中国歴史上の格言に、「綸言汗の如し(りんげんあせのごとし)」と言い、トップに立つ人が一度発した言葉は、汗のように元の体へ戻すことができない、つまり、取り消し訂正が困難で、軽率な発言を戒めた言葉を学んだことがあります。
高校時代、月曜日の朝は全校集会というのがあって、校長先生のあいさつ(訓示)は、毎回ポケットから取り出した原稿を読み上げるものでした。生徒の間では「式文ではあるまいし・・・・」と必ずしも評判の良いものではありませんでした。
しかし、校長の立場で、生徒を理解し刺激を避け、聞き手の感情を害しない言葉を選んで行われたものだと、後に担任から説明を受けたものです。
言葉は、人を先導し恐ろしい刃物になったり、宝物になったりもします。気心の知れた夫婦や家族の間であっても同じで、心ない言葉や、言ってはダメな言葉を口に出してしまいがちです。
かつて、フジテレビが制作・放送したテレビドラマ「男はつらいよ」の「フーテンの寅さん」の言葉を借りれば「それを言っちゃあ、おしめえよ」ですが、人間関係には「ここから踏み込んではいけない」という微妙な境界線が存在すると思うのです。
近頃では、「ハラスメント」と称して職場で優越的な関係を背景とした、必要以上の範囲(社会通念に照らして許容される範囲)をこえた言葉で、働く人の就業環境や営業上の取引が害されるパワハラ、セクハラ、マタハラなどが話題になっています。
人間関係を保つには「それを言っちゃあ、おしめえよ」を心することです。