亡妻の7年忌が終えて気分がのんびりした。めったに交流したことがない二人いる亡妻の姉たちが健在な様子でそれも安心する。横浜の小高い丘に住む長女の姉はよい歳になっているのにまだ山歩きやパソコンを楽しんでいる。帰りの急坂を案じてクルマで送った。ついでにその姉のご主人の遺影にお線香をあげさせてもらう。パソコンには旅行や山の写真類をファイルしているようだ。近郊の低山ハイキングみたいな交流サークルで「四季歩会」というサークルがあって、そこにいる年下のお仲間にも活性をもらっているようだ。パソコン画面のデスクトップに「四季歩会書き込み掲示板」のアイコンを作ってあったのが消えてしまったらしい。それでいつも行き詰ったときにリリーフしている青年に来てもらう予定と話している。どれどれと画面を見る。どこかのファイルにまぎれていることは間違いない。しかし探すのも面倒だから「グーグル」で検索したらすぐに現れた。これをアイコンにしてデスクトップへ戻してあげて一件落着だ。亡妻が生きていたら、画面の整頓がちゃんとしていないとその姉や自分にも小言の一言、二言を言う性格を思い出して内心苦笑する。
仕事へ出ている駒場や代々木付近の黄葉はまだ始まったばかりのようだ。自宅の自生した菊を好きな花瓶に挿す。去年七沢温泉の道端で抜いてきた菊が淡いよい色合いの花を咲かせたばかりである。二日続きの休み散歩を考えていたら、よい候補が浮かんだ。年に二度くらい寄り道するJR石川町駅の丘にある横浜市が管理する「イタリー山庭園」である。
ここはいつ行っても閑寂で爽やかな古格溢れる敷地だ。この付近は坂道の枝道が諸所にあって山手の丘へと通じている。旧友青柳君の叔母も米軍軍属一家でこの付近に住んでいてよく遊びに行った馴染みのあるエリアだ。裏日本の低気圧の余波による硬い風が吹き荒れていて庭園の庭木を揺すっている。洋館では刺繍の展示イベントをしていて珍しく館内へ入って調度類を見学してのんびり過ごす。来館者の異国人女子のコスチュームにも秋の色彩が覆っていてその付近に靄っている空気はフェルメール絵画の匂いもする。庭には大きな公孫樹の大木が群立するが、全て黄色く深く染まるにはあと10日を要する気配だ。しばらく窓辺の戸外を眺めたり、庭を歩いてから旧友と伊勢佐木町のカフェで合流することにしてイタリー山を後にする。