2011年8月12日(金) 今日は、地元の島の施設で行っている、夏のカヌー教室の3回目の日。 4年前にカヌー教室を始めた時から、寮長さんとは、いつか子供達を連れてシーカヤックで無人島に渡り、お昼ご飯を作って食べて、海でたっぷりと遊びたいですね、と話していた。
昨年の夏の終りには、そのロケハンとして先生方と目指す無人島へのツーリングを行い、下見も済ませていたのだが、今日はいよいよ子供達を連れて無人島に渡る予定になっているのである。
しかーし、朝早く家を出て島に渡り、クルマを降りて目的地に向かう海の状況を確認したところ。。。 『うーん、これは。 ちょっと風が強いなあ』 島と島との間を南の風が吹き抜け、海はザワザワと騒がしい。 『自然相手だからジタバタしたって仕方がない。 今日は中止かな』と覚悟を決めて、施設に伺った。
***
『おはようございます』とカヌー部担当の先生に挨拶。 その時にはシーカヤックを運び始め、ツーリングの準備が始まっていたが、『ここは風が弱いんですが、港からでると結構風が抜けているんですよ。 今日は中止にするかも』と一言。
その後、寮長さんが来られ、船外機付きのボートを組み立てられたので、『寮長さん。 ちょっとこれで下見にいきませんか』とお願いした。
港を出ると、南風が結構吹いている。 波もザワつき、経験の少ない中高生にはキツい海況。 『無理して事故をしても仕方ないですし、残念ですが今日はあの島に渡るのは諦めましょう』 『そうですね。 分かりました』と寮長さん。
『でも、下見に行って良かったですね。 正しい判断ができました。 でもせっかくなので、提案があるんです』 『港を出て、島沿いに反時計回りに漕いで、反対側にある浜まで行きませんか。 あそこまで漕ぐのも十分彼らにとっては冒険だし、食材も準備してあるんで、そこでご飯を作って食べましょう』
『今は引き潮なので潮に乗って行けるし、帰りは南西の追い風に乗って戻ってくる事ができると思いますよ』 『ええ、せっかくだからそうしましょう』
ということで、中断していた準備を再開し、準備運動。

今日の参加者は、高校生二人と中学生一人、そして寮長さん&先生三人、そして私と、全部で8人。 寮長さんと先生の一人は、ボートに乗っていただくので、メンバーを見てこれまでの練習経験も勘案して船割りを決める。 これも大事な判断の一つである。
そして今日の天気予報、潮汐の情報、漕いで行くルートでの注意点を説明する。 『じゃあ、シーカヤックを海に降ろして出発しようか!』
***
『じゃあ、港の出口だから固まって行こう。 よく周りを見て、音もよく聞いて注意して』

港を出ると高校生の一人が、『すっげえ、俺、初めてこの港の外に出たよ』
潮に乗って反時計回りに漕ぎ進み、目的地までもう少しのところまで来た時、右手を見ると、『うん? そういえばあそこに無人島があるなあ。 ここは意外と風が弱いし波も立っていない。 もしかしたら、あそこに行けるかも』
『寮長さん。 あそこの島、行ってみようと思うんですが良いですかね?』 『ええ、分かりました』

***
小さな無人島の小さな浜へ上陸。 『うん、これはなかなか良いかも!』

しばし、各自が船釣りや海遊び、磯遊びを楽しみ、食事班はカレーとご飯の支度。 カレーは『茄子たっぷりの夏野菜風カレー』 そしてご飯はもちろん、『ダッジオーブン炊飯』 これが旨いんだなあ!
***
『お、いい匂い』 『カレー、美味そう!』 『ご飯、ピッカピカじゃん。 すげえ』

なんで、無人島で食べるカレーってこんなに旨いんだろう。 いつも食事の量はそれほど多くないのだが、あまりのおいしさに、つい、おかわりをしてしまったほど。

夏のシーカヤック教室を始めた頃からの念願であった、シーカヤックを漕いで無人島に渡り、みんなでご飯を作って食べる。 今、それが現実に。 美しい瀬戸内の海を眺めながらおいしいカレーを食べるこの瞬間。 感無量である。
『おかわりあるよ』 『うん、食べる食べる』 おいしいカレーはすぐに売り切れ。 嬉しいな。
***
『だいぶ潮も引いてきたんで、隣の島まで歩いて渡ってみましょうか』

美しいエメラルドグリーンに近い、南の島を思わせる絶景。
朝には無人島行きを諦めていたのだが、その後の様々な状況変化が幸いして、このパラダイス状態である。
***
『天気予報通り、少し南西の風が強くなってきたからそろそろ戻りましょうか』 荷物を片付け、再び船割りを変えて出発準備。
帰路は、中高生と先生達に漕いでもらうため、私は寮長さんとボートへ。

出発前のミーティングでは、帰りのルートの注意点と予測される潮と風の状況を話す。 『ようし、じゃあ出発だ!』
途中、酒の肴になる様な想い出深いプチトラブルもあったものの、追い風に乗って順調に漕ぎ戻る。

途中で何度か休憩しつつ、順調に出発した港へと戻ってきた。

『お疲れさまでした』 全員で、シーカヤックを引き揚げ、道具を運び、潮抜きをして片付け完了。
***
朝の時点では無人島に渡る事を諦めていたのだが、別ルートを提案し、そこを漕ぎながら状況に応じたルート変更をしたことで、思ってもいなかったパラダイスに辿り着くことができた。
中高生達も、『俺、初めて無人島に渡ったよ』、『うん、良い夏の想い出ができたなあ』、『あー、海もきれいだし、本当に楽しかった』、なんて言ってくれたし、職員の方達も『私たち自身も楽しみましたよ』と言ってくださった。 『そうなんです。 まずは自分達が楽しくなければ、子供達が楽しいはずがない』
さらには寮長さんとは、『これから毎年ステップアップしながら続けていけると良いですね』という話になり、シーカヤック教室を始めてから4年越しの念願がようやくかなった嬉しさを、じっくりと噛みしめる事ができた。
『みんな、本当にありがとう。 俺の方こそ、最高の夏の想い出ができたよ。 また一緒に漕ごうな!』