二人の若い紳士が、すっかりイギリスの兵隊のかたちをして、ぴかぴかする鉄砲をかついで、白熊のような犬を二 疋 つれて、だいぶ山奥の、木の葉のかさかさしたとこを、こんなことを云いながら、あるいておりました。
「ぜんたい、ここらの山は怪しからんね。鳥も獣も一疋も居やがらん。なんでも構わないから、早くタンタアーンと、やって見たいもんだなあ。」
「鹿の黄いろな横っ腹なんぞに、二三発お見舞もうしたら、ずいぶん痛快だろうねえ。くるくるまわって、それからどたっと倒れるだろうねえ。」
それはだいぶの山奥でした。案内してきた専門の鉄砲打ちも、ちょっとまごついて、どこかへ行ってしまったくらいの山奥でした。
注文の多い料理店/宮沢賢治
ショ、ソ、ヒツ、
ひき、あし
疋
【解字】象形。もと足と同形で、あしの形にかたどり、あしの意味。雅の省略体の牙を疋に誤り、雅の意味に用いる。疋を音符に含む形声文字に、胥・楚・疎・疏・礎・糈・蔬・醑などがある。
- あし。
- ただしい。⇒雅。
- ヒキ。匹
- 古くは銭十文を一疋とし、後には二十五文を一疋とした。
- 一疋は、布二反をいう。
ご存知、「雨ニモマケズ」でお馴染みの宮沢賢治先生。
東日本大震災被災者を元気付けるためにも、花巻市出身の宮沢賢治が注目されてるという。
「上を向いて歩こう」の坂本九さん、「こだまでしょうか」の金子みすゞさんもそうですね。
これを ”童話” というのには少し怖いし無理があるような気もします。
内容も、比喩というか諷刺が盛り込まれており小学生では難しいのかもしれませんね。
わたしも宮沢賢治を読んだのは恥ずかしながら30歳過ぎてからです。
娘の情操教育(笑)のため、蒲団に入って毎晩読み聞かせをしたのが最初です。
子供は毎晩楽しみにしていましたね。わたしが読んでるうちにいつの間にか眠りに落ちているんですが。
でも、とっても幸せな眠りだったと思います。
娘のお気に入りはこの本と『セロ弾きのゴーシュ』でした。
さて、
<Wikipedia>
疋
- 古代日本において布帛2反(端)分を指して呼んだ。古代中国において使われた長さの単位両(=40尺)が転じたものという。
- 鎌倉時代から江戸時代にかけて用いられた銭貨の数え方(通貨単位ではない)で、100疋をもって1貫とした(この方式によると1疋=10銭(文)となるが、疋と銭(文)を併用する慣例はなかったとされている)。また、初期の頃には1疋に換算する銭貨の数は定まっておらず、『徒然草』には1疋=30文とされている。1疋=10銭(文)とされたのは犬追物に使う犬1疋(匹)の値段が10銭(文)だったからという伝説がある(『奇異雑談集』・『貞丈雑記』など)。
- 匹とは助数詞のひとつで、動物(悪い意味では人間も)を数える単位。現在では一般的に「匹」を用いるのがほとんどであるが、古くは「疋」も用いられていた。
なるほど、疋が匹に変化した理由がわかりました。
字義についても、
反物の単位 ⇒ 銭貨の数え方 ⇒ 動物を数える単位
へと遷移されたのでしょうか。
そういえば、準1級で学習した「匹夫の勇」や「匹夫匹婦」を憶えていますか。
あまり良い意味には使われていなかったような気がします。
1級的には、
「疋帛ヒツバク」 絹の反物。
「疋絹ヒケン」一疋ずつ巻いた絹
や、
「疋(ただ)しい」 ←これはないかも。。
というのも要チェックかもしれません。