錦を衣て絅を 尚 う。
ケイ
うすぎぬ
絅
【解字】形声。糸+冋。
- ひとえのもの。うすぎぬ。着物の上にかける布。ベールの類。
錦(にしき)を衣(き)て絅(けい)を尚(くわ)う。
と読みます。
出典はあの「中庸は徳の至れり」で有名な論語からの一節。
いきんしょうけい
衣錦尚絅
【意 味】才能や徳を外にあらわに出さないこと。
【補 説】「錦を着るときは、上から薄衣を掛けて華やかさを表に出さない方が良い。
己の美徳を表に出さないのが君子の嗜みであるということ。
「絅」は薄いうちかけ。「尚」は加える、添え着すること。
【出 典】「中庸-三十三章」「詩曰、衣錦尚絅。悪其文之著也」
1級では、漢文の出典を文語文で読むことが求められます。
如何せんこれがなんとも厄介というか難しい。
衣錦尚絅(いきんしょうけい)なら、何とか読める。
でも、意味を識るには「出典」を理解しないと心に刻めない。
衣錦尚絅 ⇒ 才能や徳を外にあらわに出さないこと。
では、キセルのようなもので、大事なものが中抜けしている。
衣錦尚絅 ⇒ 錦を衣て絅を尚う ⇒ 才能や徳を外にあらわに出さないこと。
という具合に憶えないと頭に入らない。
でも、「絅を尚う」って耳慣れない言葉ですね。
「薄いうちかけを添え着する」、ここでは「ベールで覆い隠す」という意味であってると思います。
『己の美徳を表に出さないのが君子の嗜みであるということ』
中国の故事には論語然り菜根譚然り、自らを律し諫め戒める自己抑制が必要であることを説いているものが多いようです。
「自分を褒めない、相手を馬鹿にしない」
のは、きっと万国共通の宗教的な考えだと思います。
でも、理解しているのに実行できないのが悲しいかな凡人の凡人たる所以なのでしょうか。