港北ニュータウンのセンター南にある「ウミガメ食堂」を初めて訪れてみた。「ウミガメ食堂」の由来はそこの店主と大昔同級生だったことのある旧友の濱野氏から噂を聞いていて、やはり旧友の青柳氏も誘って同行することにした。母体の横浜・麦田付近にある「奇珍」の古めかしい佇まいとは全く別の明るい採光の半地下カフェテラス風のお店だ。昔、足しげく通った南青山の小原流会館の地下にあった台湾料理の「ふーみん」に似た活性を感じるお店になっている。
自分は「ワンタン麺」濱野氏も「ワンタン麺」青柳氏は「サンマー麺」を注文する。中国人の知り合い婦人によると中国ではワンタンと汁そばを一体にして食べる習慣はないと力説していたから、「ワンタン麺」も「ラーメン」同様に日本アレンジ独自中華メニューとして発達した様子である。ワンタンが汁に浸食されてずるずると溶けそうな感触が大好きだ。笹塚の「代一元」、その裏手にある富士見女子高付近の「福寿」、四谷見附の「こうや」等へ寄った折は必ず「ワンタン麺」を頼むことにしている。ワンタン皮にくるまれている挽肉の量だが、「福寿」は吝嗇(けち!ではなく親父さんの自信ありげなポリシーか?)を越えた皆無状態。反対に「こうや」は「テルテル坊主」大の特大ワンタンがぷかぷかういているというダイナミック系だ。
「ウミガメ食堂」は中間派というところで、多くの中華そば店の「ワンタン麺」の正道を行っている。麺は自家製だけあって極細の素麺並みながら、腰の強い歯応えは抜群で食べ進んでいてもだらしなく溶解してしまうことはない。シナ竹は太いものを使っているがとても柔らかい。チャーシューは横浜在来の表皮を赤く染めた炙りローストしたものだ。これがチャーハンなどにふんだんに散りばめてあったらさぞかし美味いことだろうと思いながら、スープを飲む。醤油臭い味は除去されているが、昔味わった「奇珍」のスープとも違う。すこし塩味が強く淡白なスープになっているようだ。しかし細かい長ネギがたくさん浮いている味わいは独自な40年が形成した「ワンタン麺」の個性になっている。食文化のBC級ラリーストを自任している自分の「ワンタン麺」序列では四谷「こうや」に軍配を上げざるをえないけど、次回は葱チャーシュー麺にでも挑戦してみようと思っている。