話。
『昔はねえ、この家でも蚕を飼って糸を引きよったんよ』
『じゃあ、桑畑もあったんですね』
『そう。 川の向こうに桑畑があったんやけど、ずっと前に木を切って畑にしたんよ』
『この辺りは、祭りにダンジリがでるん。 そりゃあ、賑やかじゃったんよ』
『呉の島の方でもダンジリがあるんですが、ここにもですか』
『ここのは喧嘩ダンジリ。 牛が曳くような把手の長いダンジリで、ぶつけて勝負するん』 『ダンジリをぶつけたときに、把手が踊って見学しとる人に当たって怪我させんように、ダンジリの所に鉄の重しを載せるようになったんよ』
『車輪もゴムじゃない。 木の枠に鉄の輪っかがはめてある重たいもん。 ダンジリに踏まれたら、足を大怪我するよね』
『昔は、祭りの一月位前からダンジリの練習用に小屋を貸しよった。 そしてその小屋に祭りに出る人が集まって、練習をしよったんよ』
『呉の島の方でも、昔は若者宿いうのがあって、若い人らが一緒に生活して、しきたりや知識を年配の人から教えてもらいよったいうて聞いた事があります』 『あと、弓祭りがある島でも、祭りの前から泊まり込みで一緒に練習して水垢離しよったいいますよ』
『ダンジリ祭りじゃあ、いろいろな役目がある。 それで、今でも誰が祭りに出るかくじ引きで決めよるんよ』
『え、持ち回りの順番じゃあないんですか?』
『そう、くじ引き』
『でも若い人も減っとるでしょう。 祭りに出る人を集めるんも大変なんじゃないですか?』
『祭りに出たら祝儀がもらえるし、寄付されたお酒も分け前がもらえる。 で、くじの結果で祭りに出る事になった家も、年寄りだけしかおらんかったら出られんから、代わりに出てくれる人にお礼を出す。 じゃから、お金も入るしお酒ももらえるしで、代わりに出てくれる人は結構居ったんよ』
『へえ、そうなんですね』
『でもさすがに、祝儀以外にお年寄りの家からもお金を出すのはどうかいうて、それはやめよういうことになりよる』
『それにしても、そのダンジリ祭りは盛り上がるんでしょうね』
『そうよ。 今の若い人たちも楽しみにしとるんよ。 それに、遠くからも祭りのときには、人が戻ってくるし』
『地元の人たちや出身者の人たちの血が騒ぐんでしょうね。 これからも永く続くといいですね』
今日は、この民宿でも『あるくみるきく』
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翌朝、地図を眺めながらどこに行くかを妻と相談。
『どう、宮本武蔵の資料館があるらしいよ。 そこに行って、帰りに”ホルモンうどん”を食べてかえろうか』
初めての訪問となる、武蔵資料館。
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かつては、テレビドラマもあったので、当時は訪問者が多かったのだろうと想像できる。
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資料室はそれほど広くはないが、武蔵の描いた画(複製)が展示されていたり、その生涯や二刀流の剣術を紹介する映像が流され、その人となりや生き方を知る事ができて興味深い。
ここでは自分へのお土産に『五輪書』の現代語訳本を購入。
しばし散策。
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武蔵神社へ。
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参拝。
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武蔵のお墓。
クルマで移動中には、こんな銅像も発見。
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途中、ホルモンうどんをお昼ご飯に頂き、JAの販売所で白桃とぶどうを購入して家路についた。
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今回は、西江邸と民宿で昔の様子を伺う『あるくみるきく』の至福の一時を堪能し、とても楽しく思い出に残る旅となった。
さて、次はどこ行こう?